透析療法は一生続けていく治療ですから、どんな主治医のもとで受けるべきか迷いますよね。
現在腎臓内科で慢性腎臓病を治療中の患者さんにも、透析が始まったら透析専門医のいる施設に変わった方がいいのだろうかと考えている方がいらっしゃると思います。
透析専門医とは、日本透析医学会が定めた条件を満たした上で、指定の試験に合格した医師のことです。
今回は透析専門医とはどんな医師なのか、そして透析は専門医のもとで受けた方がいいのかについてご説明します。
透析治療を受ける主治医や施設選びの参考になさってください。

~メディケアNJクリニック

空ちゃん空ちゃん

こんにちは、清水さん


清水清水

空ちゃん、こんにちは


空ちゃん空ちゃん

今日は『透析専門医』について教えてほしくて来たんです。清水さん、『透析専門医』って知ってます?


清水清水

知っているけど、急にどうしたの?空ちゃんのお父さん、慢性腎臓病だって言っていたけど、まだ透析を始めるほど進行してはいないわよね?


空ちゃん空ちゃん

はい、父はまだ具体的に透析導入をすすめられているわけではないんですが、慢性腎臓病が進行したらいずれは透析が必要になるんですよね?それなら今から早めに透析のことを詳しく知っておこうと思って。それで調べたら『透析専門医』という医師がいることを知ったんです。父も透析をする時は『透析専門医』がいる病院がいいのでしょうか


清水清水

相変わらずね、空ちゃん(用意周到というか、気が早いというか……)。でも今から透析を受けるようになった時のことを詳しく知っておくのは悪いことではないと思うわ。じゃあ『透析専門医』について説明するわね


空ちゃん空ちゃん

はい、よろしくお願いします!

透析専門医とは

日本透析医学会はスペシャリストを育成するために、透析専門医制度を施行しています。透析専門医は専門プログラムを修了し、筆記試験などの試験に合格して初めて認定されますが、透析治療に関する基本知識に加えて診療技術や手術・医療倫理などで高い能力を身につけて、患者さんの合併症や偶発症に迅速に対応できる総合的な医療の技能を取得することが求められています。
日本透析医学会では、透析専門医は次の6項目について優れた能力を持つ医師としています。

①すべての腎代替療法の情報を提供できる

血液透析や腹膜透析はもちろんのこと、腎機能が悪化した患者さんが健康な腎臓を提供してもらう腎移植についての情報も提供できる医師です。患者さんが自分にとって最も適切な治療はどれになるか、医師と相談して検討することができます。

②高い水準の透析療法を実施できる

透析医学会での研修や学会で得た最新医療知識も活かしながら、患者さんにとって最善の透析療法を行うことができます。

③すべての血液浄化療法を実施できる

血液浄化療法は透析だけでなく、肝不全の方などに行う血漿交換療法や、潰瘍性大腸炎の方などに行う血球吸着療法なども含まれます。どの治療法もシャント手術を行って、血液を取り出してまた返血するという流れは同じですので、透析専門医が総合的な血液浄化療法の技術に習熟することで、医療全体の質を上げることができるようになります。

④透析患者さんの社会復帰を支援できる

透析療法を受けながら働いている患者さんや、働くことを望んでいる患者さんもたくさんいらっしゃいます。ただ治療するだけでなく、QOL向上のためにも、患者さんが社会参加できるように支援できる医師であることが求められます。

⑤透析患者さんに対して倫理的な配慮ができる

終末期に意識混濁した患者さんに透析治療を継続すべきか、あるいはエイズを発症している患者さんに透析治療を行うべきか、といった医療倫理の問題は、いざ判断を迫られると悩ましいものです。こうした医療倫理に知見があり、適切な判断ができる医師が望まれます。

⑥災害時に地域の透析医療を調整・遂行できる

週に2~3回透析を受けている患者さんが大雨や震災などの災害で透析を受けられなくなったら、命に関わります。
その場合は地域で早急に対応しますが、透析専門医が地域の患者さんの治療を調整し、遂行することが期待されます。

