魚料理を食べたいが、リンやカリウムの過剰摂取が心配で…という透析患者さんがたくさんいらっしゃいます。
魚介類は、種類によってリンやカリウムの量が大きく違いますが、腎臓の悪い方が食べてはいけないものはありません。

比較的リンやカリウムの含有量が少ないものを選んで献立の中に取り入れるようにしましょう。
今回は透析患者さんが魚介類を食べるためのポイントについてご紹介します。

骨の異常をまねく高リン血症

透析患者さんは尿によって余分なリンを排出することができないため、体内にリンがたまりやすくなってしまいます。
血液中に過剰なリンがたまると、古くなった骨を壊す細胞の働きが活発になり過ぎ、新しい骨を作る働きが追い付かなくなり、骨がもろくなってしまいます。

また血液中のリンがカルシウムとむすびついて骨以外の場所に石灰化を起こす異所性石灰化につながり、動脈硬化などをすすめることになります。

そのため透析患者さんはリンの摂取量を制限する必要があります。
一般的な食事では1日あたり約1200mgのリンが体内に入るのですが、透析患者さんの場合は1日800mg以内が目安になります。

魚の栄養を摂りながら、リンを減らすには?

リンはほとんどの食品に含まれている成分で、魚介類にも多く含まれています。
しかしリン制限を気にし過ぎて、タンパク質不足や低栄養にならないようにしましょう。

また健康にいい脂は、魚類に多く含まれています。
脂質は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられるのですが、意識して摂りたいのはコレステロールを減らす効果もある不飽和脂肪酸です。

特に不飽和脂肪酸の一種、n-3系多価不飽和脂肪酸と呼ばれる脂肪酸には動脈硬化を防ぐDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)があり、さんまやあじ、いわしなど青魚の脂に豊富に含まれています。

透析患者さんにおすすめの魚介類、控えたい魚介類

透析患者さんが魚介類を食べる上でまずチェックしておきたいのは、リンの含有量です。
魚の栄養をしっかり摂取しながらリンの摂り過ぎを防ぐためには、魚介類の中でも比較的リンの含有量が少ないもの、逆に多いものを知っておきましょう。

リンが少ない魚介類なら量をしっかり食べ、リンが多めのものは少量に抑える工夫をして献立の中に取り入れるようにしてください。
また、リンだけでなく、カリウムの含有量にも注意が必要です。野菜に多く含まれるカリウムですが、魚介類にも多いものがあるので気をつけましょう。

【透析患者さんにおすすめの魚介類】

・サンマ
100gあたりのリン含有量が180mgと少ない上に、カリウムも200mgと比較的少ないのが、サンマです。
栄養価が高く、生活習慣病の予防効果が期待できるDHA、EPA等やカルシウムの吸収を助けるビタミンDも含まれています。

鉄分も豊富なので、貧血になりやすい透析患者さんにおすすめの魚です。
小骨の部分はリンが多めなので、残すようにしてください。

また塩焼きにした場合、大根おろしを一緒に食べてしまうとカリウムが多くなるので、注意しましょう。

・ブリ
リンの含有量は100gあたり130mgと少なめですが、カリウムは380mgと多めです。
ブリを主菜にした時は、もやしなどカリウムの少ない食材を組み合わせて食べるようにしましょう。

タンパク質や脂質、ビタミンをバランスよく含んだ栄養価の高い魚です。

・マグロ(トロ)
刺身や寿司ネタで人気のマグロは部位によって、リンとカリウムの量が違います。
トロは、100gあたりリン180mg、カリウム230mgと少なめです。

逆に赤身は、リン270mg、カリウム380mgと多くなります。
透析患者さんがマグロを食べる場合は、赤身よりトロを選びましょう。

ただし、お醤油は控えめにつけるようにしてください。

・カレイ
リンは100gあたり200mg、カリウムが330mgと、カリウムがやや多めなのが、白身で人気のカレイです。
煮物にする時は塩分を控えめにして薄味に仕上げましょう。

