そろそろ透析導入を考えた方がいいと言われている患者さんは、透析治療は具体的にどのように行うのか知っておきたいですよね。患者さんの血液を体外に取り出して浄化した後また体内に戻す血液透析で、血液の出入口になるのがシャントです。

今回は、透析患者さんが通常腕に作るシャントについてご紹介します。

1分間に約200mlの血液を取り出すブラッドアクセス

血液透析では、血管に針を刺して血液を体の外に取り出し、ダイアライザーと呼ばれる透析器に通して血液をきれいにします。透析を効率よく行うために、多くの場合1分間に約200mlもの大量の血液をダイアライザーで巡回させます。

また透析は基本的に週3回、これからずっと続けていくわけですから、針が刺しやすく安定して多くの血液を確保できる上に、長期間使い続けることができる血液の出入口を作る必要があります。その出入口のことをブラッドアクセスと呼び、代表的なものが腕の動脈と静脈をつないで作る内シャントです。

腕の動脈と静脈をつないで作る内シャント

血管には動脈と静脈の2種類があります。動脈は心臓から全身に血液が勢いよく流れる血管で、一方静脈は全身から心臓に血液がゆっくりと戻る血管です。では針を刺して大量の血液を取り出すにはどちらの血管が適しているでしょうか。

動脈は血液の流れはいいのですが、筋肉のそばの深い部分に位置しているため、簡単に位置を確認することができません。静脈は、皮膚のすぐ下にあり針が刺しやすい血管なので、通常注射も静脈に行います。しかし血液がゆっくりと流れ過ぎているため、短時間に大量の血液を取り出すことができません。そこで、動脈と静脈の利点を生かして、血液を取り出すための血管を作ったのが内シャントと呼ばれるものです。これは手術によって動脈と静脈をつなぎ動脈から直接静脈に血液を流すようにして透析に十分な血液をとる方法です。

透析開始の2週間から1ヵ月前までに行う内シャント手術

内シャントを作る手術は約1時間程度で、問題なければ日帰りで行う施設もあります。数多くの患者さんを受け入れている実績のある透析専門クリニックなら手術実績も豊富ですし、これから透析療法に通うことになるクリニックで手術すれば、長期間透析を続けていて、万が一シャントにトラブルが起きた時も安心ですね。
内シャントは普通手首に造ることが多く、造る側は、利き腕とは反対側の日常生活で使うことが少ない側が一般的です。

一般的な手術の手順は次のようになります。

①局所麻酔後、手首の脈が触れるあたりを小さく切開します。

②動脈と静脈と見つけます。

③その部分を流れる血流を遮断して、動脈と静脈に小さな切れ目を入れます。

④その動脈と静脈の切れ目どうしを 髪の毛より細い糸で縫合し、血流を再開させます。
シャント部分に血液がスムーズに流れていることを確認して手術は終了します。

⑤手術後10~14日後に抜糸を行います。
この頃にはつないだ部分の血管が太く拡張し、内シャントが完成しています。

内シャントは、普通手術後2週間から1ヶ月後に使用できるようになります。

内シャントのトラブルについて

透析治療が長期間になると、内シャントにトラブルが起きることもあります。代表的なものをご紹介しますので、気になる症状がある時には早めに主治医に相談しましょう。症状によっては別の場所に再度シャントを作る手術が必要になります。

①内シャントの狭窄や閉塞

シャント血管の圧迫や過剰な血圧の低下などでシャント内の血液がスムーズに流れず滞ってしまうと、血栓ができて血管が詰まってしまうことがあります。またシャントの部分は血流量が多いため、長年透析療法を行っていると常にその部分に大きな圧力がかかります。そのため血管の壁がだんだん厚くなり血管の内側が狭くなるため、血管が詰まりやすくなります。

