そろそろ透析導入をした方がいいと言われていても、なかなか決心がつきませんよね。しかし無理に先延ばしにしていると、尿毒症が進んで命に関わるおそれもあります。腎機能の低下が進んできたら、各種の検査結果と自覚症状を参考にして、透析導入の時期を決めることになります。

今回は慢性腎臓病の患者さんが知っておきたい透析を始めるタイミングについてご紹介します。

透析を導入する基準について

透析導入の時期については、臨床症状、腎機能(検査値)、日常生活障害度の3項目について点数化して決める基準があります。

①臨床症状

次の7つの症状のうち3つあれば30点、2つあれば20点、1つなら10点を加算します。

体液貯留

全身性の強いむくみ、胸水、腹水、肺水腫など

体液異常

高度の低ナトリウム血症、高カリウム血症、高リン血症、低カルシウム血症など

消化器症状

食欲不振、悪心、嘔吐、下痢など

循環器症状

重篤な高血圧、心不全、不整脈など

神経症状

意識障害、睡眠障害、しびれ、強いかゆみなど

血液異常

高度の腎性貧血、出血傾向など

視力障害

視力低下、尿毒症性網膜症、糖尿病性網膜症など

②腎機能(検査値)

腎臓のろ過機能を占める血清クレアチニン濃度の検査値を点数化します。血清クレアチニン濃度が8mg/dl以上なら30点、5~8mg/dlなら20点、3~5mg/dlなら10点加算します。

③日常生活障害度

日常生活での活動度の低下の度合いを点数化します。終日ベッドから出ることができない状態なら30点、日常生活が著しく制限される状態なら20点、通勤通学や家事などが困難になった場合は10点を加算します。

以上の合計が60点以上になった場合、透析導入が必要と判断されます。
特に重視されるのは臨床症状で、血清クレアチニン濃度の検査値が高くなくても臨床症状が重篤な場合は透析導入になることが多く、逆に血清クレアチニン濃度が高くても臨床症状があまり見られない患者さんは、食事療法と薬物療法で経過観察を続けるケースもあります。

症状があまり出なくても透析導入が必要となるケース

基本的には臨床症状が透析導入の決め手になりますが、高齢者や糖尿病性腎症の患者さんの場合は早めに透析治療を開始するケースが少なくありません。高齢者や糖尿病から慢性腎臓病が進行した方の場合は、腎機能の低下により、心臓への負担が大きくなっているため、主治医が透析療法が必要と判断した場合は、早期からの透析導入が必要になります。

透析療法の種類を選択

透析導入が必要と主治医により判断されたら、次は透析療法の種類を選びます。透析療法には大きく分けて血液透析と腹膜透析の2種類の治療法があります。2016年末の時点で全国の透析患者は32万人を超えていますが、そのうち腹膜透析を行っている患者さんは全体の約2.6%と、ほとんどの患者さんは血液透析を選んでいます。

(日本透析医学会 慢性透析療法の現況よりhttp://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2017/p006.pdf
どちらの治療法にも長所と短所があるので、主治医とよく相談して選びましょう。

①血液透析

患者さんの腕の血管から血液を体の外に出して、透析器を通すことで老廃物や余分な水分などを除去し、きれいになった血液を再び体内に戻す方法です。透析を行っているクリニック通い、医療スタッフに行ってもらう治療法です。透析初回の約1ヵ月前に血液の出入り口になるシャントを腕に作る手術を受けます。日中は仕事があって通院できない場合は、夜間に透析を行っている医療機関もあります。

またまだ実施例は少ないですが、自宅に透析装置を設置して行う在宅血液透析という方法もあります。しかしすべて自分で実行し管理しなければならないため、在宅血液透析を行っている人は全国でまだ600人程度です。
(日本透析医学会 慢性透析療法の現況よりhttp://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2017/p006.pdf

長所

・多くの患者さんが受けている技術が確立している治療法なので安心して続けられる。
・操作はすべて専門の医療スタッフが行うので安心な上、通院の際に疑問点や不安点などは相談
できる。
・1回の透析で効率よく老廃物の除去ができる。
・半永久的に治療を続けることができる。
・老廃物を除去できるようになるので、透析導入前よりタンパク質制限はやわらぐ。

短所

・週に3回通院し、1回あたり4時間程度の治療を行うので、時間的な制約が増える。
・尿が出なくなるので、水分、塩分、カリウム、リンなどの制限は厳しくなる。

②腹膜透析

自分のお腹にある腹膜を利用して尿毒素の除去を行う方法です。透析液の出し入れを行うカテーテルを下腹部に留置する手術が必要です。また自動腹膜装置という機械を使って寝ている間に腹膜透析を行う方法もあります。

長所

・1日4回、1回あたり30~40分程度かかる以外は自由に生活できる。
・自宅で行うことができて、場所が確保できれば仕事場や出先でも可能。
・通院回数は1ヶ月に1回程度ですむ。
・食事や水分の制限が少ない。

短所

・自分で透析を行うため、自己管理が必要。
・腹部の手術を受けたことがある人はできないことが多い。
・腹膜の機能が低下するため、6~7年程度で血液透析への移行が必要になる。

透析導入が早すぎてもメリットはない

「いずれ透析をしなくてはならないなら、早めに導入した方がいいのではないか」という患者さんがまれにいらっしゃいます。しかし腎機能が低下してきても、すぐに透析療法を始めることでのメリットはありません。

慢性腎臓病を発症しても薬物療法や食事療法でできるだけ長く管理した方が、透析導入してからの経過や症状が良好な患者さんが多いです。
様々な内科的治療をしても老廃物や水分が体内に溜まり尿毒症による症状を改善できないと主治医が判断した時に透析導入となります。そして透析を始めると腎臓はほとんど働かなくなり、尿も出なくなります。

透析導入の時期は、腎機能の検査数値や症状により、主治医が最もよいタイミングを判断します。透析療法を開始するように言われたら、医師や家族と相談して前向きに検討しましょう。

まとめ

  • 透析導入のタイミングは、臨床症状、腎機能(検査値)、日常生活障害度の3項目から主治医が判断します。
  • 検査値では腎機能の低下が進んでいなくても、臨床症状が重い場合は、透析療法を始めることもあります。
  • 高齢者や糖尿病性腎症の方の場合は、心臓にかかる負担を防ぐため、早めに透析療法が必要になることもあります。
  • 透析療法には血液透析と腹膜透析があり、ほとんどの人が選んでいるのは血液透析です。
  • 血液透析は週に3回通院して1回4時間程度の治療を行います。時間的制約は多くなりますが、専門の医療スタッフによって行われるので安心です。
  • 血液透析を始めると、タンパク質制限はやわらぎますが、水分や塩分、カリウム、リンなどの制限は厳しくなります。
  • 腹膜透析は、自分の腹膜を使って行う方法で、自宅で行え、通院回数は1ヶ月に1回程度です。
  • 腹膜透析は時間的な自由度は高くなりますが、自分で透析を行うので自己管理が必要です。
  • 透析導入は早すぎてもメリットはありません。慢性腎臓病治療中は薬物療法や食事療法でできるだけ進行を抑え、内科的治療で尿毒症症状が改善できなくなった時、透析療法が必要と判断されます。