腎臓病はゆっくりと進行するものが一般的ですが、突然発症して急激に腎機能が低下する病気もあります。それが急速進行性糸球体腎炎という病気で、その名のとおり進行が非常に早いのが特徴です。

始まりがいつだったかわからないというほど急に発症し、気がついた時には末期腎不全になって人工透析が必要になったというケースも決して珍しくありません。しかも糖尿病や高血圧など腎臓病につながる要因を持っていなくても、かかる可能性があるので、注意が必要です。

腎臓の大切な働きは体内にたまった老廃物や尿毒症物質を濾し出して排泄することですが、そのための最小単位が糸球体です。体内の血液のメインロードである大動脈から腎動脈へと分岐して血液が腎臓に向かいます。その腎動脈が次々と分岐しながら細くなり、最後は内皮細胞のみの薄さの毛細血管なって不要なものを排泄していきます。で、毛細血管がちょうど「糸こんにゃく」のようなイメージで糸球体という小単位を構成しています。この糸球体にトラブルが起こってしまうのが糸球体腎炎です。

今回は急速進行性糸球体腎炎の原因、症状、治療についてご紹介します。

急速進行性糸球体腎炎とは

急速進行性糸球体腎炎は、徐々に進んでいく他の腎臓病とは明らかに違い、発症して数週間から数カ月で腎機能が一気に低下してしまう病気です。

中高年以降の方に発症するケースが多い病気ですが、子供から高齢者までかかる恐れがあり、男女差もあまりありません。
進行が非常に早く短期間で末期腎不全に至るのが特徴なので、発症直後に適切な対応をしなければ命に関わることも少なくない怖い病気です。

急速進行性糸球体腎炎の原因

ではなぜそのように急激に腎臓が機能を失ってしまうのでしょうか。急速進行性糸球体腎炎の発症から進行のメカニズムについてご紹介します。

①糸球体の基底膜に強い炎症が起こる

腎臓内で、血球やタンパク質は通さず老廃物や水分などの不要な物質だけ通過させるフィルターの役割を果たしているのが糸球体内の毛細血管です。

この毛細血管の外側には基底膜という膜があるのですが、急速進行性糸球体腎炎にかかると、この膜に強い炎症が起こります。
炎症が進むと基底膜の細胞は壊死してしまいます。

②血液中の細胞がボーマン嚢に侵入する

基底膜が破綻し役割を果たさなくなってしまうと、血液中の細胞が糸球体を包んでいるボーマン嚢という袋の中に侵入します。

③細胞が増殖して半月体を形成する

ボーマン嚢に侵入した細胞が増殖して、糸球体のろ過機能を低下させます。
この増殖した細胞は、断面が三日月や半月のような形に見えるため、半月体と呼ばれます。

④糸球体の炎症がさらに進行する

白血球の1種である好中球やマクロファージなどの免疫細胞が、半月体を異物とみなして攻撃し、糸球体の炎症をさらに進めます。

⑤半月体が線維化する

ちょうど皮膚にできた傷がケロイド状になるように、半月体が硬くなって線維化が始まります。
一度線維化してしまうと正常な状態には戻らず、腎臓の機能は急速に失われてしまいます。

以上のような変化が急激に進んで末期腎不全に至るのが、急速進行性糸球体腎炎です。

これ以外に溶連菌の感染後に発症する急性腎炎やIgA腎症がきっかけで起こるケースもありますが、どの場合でも半月体が糸球体に障害を起こし、進行が非常に速いという特徴は同じです。
ですから、腎臓の機能を守るためには、できるだけ早い段階で食い止める必要があります。

急速進行性糸球体腎炎の症状

最初は、発熱や、全身の倦怠感、食欲不振、関節痛、筋肉痛などの症状が見られるため、風邪や疲れのせいと考えて、病気の発症に気づかない方も少なくありません。急速進行性糸球体腎炎では、血尿が重要なサインの1つなので、血尿が出た場合はすぐに受診してください。

