透析治療を長期間続けている中で、腎がんを発症しやすくなるという話を聞くと心配になりますよね。腎がんは男性に多く、透析患者さんだけでなく、肥満の方、高血圧の方、喫煙される方にも見られる病気です。

今回は、腎がんの原因や腎がんが疑われる時に行う検査についてご紹介します。

腎臓にできるがんとは

腎・尿路にできるがん(膀胱を省く)は年間3万人以上の方が発症し、男女比はほぼ2対1で男性に多い種類のがんです。
(国立がん研究センターがん情報サービスがん罹患数予測2018年より)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/short_pred.html
近年では診断技術の進歩や検査機器の性能の向上で、1~2センチの小さながんを早期に発見し、治療を開始できるようになりました。左右のどちらか片方の腎臓にがんができることが一般的ですが、左右両方の腎臓に複数個のがんが発症する遺伝性のタイプもあります。
腎臓のがんは、発生部位により2種類に分けられます。

①腎がん(腎細胞がん)

主に腎臓の尿細管の中の細胞から発生するがんで、腎臓にできるがんの9割以上はこのタイプです。ですから一般的に腎がんと言うと、この腎細胞がんのことを指します。腎細胞がんは、がん細胞の種類により淡明細胞がん、乳頭状がん、嫌色素性がんなどに分類されます。

腎がんの場合、がんが小さいうちは自覚症状がほとんどありません。検診や他の病気の検査などを受けた時に早期の腎がんが発見されることもあります。腎がんの代表的な症状は、血尿、腹部のしこり、腹痛です。最初は肉眼ではわからない程度の血尿で、痛みや発熱などもありません。その後はっきりとわかる血尿が出ますが、数日で止まり、またしばらくすると血尿が出るという繰り返しで悪化していきます。やがてわき腹が腫れて痛み、腹部のしこりが見られるようになります。食欲不振や体重減少、倦怠感、発熱などの全身症状が見られることもあります。進行すると他の臓器に転移し、肺転移では咳が、骨転移では骨の痛みや手足のしびれなどが起きます。

②腎盂がん

尿の通路である腎盂にできるがんで、尿路内に多発することもあります。腎盂がんは最初からはっきりとわかる血尿が出るのが特徴で、出血が激しい場合は血液が固まって尿管がつまり、腹部に鈍痛や激痛が起きることもあります。膀胱がんを併発するケースもあります。細胞学的には腎盂・尿管から膀胱内部は移行上皮という同一の細胞で内張されています。これが膀胱がんを併発しやすい理由となっています。

③その他のがん(ベリニ管がん)

腎臓では腎細胞で構成される部位で尿が作られます。尿をつくるための糸球体と呼ばれる最小で基本単位的な部分があり、作られた尿はそこから集合管を通って腎盂に集められ尿管を通って膀胱へ流れていきます。この腎細胞と尿管との間の細胞レベルから発生するとされているのがベリニ管がんと呼ばれているものです。発生頻度は非常にまれです。もちろん透析腎に特有のものではありませんが、残念ながら生命予後は不良です。この話題を通じて「がん」は細胞レベルの病気であるということもご理解下さればと思います。

透析患者さんが腎がんを発症しやすい理由

①発がん物質が体内に溜まりやすくなるため

透析が必要になった末期腎不全の患者さんは、尿として老廃物を排泄することができないので、体内に毒素が溜まりやすくなります。そのため透析で老廃物を取り除くのですが、すべてを除去することは不可能で、健康な人よりは発がん物質などが体内に残りやすくなり、がんの原因につながることがあります。

②免疫力の低下

腎機能の低下とともに免疫力が低下することも、がんの原因になります。

③萎縮腎内の嚢胞

腎機能が低下すると、腎臓は小さく硬くなります。この状態を萎縮腎と言い、一度萎縮した腎臓は元の状態に戻ることはありません。透析患者さんは萎縮腎が見られることが多く、萎縮腎には嚢胞が形成されます。この嚢胞内に腎がんができるケースが多く、このような経過でできたがんは透析がんと呼ばれています。

透析以外の腎がんの原因

腎がんの発生原因についてはまだ明らかになっていませんが、喫煙する方、肥満の方、高血圧の方に多く見られる病気です。また染色体の中に存在するがん抑制遺伝子の異常が関与しているという報告もあります。