カリウムの量は他のおかずで調整するようにしてください。
また子持ちガレイはリンが多くなるので、避けてください。

脂肪分が少なく低カロリーなので、メタボリックシンドロームや肥満の方にもおすすめです。

・イワシ
リンは100gあたり230mg、カリウムは270mgと少なめです。
大葉や生姜などと相性がいいので、上手に使って減塩しましょう。

青魚の代表格とも言える栄養満点の魚です。
DHAやEPA、カルシウムなどが豊富に含まれています。

またイワシ水煮缶詰はリンが100gあたり360mgと多くなるので、避けてください。特に、イワシは内臓と骨にリンを多く含みます。

・ブラックタイガー
エビでは、ブラックタイガーが、リンも100gあたり210mg、カリウムも230mgと少なめです。車エビはリンもカリウムも多めなので控えましょう。
血液中のコレステロールや中性脂肪を下げ、血圧を下げるタウリンを豊富に含んでいます。

・アサリ
リンは100g中85mg、カリウムも140mgと少なめなのがアサリです。
うま味成分が豊富なアサリは、蒸し料理や煮物に使うと調味料を減らすことができるので、美味しく減塩できます。
貧血予防に効果的な鉄分も多めです。

【透析患者さんが控えたい魚介類】

・メカジキ
リンは100g中260mgとやや多め、カリウムは440mgと多い魚です。
刺身の場合は1~2切れ、ソテーなら切り身の半分程度に控えましょう。
量を少なめにして、たまに食べる分なら問題ありません。

・ウナギ
リンは100g中260mg、カリウムは230mgですが、かば焼きの場合、たれに含まれる塩分の多さが問題です。
またコレステロール量が非常に多いので、ごく少量をたまに食べるようにしてください。

・シシャモ
リンは100gあたり360mg、カリウムは200mgと、リンが大変多い魚です。
特に子持ちシシャモは卵の部分にリンを多く含んでいるため、避けてください。

・初ガツオ
春から夏にかけて旬を迎える初ガツオは、リンが100gあたり280g、カリウムが430mgと、どちらも高めです。
秋に獲れる戻りガツオの方が、リンは260mg、カリウムは380mgとやや低くなるのですが、それでも少なくないので、食べ過ぎには注意してください。

・ワカサギ
カリウムは100gあたり120mgと少ないのですが、リンが350mgと非常に多い魚です。
佃煮などの加工品もありますが、塩分が多くなるので避けましょう。

魚介類は、種類によってリンやカリウムの量が大きく違います。
リンやカリウムが少ないものや、含有量が多めのものは食べる回数や量を調節するようにしましょう。

まとめ

  • 透析患者さんはリンが体内にたまりやすくなるので、リンの摂取量を制限する必要があります。
  • 血液中にリンが過剰にたまると、骨がもろくなり、骨以外の部分に石灰化が起きる異所性石灰化の原因になります。
  • 魚介類にはリンの含有量の多いものがあるので、気をつけましょう。またリンが少なくてもカリウムが多いものもあるので、注意してください。
  • サンマは、リンもカリウムも比較的少なく、栄養価も高いので、積極的に食べたい魚です。
  • ブリは、リンは少なめですがカリウムが多めなので、カリウムが少ない野菜などと一緒に食べましょう。
  • マグロは、赤身よりトロの方が、リンもカリウムも少なめです。
  • カレイは、子持ちガレイを避けて、薄味の煮物にしましょう。
  • イワシは、水煮缶より生のイワシの方がリンもカリウムも少なめです。
  • エビでは、ブラックタイガーがおすすめです。
  • アサリは、うま味成分を生かして、美味しく減塩できます。
  • 透析患者さんが控えた方がいい魚介類は、メカジキ、ウナギ、ししゃも、初ガツオ、ワカサギなどです。
  • 診療経験的には高リン血症となる料理は、刺身、寿司、うなぎ、佃煮類が多い印象です。