カリウムなどのミネラルは体のために大切な働きをしている成分なのに、慢性腎臓病の食事療法では制限しなければいけないのは不思議ですよね。
それは腎機能が低下した慢性腎臓病の患者さんの場合は、健康な腎臓の方のように余分なカリウムを排せつできない上に、細胞内からも血液中にカリウムが溶け出してくるためです。
血液中にカリウムが過剰に溜まるとカリウムの血中濃度が上昇して高カリウム血症になります。
高カリウム血症が進むと、不整脈を引き起こし命に関わることがあります。
今回は、慢性腎臓病の患者さんや患者さんのご家族が知っておきたいカリウムの制限についてご紹介します。

CKDによってカリウムが過剰に溜まる2つの理由

カリウムは筋肉の収縮に関係する栄養素で、筋肉が正しい動きをするために必要なミネラルです。
大事な栄養素ですので適量は必要なのですが、溜まり過ぎると問題を引き起こす成分でもあります。
CKDが進行した患者さんは血液中にこのカリウムが過剰に溜まりやすくなります。
その主な理由は2つあります。

第1の理由は、腎臓がカリウムの排せつを正常にできなくなっているためです。
カリウムはほとんどの食品に含まれているため、成人が普通の食事をしていると1日に約3000~4000mgのカリウムが体内に入ってきます。
そのなかの余分なカリウムを排せつするのも腎臓の大切な仕事の1つなのですが、CKDが進行して腎機能が低下するとカリウムの排せつが正常に行われず、体に過剰に溜まってしまうようになるのです。

第2の理由は、CKDの患者さんに起きやすいアシドーシスという症状のためです。
アシドーシスとは血液が酸性に片寄った状態のことで、腎機能の低下により酸の排出や血液のpHバランス調整ができなくなったために起きます。
アシドーシスがあると、血液の平衡を保つためにカリウムが細胞内から血液に放出されてしまい、血中カリウム濃度がますます上がってしまうというわけなのです。

不整脈の原因になる高カリウム血症

では過剰なカリウムが体内に溜まり、高カリウム血症になるとどんな症状が起きるのでしょうか。
カリウムは筋肉の動きに関わるミネラルなので、そのバランスがくずれると、筋肉のしびれが起こります。
最初は手足のしびれ等ですが、体内に蓄積する量が増えるにしたがって舌や顔のしびれ、味覚異常、筋脱力感、吐き気や嘔吐などの消化器症状と、症状が広範囲に広がってきます。
そして大変怖いのは、筋肉のマヒが心臓の筋肉にも起こることです。
心臓の筋肉の動きが乱れることで不整脈を引き起こし、最悪の場合心停止となることもあります。
このように高カリウム血症は非常に危険な合併症を引き起こします。
ですから腎機能が低下した患者さんが重篤な合併症を防ぎ命を守るためには、毎日の食事でカリウムの制限をすることが必要になるのです。

CKDの患者さんのカリウム摂取量は1500 mg~2000mg以下

カリウム摂取量の制限は、CKDのステージによって異なります。
CKDステージがG1からG3aの間は、基本的にカリウム摂取量の制限はありません。
CKDステージがG3b以上になると、1日のカリウムを2000mg以下に制限します。
ステージG4以降は1日1500㎎以下に制限します。
カリウム2000mg、1500mgと言ってもどのくらいの量かわかりにくいですが、普通の食事をしている人のほぼ3分の2から半分程度にあたる量です。
ただしこの摂取量制限は目安なので、血液検査の結果や症状、服用している薬などで変わってくることがあります。
カリウム制限が必要な人は、主治医や管理栄養士の指示に従い、食品から摂るカリウムの量を減らしましょう。

透析患者さんのカリウム摂取量は1500mg以下

血液透析では機能を失った腎臓の代わりに週に2~3回血液中のカリウムを取り除きますが、健康な腎臓と同じように除去することはできません。
ですから、血液透析を始めても引き続きカリウムの摂取量を制限する必要があります。
血液透析を受けている患者さんのカリウム摂取量の目安は1500mg以下です。
血液検査のデータにより血中カリウム濃度が安定した場合は、主治医が摂取量の調整をし、2000mg以下まで増やせることもあります。
腹膜透析の場合は、透析液が常に腹腔内にあるため、カリウムを除去し続けることができます。
そのためカリウムの摂取制限はなく、多めにカリウムを摂るように指導されます。

