Q者

慢性腎臓病が悪化してから、仕事を休んでいます。
そろそろ透析を考えた方がいいと言われていますが、透析を始めたらまた働くことはできるでしょうか。
できるだけ早く社会復帰したいと考えているのですが


川田川田

末期腎不全の患者さんも透析を始めて症状が安定すれば、元の職場に戻ったり他の仕事についたり、社会復帰されている方がたくさんいらっしゃいます。
透析患者さんの就労状況について調査したデータがあるので、参考までにご紹介しますね。
全国腎臓病協議会、日本透析医会、統計研究会が2016年に共同で行った血液透析患者実態調査によると、透析治療を受けている患者さんで仕事をしている人は33.7%でした。
このデータには高齢者の方が多く含まれているので、若い年齢層に絞って見てみると、働いている方の割合は、より高くなります。
年齢、男女別にみると40~49歳の男性ではほぼ7割、50~59歳の男性では6割強、40~49歳の女性では4割強、50~59歳の女性では3割強が仕事に就いていました。
また現在仕事をしていない方でも、60歳未満の患者さんだと、男性は7割以上、女性は4割以上が仕事をしたいと考えています。
週3回通院し4~5時間治療時間のかかる血液透析ですが、ご本人の意志と職場の理解、家族の協力などで、仕事をしておられる方がたくさんいらっしゃいます


Q者

透析をしながら働いている方は、予想以上にたくさんいらっしゃることがわかりました。
私も社会復帰する自信が出てきました。
年齢が若くなるほど、仕事と透析療法を両立して社会参加されている方が多いのですね


川田川田

透析を始めると、これまで体内に溜まっていた老廃物や毒素などを取り除くことができるので、透析導入前よりも体調がよくなり、仕事がしやすくなるケースが多いですね。
しかしすぐに元どおりに働けるわけではないので、焦って無理をし過ぎないように気をつけてください


Q者

透析を始めると、どのくらいで体調がよくなるのでしょうか


川田川田

患者さんによって個人差がありますが、透析療法に体が慣れるまでの間、不均衡症候群という合併症が見られることがあります。
これは透析中や透析後12時間以内に頭痛や吐き気、腹痛などが起きるものです。
不均衡症候群は透析に慣れてくるとだんだん起こりにくくなって、体調も安定してくることが多いです。
ですからその頃なら仕事の再開がしやすいですね


Q者

最初は、そんな症状が出るのですね。では透析導入後、しばらく様子を見て仕事再開の時期を決めることにします。
社会復帰を考える上で、具体的にはどんなことに気をつければいいでしょうか


川田川田

血液透析の場合、週に3回通院して4~5時間の透析を行うことが一般的です。
ですから通院して透析を受ける時間を作るために、まず勤務時間の調整が必要になります。
透析スケジュールの1例を考えてみますね。
週休2日制の会社なら、まず休日の土曜日を透析の日にあてましょう。
あと2日は1日おきに火曜日と木曜日に透析をすることになります。
1回の透析に4~5時間かかるので、通院時間も加えれば火曜日と木曜日の2日間は半休をとっていただく必要があります。
フレックスタイム制などをうまく利用できればいいのですが、そういった制度がない会社の場合は透析時間を確保できる別の部署への異動をされる方もいらっしゃいます。
仕事に復帰しても透析治療にきちんと通えること、働いても体調が悪くならないことが、社会復帰する上での絶対条件と考えてください。
働いても問題ないかどうかは、患者さん1人1人の状態によって違いますので、主治医とよく相談すると安心ですね


Q者

他の透析患者さんはどのような形で働いていらっしゃる方が多いのでしょうか


川田川田

血液透析患者実態調査によれば、収入のある仕事をしている方の中で、週5日以上働いている患者さんは、 男性は約6割、女性は半分弱です。
皆さん、仕事の内容や時間を調整しながら、透析療法と仕事の両立の工夫をされているのがわかりますね


Q者

その他に、透析患者が働く上で気をつけた方がいいことはありますか


川田川田

透析療法を導入することになったら、2週間から1カ月前くらいに、前腕の動脈と静脈を直接つないで内シャントを呼ばれるものを作る手術をします。
血液透析を行う時、血液の出入り口となるのはこのシャントです。
シャントが圧迫されると、内部の血流が滞り血栓ができてしまうので、腕のシャント部分を圧迫するような重い荷物を持つ作業は避けてください。
カバンの持ち手なども、シャント部分を圧迫することになるので、シャント手術をしていない方の腕で持つようにしましょう


Q者

シャント手術はこれからなので、手術した方の腕は日常生活の中でも圧迫しないように気をつけます。
1週間に3回透析療法を受ける時間を作ることを考えると、これまでと同じ仕事を続けられなくなることもあると思います。
透析患者が転職先を見つけるにはどうしたらいいのでしょうか


川田川田

透析療法を受けている末期腎不全の患者さんは身体障害者1級の申請をすることができます。
ですから透析患者さんは、一般の求人の他に、障害者求人にも応募することができます。
障害者枠での求人を行っている企業も増えていますし、職種によっては障害者求人サイトなどの情報を利用することもできます。
年齢によっては再就職や転職がなかなか思い通りにいかないこともあるかもしれませんが、体調と治療を最優先に考え、主治医やご家族とよく話し合って、働き方を考えてください


Q者

はい。転職することになったら、障害者枠も検討することにします


川田川田

それから仕事を再開した場合は、食事にも気をつけてください。
自宅療養中よりも外食をする機会が増えますが、食事制限はしっかり守るようにしましょう。
特に外食は手作りの料理に比べて塩分が多いので、注意が必要です。
可能ならお弁当を持って行くのもおすすめです


Q者

お弁当なら、食事制限が守れますね


川田川田

お弁当を用意してもらうなど、透析患者さんが仕事を続けるためにはご家族の協力も大切ですね。
また透析を始めると水分の制限が厳しくなります。
飲み物にも気をつけてくださいね


Q者

デスクでコーヒーなどをつい飲んでしまわないようにします


川田川田

最初は大変そうでも、仕事を再開されてとても生き生きしておられる患者さんがたくさんいらっしゃいます。
実際、様々な業界、職種の方が、透析をしながら働いていらっしゃいます。
病気を持っていても働いて社会参加することは、生活の質を高めてくれますし、励みにもなります。
また、私たち医療従事者にとっても、患者さんが社会復帰をすることは医療を進めていく上でも大きな励みとなり、患者さんから元気をもらうことにつながります。
決して無理をしないことや、体調の変化を感じたらすぐに受診することに気をつけて、社会復帰をなさってください

まとめ

  • 末期腎不全の患者さんも透析を始めると体調が安定するので、社会復帰できるケースが多いです。
  • 透析療法を受けながら働いている方はたくさんいらっしゃいます。
  • 透析を始めたばかりの頃は、体が透析に慣れていないため、頭痛や吐き気などの不均衡症候群という症状が出ることがあります。仕事の再開は体調が落ち着いてからの方がいいでしょう。
  • 仕事を再開しても、週に3回通院して4~5時間かけて行う透析時間を確保する必要があります。
  • 社会復帰したら食事制限、水分制限などにも気をつけましょう。
  • 決して無理をせず、主治医やご家族と相談しながら、自分に合った働き方を見つけてください。

執筆: (医療法人社団明生会グループ)