さらに進行すると貧血が起きたり、血痰や吐血などが見られることもあります。しかし、これだけでは腎臓の病気だとはわからないので、気づいた時にはかなり進行していたというケースも目立ちます。特に様々な不調がある高齢者は気づきにくいので、まわりの方が注意してあげましょう。

急速進行性糸球体腎炎が疑われる時は、尿検査と血液検査に加えて腎生検を行う必要があります。腎臓の組織検査で半月体が確認されたら、急速進行性糸球体腎炎と確定診断されます。

急速進行性糸球体腎炎の治療

急速進行性糸球体腎炎と診断されたら、直ちに入院して安静を保ち、集中的に専門的な治療を行います。入院期間は2~3カ月以上と長期になることもあります。

①パルス療法

副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬を3日間連続で点滴で大量に投与し、その後経口薬に変えて症状を見ながら少しずつ服用量を減らしていく治療法です。

炎症を抑える効果が高い治療法ですが、副作用のリスクもあるので、厳重に注意して行います。

②カクテル療法

副腎皮質ステロイド薬、免疫抑制薬、抗凝固薬、抗血小板薬の4種類を併用する薬物療法です。
各薬剤の効果を最大限に引き出すことができる上に、1種類の薬を大量に使用するよりも副作用を抑えることができます。

③血漿交換療法

パルス療法やカクテル療法などの薬物療法だけでは効果が十分でない時や症状によっては、血漿交換療法を行うことがあります。血漿とは、血液から血球を取り除いた液体成分のことです。血漿交換療法では、まず患者さんの太い静脈がある頸部や大腿部からカテーテルを使って、血液を体外に取り出します。

次に血漿分離器という機械に血液を入れて、血球と血漿に分けて、血漿は破棄します。代わりに健康な人の血漿を患者さんの体に戻します。血漿の中に含まれている病気を引き起こし悪化させている物質を、効果的に取り除くための治療法です。

④食事療法

入院中は、病気の進行度と症状に合わせて腎臓の負担をできるだけ減らすための食事療法を行います。タンパク質制限、塩分制限、水分制限など、医師の指示に従って行いましょう。回復期にはタンパク質制限や塩分制限が軽度になることが一般的です。

⑤退院後の治療

適切な治療を行っても、進行のスピードが非常に速いため末期腎不全に至ることも多い病気です。透析導入にならなかった場合も、退院後の生活には注意が必要です。薬物療法も2年以上続けていくことになります。

副腎皮質ステロイド薬は効果が強い分、副作用も起こりやすいのですが、自己判断で服用を止めたり薬の量を減らすようなことは避けてください。定期的に通院して、尿検査や血液検査を受けることも大切です。食事療法も、医師や管理栄養士の指示に従って続けましょう。

非常に進行が早く、数週間、数カ月の単位で末期腎不全に至る急速進行性糸球体腎炎は、人工透析が必要になることが多い病気です。発症後すぐに治療を行えるかどうかが決め手になりますので、わずかな変化も見逃さないようにご本人はもちろんご家族の体調にも気をつけてあげてください。

まとめ

  • 急速進行性糸球体腎炎は、急激に腎機能が低下して、短期間で末期腎不全に至る病気です。
  • 末期腎不全になった場合は、人工透析が必要になります。
  • 中高年以降に多く見られますが、男女の関係なく発症し、子供や高齢者もかかることがあります。
  • 糸球体の炎症により半月体という物質ができて腎機能が低下することが原因です。
  • 治療は入院して集中的に行い、副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬などの薬物療法を行います。
  • 薬物療法だけでは効果が見られない時や症状によっては、血漿の中に含まれる病気の原因物質を取り除くために、血漿交換療法を行うこともあります。
  • 入院中は安静を保ち、タンパク質制限、塩分制限などの食事療法も行います。
  • 退院後も定期的に通院し、2年以上は薬の服用を続ける必要があります。