Q者

現在週3回透析クリニックに通院して、1回4~5時間の透析治療を受けています。ほぼ1日おきにクリニックに行かなければならないので、通院が負担です。通院回数を減らすことはできませんか

川田川田

週に3回通院しなければならない透析患者さんは、本当に大変だと思います。回数を減らせないかという相談もよく受けます。しかし腎臓の働きを失った末期腎不全の患者さんの命を守るためには、週3回の透析治療はどうしても必要なのです。以前にもお話ししましたが腎臓の一番大切な働きは尿を作りながら体内環境を一定に保つということです。ホメオスターシスつまり生体の恒常性ということですね。時々刻々変化していく体の状態に対してホメオスターシスを保つには週3回のほうが理にかなっているところを御理解いただければと思います

Q者

そうですか…。1回あたり4~5時間の治療を週に3回受けるので、1週間の合計で考えると12~15時間透析をしていることになります。例えば週2回にして1回の治療を6~7.5時間にするというわけにはいかないのでしょうか

川田川田

それができたら患者さんも楽になるのですが、そういうわけにはいかないのです。仮に現在は月曜、水曜、金曜の週3回通院しているとします。その場合透析と透析の間は中1日と中2日になりますね

Q者

はい、中1日が2回、中2日が1回です

川田川田

透析と透析の間の日の過ごし方で、注意するように言われていることはありませんか

Q者

水分制限をまもり、体重が増え過ぎないようにと言われています。それから食事から塩分やカリウム、リンを摂り過ぎないようにと言われています

川田川田

血液透析では機能を失った腎臓の代わりに患者さんの体から水分と老廃物を取り除くのですが、透析で除去できる量には限りがあります。1回あたりの時間を延ばせば、いくらでも除去できるというわけではありません。
例えば中1日の場合患者さんは体重増加を3%以内となるように指導されます。体重50㎏の方なら、1.5㎏以内。透析患者さんの場合、増えた体重は体内にたまった水分量とほぼ同じですから、約1500mlの水分です。この水分を血液透析で取り除きます。
中2日の場合は6%未満までの体重増加が目安になります。体重50kgの患者さんなら、2.5㎏以内。つまり約2500mlの水分を血液透析で取り除くことになるのですが、これが1回の透析で取り除くことができる水分量のほぼ限界です。
これ以上無理に除水量を増やすと、体に大きな負担がかかってしまいます

Q者

中3日空いた場合、体内にたまった水分は一回の血液透析では取り除くことができないということですね

川田川田

そうです。週2回の透析を続けると、除去できなかった水分が体内にたまり続け、心血管系疾患につながることになります

Q者

水分についてはわかりました。それ以外の物質も週2回の透析では取り除ききれないのでしょうか

川田川田

透析と透析の間に患者さんの体にたまりやすいのは、カリウムとリンです。
健康な人の場合は尿の中に排出されるカリウムとリンですが、尿の出なくなった透析患者さんの場合は、体内に蓄積していきます

Q者

はい、カリウムとリンは、食事で多く摂らないように指導されています

川田川田

まずカリウムからご説明しましょう。カリウムは果物や生野菜、豆、芋など多くの食品に含まれるため、週に3回の血液透析で除去するのですがその効果は一時的。透析患者さんは高カリウム血症の方が少なくありません。高カリウム血症は、悪心や嘔吐などの消化器症状に加え、舌か顔面のしびれ、脱力感などを招きます。重症になると不整脈を引き起こし、命に関わることもあります。ですからカリウムはどうしても週3回の透析で除去する必要があります

