Q者

透析治療を受けていると、クリニックのスタッフの方が『QD』『QB』と言っているのを耳にします。この『QD』『QB』とは何のことですか

川田川田

『QD』とは、『quantity of dialysate flow rate』の略で、1分間にダイアライザーの中を流れている透析液の量のことを表します。一方『QB』は『quantity of blood flow』の略で、1分間に患者さんの体内から取り出される血液の量のことです。

血液透析は、患者さんの体外に取り出した血液をダイアライザーに通して浄化し、体内に戻す治療法です。ダイアライザーは、機能を失った患者さんの腎臓の代わりをする装置で、透析膜の管が約1万本入っています。管の外側には透析液が流れ、管の中には血液が流れています。つまり透析膜をはさんで、透析液と血液が接するということになります。この時の透析液と血液の量を、QDとQBで表しているのです。

透析膜には小さな穴があり、血液と透析液が通過するときに、老廃物や電解質は血液から透析液に流れ出し、分子量の大きいタンパク質や血球成分などは血液中に残る仕組みです

Q者

ということは、QDやQBの数値が大きいほど、ダイアライザーの中で接する血液と透析液の量も増えるので、たくさんの老廃物が除去できて、透析治療の効果も上がるということなのでしょうか

川田川田

QDやQBを上げることで、すべての老廃物を多く除去できるようになるというわけではありません。除去できる量が増やせるかどうかは老廃物の種類によって変わってきます。

尿素やクレアチニン、アミノ酸など分子量が小さい物質は、透析液の量や血流を増やすことで、たくさん除去できるようになります。しかし分子量の大きい老廃物に関してはQDやQBを上げても、除去できる量はあまり変わりません

Q者

そうですか。では除去する量を全体的に増やすにはどうしたらいいのでしょうか

川田川田

QDやQB、それぞれの量を増やすより、QDとQBのバランスが重要になります

Q者

QDとQBのバランスは、どのくらいがいいのですか

川田川田

QDとQBの比率が2対1ぐらいだと、すべての大きさの物質を効率よく除去することができます。 一般的なQDは1分間あたり400〜500mlぐらいで、QBは1分間あたり200~250mlぐらいです。

しかし除去する量を増やそうと、無理に血流量を増やすのは、患者さんの体に負担となることもあります。特に透析を導入してまだ日が浅い患者さんの場合は、不均衡症候群などの合併症にもつながるため、最初はQD 、QBともに少なめにして透析治療を始め、様子を見ながら徐々に増やしていきます。 QD やQBは、患者さんの状態や年齢、合併症の有無などに応じて慎重に決めていく必要があるのです

Q者

なるほど、よくわかりました。次回の透析の時に、自分のQDやQBはどのくらいになっているのか、クリニックのスタッフに聞いてみることにします。QDやQB以外にも透析治療で物質を除去できる量に影響を与える要因はありますか

川田川田

血液透析で使用するダイアライザーの種類によっても変わってきます。ポイントはダイアライザーの透析膜の材質と面積です。

例えば合成高分子膜を使用したダイアライザーなら、小さい分子量の物質だけでなく、β₂ミクログロブリンのような分子量の大きい物質も除去することができます

Q者

β₂ミクログロブリンは、透析患者の体にどんな影響を与える物質なのですか

川田川田

何年も透析を続けていると発症しやすい透析アミロイドーシスという合併症があります。これは、β₂ミクログロブリンが異常タンパクとなって骨や関節に沈着することで手指のしびれなどが起きる合併症です。ですからこれから長く透析治療を続けることになる年齢が若い患者さんの場合は、合成高分子膜のダイアライザーで、β₂ミクログロブリンの除去を行うようにします

Q者

透析アミロイドーシスは私も気になっています。重症になると指が自由に動かなくなり、手術が必要になると聞いたので

川田川田

はい、症状が重い場合は手の手術を行います。しかしこの合成高分子膜のダイアライザーは透析アミロイドーシスを防ぐ効果は期待できるのですが、すべての患者さんに使用しているかというとそうでもないのです。

実は合成高分子膜のダイアライザーには、除去率が優れている分血液の中に残しておくべきアルブミンなどもある程度除去してしまうという欠点があります。ですから、高齢になってから透析を導入した患者さんや栄養不良気味の患者さんには使用しないケースが多いです。そんな患者さんには血液透析治療が始まった当初から使用されてきた歴史がある再生セルロース膜などを選択します

Q者

透析膜にもいろんな種類があるんですね

川田川田

それから透析膜の面積も重要です。透析膜の面積が広いほど、患者さんの血液と透析液をより多く触れさせることができます。膜の面積が広いダイアライザーを使用する時は、QDやQBの量も増やすことになります。ダイアライザーは中空糸つまりすごく細い管の集合体です。これが製造可能となる技術により大広面積を確保できるようになっています。接触面積が広ければ物質の膜の透過性の抵抗が大きくても物質を交換する効率は向上します。日本の繊維産業が蓄積した紡績技術がベースにあることにも気づいて、多くの先人のご苦労にも感謝の気持ちを忘れないようにしたいところです

Q者

QBを増やす時に、注意することはありますか

川田川田

患者さんの状態はもちろん、シャントの機能にも注意します。QBを増やすということは、シャントから取り出す血液が増えるわけですから、シャントにトラブルがある時はできません

Q者

私達患者は日常生活でシャントの管理にも気をつけないといけませんね

川田川田

シャントが使えなくなると再手術をして新しいシャントを作ることになりますから、注意してください

Q者

血液透析とひと口に言っても、すべての患者が同じように治療を受けているのではなく、1人ひとりに最適の方法を選んで行っているのですね

川田川田

そうです。そして同じ患者さんでも、体調は日によって違いますし、透析治療を長く続けていると合併症や、年齢による変化も出てきます。そのすべてに合わせて患者さんがベストの体調になるように考えて治療するのが透析クリニックの役割でもあるのです

Q者

そのために血液検査やさまざまな検査をして、QDやQBの数値を決めたり、透析膜の種類や面積を変えたりするのですね

川田川田

1分間の透析液の量を表すQDや血液の量を表すQBは、透析で取り除かれる老廃物の量と密接な関係があります。しかし単にQDやQBの値が大きければいいというわけではなく、QDとQBのバランスや透析膜の種類や面積も重要です

まとめ

  • QDとは、1分間にダイアライザーの中を流れる透析液の量のことを表します。
  • QBとは、1分間に患者さんの体内から取り出される血液の量のことを表します。
  • 尿素やクレアチニン、アミノ酸など分子量が小さい物質は、QDやQBを上げることで、たくさん除去できるようになります。
  • 分子量の大きい老廃物は、QDとQBの比を2対1にすることで、効率よく除去できるようになります。
  • 透析を始めたばかりの患者さんは、不均衡症候群を防ぐために最初はQDとQBを低めに設定して、患者さんの状態を見ながら徐々に高くしていくこともあります。
  • 透析膜の種類や面積によっても、除去できる老廃物の種類や量が変わってきます。
  • 合成高分子膜の透析膜は、透析アミロイドーシスの原因になるβ₂ミクログロブリンを効率よく除去することができます。
  • 高齢で透析を導入した患者さんや栄養不良の患者さんの場合は、再生セルロース膜の透析膜を使用することが多いです。
  • 透析膜の面積が広いほど、多くの老廃物を除去することができます。
  • シャントにトラブルがあるとQBを増やすことができないので、日常生活の中でシャントの管理には気をつける必要があります。