慢性腎臓病の患者さんが取り組まなければならない食事制限はいろいろとありますが、減塩やエネルギー制限に比べて、リンなどミネラルの制限はわかりにくいですよね。
CKDが進行した患者さんや現在透析を受けている患者さんは、腎機能が低下しているためリンの排せつがうまくできず、血中リン濃度が高くなり、高リン血症を起こしやすくなります。
高リン血症は、骨の障害や血管の石灰化による動脈硬化につながるので、リン過剰摂取を防ごうというのが、リンの制限の目的です。
今回は、高リン血症を防ぐリンの制限についてと、リンの摂取量を減らす食事の工夫についてご紹介します。
まだリンの制限について指示されていない方も、すでにリンの制限を行っている透析療法中の方もご参考になさってください。

過剰なリンは骨粗しょう症や動脈硬化の原因に

リンは、本来は体に必要なミネラルの1つで、腎臓は体内に入ってきたリンを適量に調整し、余分な量を排せつする役割を果たしています。
しかし腎機能が低下した慢性腎臓病の患者さんは体内にリンが溜まり、高リン血症になります。
高リン血症は、一般的にCKDステージ3の頃から発症しやすくなり、透析療法を導入する頃には厳重な注意が必要になります。
では高リン血症になると体内ではどんなことが起きるのでしょうか。

①骨がもろくなる

リンにはカルシウムと結合する性質があります。
そのため血液中に過剰なリンがあると、リンと結合するカルシウムを作ろうとして骨が溶けてしまいます。
その結果骨の中のカルシウムの量が減り、骨がもろくなる骨粗しょう症や骨の変形が起きやすくなってしまいます。
慢性腎臓病の患者さんは、腎機能の低下により骨を作る活性化ビタミンが作られにくくなっているため骨の障害が起きやすいのですが、高リン血症によりますます骨折しやすくなり、QOL(Quality of Life:生活の質)にも大きく影響します。

②異所性石灰化が起きる

高リン血症を放置しておくと、リンとカルシウムが結合して骨以外の組織に沈着してしまいます。
これを異所性石灰化と言います。
石灰化は全身のさまざまな場所で起こります。例えば目で起これば結膜炎、関節だと関節炎による痛み、皮膚なら皮膚炎によるかゆみなどが発症します。
そしてこの石灰化は血管の壁でも起きるのです。
慢性腎臓病が進行した患者さんや透析患者さんは、元々動脈硬化が起きている方が多いのですが、血管壁の石灰化が起こると、血管壁はますます硬くなり動脈硬化が進行してしまいます。
動脈硬化は脳梗塞や心筋梗塞など命に関わる心血管疾患につながるので、透析患者さんが元気で長生きするためには、過剰なリンの摂取を防いで血管の石灰化を起こさないようにすることがとても大切なのです。

高リン血症は、初期のうちは自覚症状がほとんどありません。
骨の障害や動脈硬化は一度起きると元には戻らないので、定期的な血液検査で血中リン濃度を確認して、異常が見られた時は早急に対応する必要があります。

CKDの患者さんはリン摂取量に制限なし

リンの摂取量制限を始めるのは、基本的に透析導入後なので、それまでのCKD各ステージの間は特に制限は指示されません。
しかし血液検査で高リン血症が見つかるか、血中リン濃度が高かった場合は、食事療法によってリンの摂取を制限したり、リン吸着薬の服用が必要になることもあります。

透析患者さんのリン摂取量は1日800mg~900mg以下に

透析患者さんのリン摂取量制限の目安は、1日800mg~900mg以下です。
健康な人が普通の食事をしていると、食品から1日あたり約1200mgのリンが体内に入り、そのうち約800mgが尿中に排せつされています。残りの400mgは体内に吸着します。
しかし尿が出なくなった透析患者さんは、このリンの排せつができません。
そこで機能を失った腎臓の代わりに透析でリンを取り除くのですが、1回の血液透析で取り除けるのは約800~1000mgです。
週に3回透析を行っている患者さんの場合で考えると、1日あたり約400~500mgになります。体内に吸着する分を含めて、800mg~900mg以下にすることが必要となります。
つまり透析療法では健康な腎臓と同じようにはリンを取り除くことができないので、口から入ってくるリンを制限して対応しようというのが、リン摂取量制限の目的なのです。