Q者

毎回透析前に血液検査で血清カリウム濃度を調べるのは、そのためだったのですね

川田川田

次にリンです。リンはほとんどの食品に含まれているので、リンを全く含まない食事をすることは不可能です。普通の食生活では1日に約1200mgのリンが体内に入り、健康な人は毎日約800㎎のリンを尿中に、400㎎を便中に排泄しています。そこで透析患者さんの場合は1日800㎎以内のリン摂取になるよう制限されています。
1回の血液透析では約800~1000mgのリンを取り除くことができるので、週3回の透析をすれば
・体内に入ってくるリン 800mg×7日=5600mg
・体外に出ていくリン 便400mg×7日+血液透析800mg~1000mg×3=5200mg~5800mg
となり、リンが体内にたまるのを避けることができます

Q者

週3回の透析で、リンの除去がちょうど成立している状態なのですね

川田川田

週2回の透析だと
・体内に入ってくるリン 800mg×7日=5600mg
・体外に出ていくリン 便400mg×7日+血液透析800mg~1000mg×2=4400mg~4800mg
となり、患者さんの体にはリンがたまり続けることになってしまいます

Q者

体内にリンがたまると、どんな影響があるのですか

川田川田

リンにはカルシウムと結合する性質があります。そのため体内にリンがたまっていると、骨からカルシウムが溶け出し、骨がもろくなってしまいます

Q者

骨粗しょう症になるのですね

川田川田

骨が弱くなるだけではありません。カルシウムと結合したリンは、体内のさまざまな場所に付着する異所性石灰化の原因になるので、血管に付着して動脈硬化を進めることになってしまいます

Q者

なるほど。週に3回透析治療を受ける必要があることがよく理解できました。では血液透析も、腹膜透析のように自宅でする方法はないのでしょうか。それだと通院の必要がなくなるので、楽なのですが

川田川田

自分の家で血液透析を行う在宅血液透析という方法があります。しかし在宅血液透析は誰でも簡単にできるわけではなく、いくつか条件があります。
血液透析のための準備や装置の操作、針刺し、片付けなど、すべて患者さん自身で管理して実行することになります。クリニックで治療を受ける時のように医療スタッフの立ち会いはありません。そのために、患者さんは事前に導入トレーニングを受けることになります

Q者

家族の協力も必要でしょうか

川田川田

在宅血液透析はご家族のサポートも必要になります。ですから導入前のトレーニングはご家族も一緒に受けることになります

Q者

透析機器はどうするのでしょうか

川田川田

透析機器は医療機関から無料で借りることができますが、透析機器を置くための自宅の改修工事の費用や、透析に使用する電気代、水道代などは自己負担になります

Q者

自宅でできるのは便利ですが、すべて自分でやれるかは不安です。実際在宅血液透析をしている方はどのくらいいるのでしょうか

川田川田

在宅血液透析の実施例は、日本全国で500人程度と、あまり多くはありません

Q者

自分と家族ですべてを行うというのは、やはり大変ですね

川田川田

はい、しっかり自己管理ができる方そして自宅にある程度大型の機械が入るスペースと水処理が可能な住宅環境にある方にしかおすすめできないのが、在宅血液透析です。週3回の通院が負担になるということでしたら、送迎サービスを行っている透析クリニックを選ぶという方法もあります

Q者

送迎があれば、かなり楽になりますね

川田川田

血液透析治療を受けるための週3回の通院を続けていくことが、負担に感じることもあるかもしれません。しかし末期腎不全の患者さんの命を守るためには、この回数で、水分や老廃物などを除去することがどうしても必要なのです。クリニックの送迎サービスなどを利用して通院治療を続けてください

まとめ

  • 透析患者さんは、週に3回通院して1回4~5時間の血液透析を受けます。
  • 週に2回の血液透析では、水分や老廃物を十分に除去することができません。
  • 体内に余分な水分がたまると、心血管系疾患の原因になります。
  • 週3回の透析を続けないと、不整脈につながる高カリウム血症や、骨がもろくなる高リン血症を引き起こすこともあります。
  • 自宅でできる在宅血液透析という方法もありますが、実施例はまだ多くありません。
  • クリニックの送迎サービスを利用することで、通院の負担を減らすことができます。