食事療法の基本は、カリウムが多い食品を減らすこと

自分が取ったカリウムの量を毎日把握するのは複雑で難しいので、まずカリウムが多く含まれる食品を減らすようにしましょう。
カリウムはほとんどの食品に含まれているのですが、特に多いのは生野菜や果物です。
肉類や魚類もカリウムを多く含んでいますが、こちらはCKDの患者さんが尿毒症を予防するためにタンパク質制限を行っていればカリウムの摂取量も自然に抑えられているので心配はいりません。
果物のおいしい季節を迎えると1日に複数種類の果物を食べてしまう人を見かけます。複数種類を食べると一挙にカリウム値が上昇してしまうので気を付けましょう。

・カリウムが特に多い食品は(それぞれ100gあたり)
ほうれん草690mg 小松菜500mg かぼちゃ400mg たけのこ520mg
さといも610mg さつまいも480mg じゃがいも410mg やまいも430mg
バナナ360mg いちご170mg メロン340mg キウイフルーツ290mg

調理の工夫でカリウムを減らすことができる

カリウムは野菜に多く含まれるので、野菜はあまり食べられないと困っている患者さんもいらっしゃいますが、ちょっとした調理の工夫でカリウムの量は減らすことができます。
カリウムには水に溶けやすい性質があるので、この性質を利用しましょう。
「『ゆでる』『さらす』『しぼる』の下ごしらえ」でカリウムを大きく減らすことができます。
例えば
・葉物野菜は以下の①~③のすべてを行い、おひたしにして食べましょう。
・いも類は、小さく切って水にさらしてから煮れば、カリウム量が減ります。

①小さく切ってからゆでる

カリウムは食材の細胞内に多く存在しているので、切ることで細胞を壊すようにするとカリウムが出やすくなります。
またできるだけ細かく切ってからゆでたり水にさらすことで、水に触れる面積も増えるので、より多くの量のカリウムを減らすことができます。
特にカリウムを多く含んでいるいも類は、細かく切ってからゆでるようにしましょう。
ゆで汁にはカリウムが溶け出しているので、捨ててください。
食材によっても違いますが、1分間ゆでると約20~30%のカリウムを減らすことができます。

②切ってから水にさらす

野菜を切ってから水にさらすと、15分で約10~20%のカリウムが減ります。
水にはカリウムが溶け出しているので、ざるにあげてしっかり水気を切るようにしてください。

③水気はしっかりしぼる

ほうれん草やキャベツなどはたっぷりのお湯でゆでた後、水にさらし、最後に水気をぎゅっとしぼりましょう。
しっかりしぼることで、カリウムの量は半分近くまで減ります。

・果物は缶詰を

生の果物はカリウムが多いので、缶詰を利用するようにしましょう。
缶詰のシロップにはカリウムが溶け出しているので、飲まないようにしてください。

日本茶は340 mg!カリウムが多い飲み物に注意

カリウムを多く含んでいる飲み物も覚えていきましょう。
食事でカリウム摂取量に気をつけているのに、血液検査のカリウム値がなかなか下がらなかった場合、原因は飲み物だったというケースもあります。

例えば(100gあたり)
・豆乳 カリウム190mg
・日本茶(玉露) カリウム340mg
・缶コーヒー カリウム約100mg

カリウムの摂り過ぎによる高カリウム血症は、不整脈など危険な合併症を引き起こします。
CKDステージG3b以降になったら、医師や管理栄養士の指示に従い、カリウム制限に取り組みましょう。

まとめ

  • 過剰なカリウムが体内に溜まる高カリウム血症は、不整脈など命に関わる病気につながります。
  • カリウム摂取量の目安はCKD3bの患者さんは1日2000mg以下、CKD4、5の患者さんと透析患者さんは1日1500mg以下です。
  • カリウムは水に溶けだす性質があるので、下ゆでしたり水にさらすことで、食材のカリウム量を減らすことができます。