リンが多く含まれる乳製品や豆類、肉類などに注意

リンは乳製品や豆類にも多く含まれるので これらも摂取量に気をつけましょう
また リンは多くの野菜にはあまり含まれないミネラルで、動物の体、つまり肉類や魚類に多く含まれています。
ですから肉や魚をたくさん食べるとリンの摂取量も増えることになります。
CKDステージ3以降の患者さんはタンパク質制限も指示されているので、タンパク質制限を守れば自然とリンの摂取量も減らせます。
しかしリンやタンパク質を減らさなくてはと、肉や魚を減らし過ぎると筋肉量が減って体力低下につながってしまいます。
体に必要なタンパク質は摂取しながらリンの摂取を減らすためには、リン/タンパク質比が低いものを取るよう心がけてください。

豚カツはヒレカツよりロースカツを

肉や魚は、種類や部位によってリンの含有量に違いがあるので、食材の選び方がポイントになります。
同じ料理でも、リンの含有量が少ないものを選び、逆に多いものは避けるようにしましょう。
例えば(100gあたりのリン含有量)
・豚ヒレ肉(230mg)、豚ロース肉(180mg)なので、豚カツはヒレカツよりロースカツを
・鶏ささみ(220mg)、鶏手羽先(140mg)なので、焼き鳥はささみより手羽先を
・マグロ赤身(270mg)、ブリ(130mg)のなので、お刺身はマグロよりブリを

食品添加物として含まれるリンは血中リン濃度が高まりやすくなる

ハムやソーセージなどの加工食品、かまぼこやちくわなどの練り製品、賞味期限の長い菓子類、清涼飲料、インスタント食品、菓子パンなどには、保存性を高めるための食品添加物としてリン酸塩、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウムなどが広く使われています。
これらの食品添加物に含まれているリンは、肉類や魚類に含まれているリンよりも体に吸収されやすく、血中リン値を上げやすいので注意が必要です。
加工食品などを食べる時は、お湯にさっと通すだけで食品添加物が溶け出すので、リンの量を減らすことができます。
例えば練り製品は、下ゆでしてから使いましょう。おでんの具に使う場合は、そのまま煮るのではなく分けて下ゆでし、煮汁は捨ててください。
ソーセージやウインナーは、切れ目を入れ表面積を大きくしてから数分間下ゆでしてから使いましょう。炒めてもリンの量は減りません。炒め物の前に湯通しすることがポイントです。

リンの摂取量制限については管理栄養士や医師に相談を

食事療法の中でもリンの摂取量制限は複雑です。
タンパク質制限や減塩、カリウム制限など食事療法全体の中で考えていかなければなりません。
今の自分の体調ならどの食材を選んでどの食材を控えるべきかわからない場合や迷った時は、管理栄養士に相談しましょう。
また高リン血症の程度により医師から血中リン値を下げるリン吸着剤が処方されることもあります。

透析患者さんの骨の健康を守り動脈硬化の進行などを防ぐためには、リンの摂取制限が重要です。
適切なタンパク質摂取の中でリンの量もコントロールできるように、食事療法に取り組みましょう。

まとめ

  • CKDが進行して透析療法が導入されると、リンの摂取制限が必要になります。
  • 過剰なリンが体内に溜まる高リン血症になると、骨がもろくなり、動脈硬化が進行します。
  • リンは肉類や魚類に多く含まれていますが、種類や部位によってリンの量が違うので、食材の選び方の工夫が大切です。
  • リンを制限しても、必要なタンパク質量は摂取しましょう。
  • 加工食品などに含まれる食品添加物にもリンが含まれているので注意が必要です。
  • 食事療法を続けても高リン血症が進行するようなら、薬物療法も行います。