②内シャント瘤

動脈と静脈をつないだ部分に慢性の通過障害があり、血圧が高い状態が続くと、シャント部分が膨らむことがあります。

③スティール症候群

シャントが大きすぎると、手指の末梢(まっしょう)への血流が低下します。血流不足の状態が続くと、手指にしびれや痛み、冷感などが出ることがあります。

④ソアサム症候群

シャントの血流が手指末梢へ向かう静脈に合流して手指の静脈圧が過剰に上昇してしまうことで起きるトラブルです。
手指が暗赤色になって腫れ、痛みが出ることがあります。
責任血管を結索するという小手術で対応できますので、あまり不安に思わなくても大丈夫です。

⑤シャント感染

針を刺した部分から膿が出てきたり、痛みや腫れが見られます。
放置しておくと細菌が全身にまわり敗血症などの重態な状態になることがあります。
また、進行するとシャント破裂に至ることがあるので、早めの対応が必要です。

⑥高拍出性心不全

シャント部分の血流が大き過ぎると心臓に負担がかかり、心不全を引き起こすことがあります。

内シャント以外のブラッドアクセス

透析患者さんは内シャントから血液浄化を行っている方が最も多いのですが、症状により内シャントが作れない場合や他のブラッドアクセスを作る必要がある場合もあります。

①人工血管を用いたブラッドアクセス

静脈が細い患者さんや血管の損傷が著しい患者さんの場合は、人工血管を用いてブラッドアクセスを作ることがあります。人工血管を用いると刺しやすい血管を作ることができますが、内シャントに比べると閉塞が起きやすく、人工血管の壁から血漿がもれることにより嚢胞ができる血清腫や感染を伴うグラフト瘤などの合併症を発症しやすいという欠点があります。

②動脈表在化術

皮下組織を皮膚から剝いで動脈の下に移動させることで、動脈を深い部分から皮膚に近い部分に移動する手術です。閉塞が起きにくく心臓への負担もかかりにくいのですが、動脈は血液を取り出すことにしか使えないので、浄化した血液を戻す静脈に対しては別の手術が必要になる場合もあります。

③短期&長期カテーテル

早急に透析導入する必要がある場合や腕などにブラッドアクセスとして使えそうな血管がない場合は、足の付け根の静脈や首の動脈、鎖骨上静脈にカテーテルを入れて、血液浄化を行います。

血液を体外へ取り出すルートと体内へ戻す2つのルートがあることから、ダブルルーメンカテーテルと言います。血液透析用カテーテルは、血栓はできにくいのですが、半年程度しか使えず感染症のリスクが高いという問題点があるため、一時的な処置として利用します。

また 更にある程度長期に使用できるカテーテルもありますが 皮膚の下に設置する必要があり 手術が必要となります。ただこの場合感染には十分注意する必要があり消毒や生活上も清潔を保つ必要があります

④タバチエールシャント

内シャントは、手首の脈を測るあたりに作ることが大半ですが、例外的に親指の付け根の部分にシャントを作るタバチエールシャントという方法もあります。タバチエールシャントには血流が少なくなりやすいという欠点があります。

⑤腕以外の場所に作るシャント

腕にシャントを作れない場合は、足の付け根の鼠径部分や肩にシャントを作り血液浄化を行うこともあります。

内シャントに代表されるブラッドアクセスは、透析療法で血液の出入り口となる大変重要な部分です。狭窄や閉塞、感染症などに気をつけて、シャントを長持ちさせるようにしましょう。

まとめ

  • 透析導入の2週間から1ヵ月前に、血液の出入口になるブラッドアクセスを作ります。
  • ブラッドアクセスの代表的なものは内シャントで、手首の動脈と静脈をつないで作ります。
  • 内シャントが作れない場合は、人工血管などを利用してブラッドアクセスを作るケースもあります。
  • 内シャントは、狭窄や閉塞、感染症などのトラブルに注意する必要があります。そのシャントが使えなくなった場合には再手術で新しいシャントを作ることになります。