Q者

もともと運動が好きなのですが、透析患者の場合、どのようなスポーツまでならやっても大丈夫でしょうか?


川田川田

透析患者さんには、特に運動の制限はありません。中には登山やマラソンなど大変運動量が多いスポーツを楽しんでいる方もいらっしゃいます。しかしそれはごく一部の患者さんの特別なケースなので、一般の患者さんには体に無理にならない適度な運動をおすすめしています


Q者

適度な運動とは、どのくらいでしょうか?具体的に教えてください


川田川田

同じ運動をしても、疲れ方は皆さん違いますよね。患者さん一人ひとり、運動能力も体力も違うので、適度な運動もその方によって変わってきます。ですからどのくらいが適度かはご自身の感覚で判断していただくことになるのですが、一般的な目安は軽く汗ばむくらいと考えてください。一説に『鼻歌を歌いながら』できる範囲の運動なら安全ともいわれています。もちろん外では実際に歌を歌わなくてもOKです


Q者

あまり激しい運動は、よくないのですね


川田川田

びっしょり汗をかいてクタクタになるような運動は避けてください。軽い運動でもその日の体調によってはつらく感じる時があります。疲れた時は、必ず休むようにしましょう


Q者

わかりました。あまり体を動かさないのもよくないと聞いたので、何か運動は続けたいと思います


川田川田

主治医から安静を指示されている患者さん以外は、無理なくできる運動を続けることをおすすめします。

体を動かすことは肥満やメタボリックシンドロームの予防、血圧や血糖値のコントロールにも役立ちます。爽快感を感じられる運動なら、ストレス解消にもなります。特に糖尿病が原因で腎臓が悪くなり、糖尿病性腎症から透析治療が必要になった患者さんの場合は、意識的に体を動かすようにしましょう。

また高齢の患者さんの場合は体を動かすことが少な過ぎると、筋力や体力の低下につながりますから、やはり適度な運動が大切になります。
室内で椅子に腰かけた姿勢から立ち上がるという簡易スクワットもお勧めです


Q者

運動する上で注意することはありますか?


川田川田

まず気をつけたいのは、水分摂取です。運動すると水分を取りたくなりますが、透析患者さんは1日の水分制限量は必ず守らなければなりません。飲み物で取る水分の合計量は、1日500ml以内が目安です。運動後に水分を取った場合は、体内の水分量が増えすぎていないか毎日の体重測定で確認しておきましょう。また、スポーツドリンクは、カリウムやナトリウムを多く含んでいるので、透析患者さんには注意が必要です


Q者

水分摂取量は1日の制限量を超えないように、日頃から何か飲むたびにメモを取っています。
運動後に飲んだ時も必ずメモに加えるように気をつけます


川田川田

それから注意していただきたいのは骨折です。骨と腎臓はなかなか結びつかないかもしれませんが、実は深い関係があります。骨を強くするには、腸内でカルシウムの吸収を促進したり、骨へのカルシウム沈着を促すことが必要です。これらの働きを助けるのはビタミンDを活性化させた活性化ビタミンDなのですが、ビタミンDを活性化するのは腎臓で作られるホルモンです。

透析療法では患者さんの腎臓の代わりに、余分な水分や血液中の老廃物を取り除きますが、この活性化ビタミンDを作る働きは代行することができません。そのため透析患者さんは骨を強く保つことができないというわけなのです。骨が弱くなると、ちょっとしたことでも骨折しやすくなります。ですから運動を楽しむ際は、転倒などに十分に気をつけて、骨折を防ぐようにしてください


Q者

スキーなどは骨折しやすいので、控えるようにします


川田川田

透析療法で代行できない腎臓の働きは骨に関するものだけではありません。骨髄に作用して赤血球の生成を促進するエリスロポエチンというホルモンの働きも、透析では代わりができない腎臓の重要な働きです。そのため透析患者さんには貧血の方が多く見られます。

貧血だと体内の酸素が不足するため、体を動かした後息切れが起きたり、疲れやすくふらつきを感じたりすることもあります。
運動する時はご自身の体調に合わせて無理のない範囲で行ってください


Q者

実は私も貧血で、主治医から薬を処方されています。
ではどのような運動なら安心でしょうか?


川田川田

ウォーキングなら、ほとんどの方が安心して楽しんでいただけます。歩く速度も無理に速くせず、会話が楽しめる息が切れない程度の速さが目安です。ウォーキングは気分転換にもなるのでおすすめです。

しかし元々運動のお好きな方ならウォーキングだけでは物足りなく感じるかもしれません。その場合は歩く距離を増やしたり、部屋で筋力トレーニングなどを行ったりするのもいいですね。その他ラジオ体操なども手軽にできるのでおすすめです。ただ自分ではこれが適度と思っていても、疲れがなかなか抜けないようなら、運動量が多過ぎる可能性もあります。自分の脈拍数はいつでもどこでも簡単に測ることができます。1分間に脈拍数が、一応の目安として、120を超えてきたら無理せず一休みしましょう。運動量を減らして調整するか、主治医やクリニックのスタッフに相談してください


Q者

ウォーキングなら誰でも手軽に始められますね。
では、球技はどうでしょうか。以前テニスをやっていたので、できれば再開したいと思っているのですが


川田川田

テニスは、運動量よりも、シャント部分のケガのリスクが心配です。
シャントは衝撃や圧迫に弱いので、万が一ボールが当たった場合は、新しくシャントを作る手術をしなければなりません


Q者

そうですね。シャントの管理については、注意するように透析クリニックからも言われています。ではテニスを再開するのは諦めることにします


川田川田

運動量だけでなく、シャントを作った側の腕を使わないか、シャントのケガのリスクはないかなども考えるようにしてくださいね


Q者

体調が安定してきたら、スポーツクラブの会員になるのはどうでしょうか?


川田川田

筋力トレーニングや有酸素運動など、さまざまな運動に取り組みやすいので、スポーツクラブに通うのもいいですね。
スタジオレッスンには、ストレッチ中心のクラスや簡単な初心者向けのクラスもあります。
しかしどの運動をやる時も、シャントの圧迫には気をつけてください


Q者

こんな時は運動をやめた方がいいという目安はあるでしょうか?


川田川田

血圧のコントトロールがうまくいかず高血圧が続いている時やむくみがひどくなっている時は、運動を控えましょう。無理をすると心血管系疾患につながるおそれがあります


Q者

血圧は毎日自分でも測っているので、高い日は運動をしないようにします


川田川田

透析患者さんは、運動の制限は基本的にはありません。ご自身に合った適度な運動を定期的に続けていくことをおすすめします。決して無理はせず、疲れたら休むようにしてください。疲れがなかなか取れない時や、眠っても翌日まで疲れを持ちこすような場合は、運動量が多過ぎる可能性があります。またシャントを圧迫したり、ケガのリスクがある運動は控えることも大切です

まとめ

  • 透析患者さんは、体調が安定している場合は運動の制限は特にありません。
  • 一般的におすすめなのは、軽く汗ばむ程度の適度な運動です。
  • 適度な運動は、肥満やメタボリックシンドロームの予防、血圧や血糖値のコントロールに効果が期待できます。
  • 運動後に水分を取り過ぎないようにしましょう。
  • 透析患者さんは骨がもろくなっているので、運動する時は骨折に注意してください。
  • 貧血になっている透析患者さんも多いので、無理な運動は控えましょう。
  • シャントを圧迫したり、ケガのリスクがある運動は避けてください。
  • 血圧が高い時やむくみがひどい時は運動を避けましょう。