腎がんを早期発見するための検査

腎がんが疑われる場合の検査は画像検査が中心になります。
検査方法は、腎がんと腎盂がんでは異なります。

①腎がんの検査

腹部超音波検査

まず超音波検査で腎臓の中を検査します。腎臓の腫瘍には腎血管筋脂肪腫などの良性の腫瘍もありますが、超音波検査を行うことで腫瘍が悪性か良性かの判断をすることができる場合もあります。

CT検査

CTは腎がんの確定診断の一助となります。他の臓器のがんの場合は針で組織を採取して調べる生検で確定診断を行うのが一般的ですが、腎がんは腫瘍に針を刺すとがん細胞を周囲にまき散らしたり転移の原因になることがあるので、生検は行いません。

がんと血管の位置やがんの状態をより正確に調べるためには、造影剤を注入して造影CT検査を行います。造影剤にはヨードが含まれているので、ヨードにアレルギーのある患者さんやCT検査だけでは腎がんを特定できない場合はMRI検査で腎臓の内部を調べます。

転移の有無を調べる検査

腎がんは肺や骨に転移しやすいので、がんが進行していた場合は、肺や骨の検査が必要になります。肺は、胸部X線撮影や肺CT、骨は骨の代謝や反応を調べる骨シンチグラフィーを行って、がんの転移を確認します。

②腎盂がん

膀胱鏡検査

腎盂がんははっきりとした血尿が特徴なので、まず血尿の原因を調べる検査を行います。腎盂がんよりも膀胱がんの方が発症頻度が高く、腎盂がんと膀胱がんの見極めは難しいため、膀胱用の内視鏡(膀胱鏡)を尿道から挿入して膀胱内の状態を確認します。膀胱がんの可能性が否定できれば、腎盂や尿管の検査に移ります。

尿細胞診検査

尿内にがん細胞が出ていないかを調べる検査です。検査結果は5段階で評価され、1、2は悪性所見なし、3は悪性の疑い、4、5は悪性所見ありとなります。しかし腎盂がんの場合、尿細胞診検査が陰性を示すこともあるので、この検査だけでは腎盂がんの可能性を否定することはできません。

排泄性腎盂造影

造影剤を点滴注入しながらX線撮影を行い、尿の流れを調べて、がんの有無を確認します。
腎盂がんがある場合はこの検査で9割の患者さんに異常所見が見られます。

腹部超音波検査

腎盂内にがんがあるかどうか、超音波検査で調べます。

逆行性腎盂造影

腎盂や尿管の状態を詳しく調べる検査です。
膀胱内の尿管口からカテーテルを挿入し、カテーテルから造影剤を注入してX線撮影を行います。

尿管鏡検査

他の検査では充分な所見が得られなかった場合や、治療方針を立てるために行う検査です。
麻酔をして尿道から尿管鏡を入れ、尿管や腎盂の状態を詳しく調べます。この検査では腫瘍の組織の一部を採取して生検を行うことも可能で、組織検査によりがん細胞の悪性度を判定することができます。

腎臓にできるがんには、腎がん(腎細胞がん)と腎盂がんがありますが、ほぼ9割以上が腎がんです。喫煙、高血圧、肥満などが原因になる男性に多いがんで、長期間透析治療受けている患者さんは腎臓が萎縮し嚢胞ができることで、腎がんを発症することもあります。

まとめ

  • 腎臓にできるがんには、腎臓の機能を担う腎実質にできる腎がんと腎盂にできる腎盂がんありますが、ほぼ9割以上が腎がんで一般に腎がんと言うときは腎細胞がんです。
  • 腎がんは男性に多い病気です。
  • 喫煙、肥満、高血圧などが腎がんの原因になります。
  • 透析患者さんの場合は、老廃物の蓄積や、免疫力の低下ががんの原因になります。萎縮した腎臓内に嚢胞ができることで、がんが発生することがあります。
  • 腎がんは早期は無症状ですが、進行すると血尿、腹部のしこり、腹痛が見られます。
  • 腎盂がんは最初から血尿が出やすく、膀胱がんを併発することもあります。
  • 腎臓にがんが疑われる場合は、腹部超音波検査やCT検査を行います。より詳しく調べて治療方針を立てるためには、造影剤を使った検査や内視鏡検査などが必要になります。