透析専門医は実務経験と知識を兼ね備えた医師にしかなれない

透析専門医になるには、日本透析医学会が実施する試験に合格する必要があります。
またその試験を受けるには、次のような様々な条件を満たしていなければなりません。
・日本透析医学会での会員歴が3年以上であること
・日本内科学会か、もしくは日本外科学会が定めている認定医または専門医であること。日本泌尿器科学会、日本小児科学会、日本救急医学会のいずれかが定めている専門医であること。日本麻酔科学会が定めている指導医の資格を持っていること
・臨床経験が5年以上あること。ただし、初期の研修医としての1年目は研修経験には含めない
・透析療法に関する臨床研修を透析専門医制度委員会が定めた研修カリキュラムに従い、学会認定施設において1年以上または教育関連施設において3年以上を含む通算3年以上行っていること
などがあります。

こうした条件をすべてクリアして、実務経験と知識を兼ね備えた医師だけが、高度な透析治療に対応することができるのです。

透析専門医は全国にどのくらいいる?

透析専門医の人数は、2018年現在約5700人で、日本全国各都道府県にいます。
お近くの透析専門医は日本透析医学会のホームページから探すことができます。
http://member.jsdt.or.jp/list/specialist
また日本透析医学会の会員数は約17000人です。
日本透析医学会会員の約33%が透析専門医ということになります。

透析治療は透析専門医のもとで受けた方がいい?

透析専門医は、車の運転免許に例えればA級ライセンスのようなものだと言えます。A級ライセンスとは、F1レースに出場することができるライセンスで、極めて優れたドライブテクニックを持ったドライバーにしか発行されません。そういう意味では、確かに透析専門医にかかっていると思うと安心感はありますが、日常的な運転にA級ライセンスが必ずしも必要とは言えません。
透析専門医資格を持っているかどうかにこだわるよりも、これまでに多くの透析患者さんを受け入れてきた実績があるか、重篤な合併症が起きた時の対応方法は確立されているかなどを重視する方が現実的です。実際そういった実績のある医師やクリニックなら、こと透析に関しては専門医資格を持っている方と同じような知識、情報、技術を持っていることがほとんどです。
また、週に3回通院して行う血液透析では、通いやすさも重要です。透析専門医を訪ねてわざわざ遠方のクリニックに通うような負担は余計なものと考えていいでしょう。もし自分が通いやすいクリニックに透析専門医がいたら、ちょっとした幸運だった、くらいにとらえるのが、正しい認識だと思われます。

透析治療は、腎臓の機能を失った末期腎不全の患者さんが生活の中に組み込んで、一生続けていかなければならない治療です。
透析専門医にこだわるよりも、自分の求める条件を優先して施設を選ぶことをおすすめします。

清水清水

どう?透析専門医について簡単に説明したけれど、わかったかな?


空ちゃん空ちゃん

はい!よくわかりました


清水清水

透析専門医は勉強熱心で志の高い優れた医師だけど、特に透析専門医にこだわる必要はないわ。医師はみんないつも勉強して患者さんに最善の治療ができるように努力しているから安心してね。専門医資格を持っていなくても、日本透析医学会に属している医師なら、何の問題もなく治療を任せられると思うわ


空ちゃん空ちゃん

私、清水さんの話を聞いて、決めました!


清水清水

えっ、何を決めたの?


空ちゃん空ちゃん

私、透析専門医になって、父が透析をすることになったら、治療します!


清水清水

うーん、とてもお父さん思いで素晴らしいんだけど、透析専門医になるためにはまず、お医者さんにならなくちゃいけないのよ!


空ちゃん空ちゃん

そ、そ、そうですよね……。そのためにはまず医学部に入らないと


清水清水

空ちゃんの意気込みとお父さんを思う気持ちはよくわかったわ。透析専門医について下にまとめておいたから、お父さんにも教えてあげてね


空ちゃん空ちゃん

ありがとうございます

まとめ

  • 透析専門医は、日本透析医学会が定めた条件を満たした医師が試験に合格して取得できる専門医資格です。
  • 現在、透析専門医は日本全国に約5700人います。
  • 透析専門医にこだわらなくても、多くの透析患者さんを受け入れてきた実績のある医師やクリニックなら安心して透析治療を受けることができます。