妊娠がきっかけで腎臓が悪くなることがあると聞くと、妊婦さんご本人はもちろんご家族も心配になりますよね。妊娠によって血管への負担が増えることで起きる妊娠高血圧症候群は、以前は妊娠中毒症と呼ばれていた病気です。腎臓へ大きな負担がかかることで、強いむくみが出て、出産後も腎機能が回復しないケースがあります。

今回は妊娠高血圧症候群についてご紹介します。

妊娠高血圧症候群とは

妊娠高血圧症候群は、妊娠が原因になって起きる血管系の病気です。妊娠前の血圧には異常がなく、妊娠20週以降に高血圧が見られた場合、妊娠高血圧症候群と診断されます。

発症時期と症状で、4種類に分けられます。

早発型妊娠高血圧症候群

妊娠20~31週に発症する型を早発型と言います。重症化しやすいので注意が必要です。

遅発型妊娠高血圧症候群

妊娠32週以降に発症する型です。

妊娠高血圧腎症

高血圧でさらにタンパク尿が見られる場合を、妊娠高血圧腎症と言います。重症化とともに腎機能の低下が進むので、注意が必要です。

こんな人は妊娠高血圧症候群に注意

妊娠高血圧症候群は、妊婦さんの3~4%位が発症します。誰でもかかる可能性がある病気ですが、特にリスクが高いのは、次のような方です。

高齢出産の方

35歳以上の高齢出産の方は、さまざまなトラブルが起きやすくなりますが、妊娠高血圧症候群も発症のリスクが高くなります。

もともと血圧が高めの方

正常範囲でも収縮期血圧が130~139 mmHgの方は要注意です。

妊娠前から太っていた方

体重が重い方が発症しやすい傾向があります。また妊娠中に急激に体重が増えた方も、注意が必要です。

持病がある方

甲状腺の病気や糖尿病などの持病がある方は、妊娠により体の負担が増えることで高血圧となり妊娠高血圧症候群を発症するリスクが高まります。

ヘマトクリット値が高い方

ヘマトクリット値とは血液中に占める血球の体積比で、血液の濃さを表す値です。妊娠すると通常はヘマトクリット値は下がるのですが、高い場合は注意が必要です。

多胎妊娠の方

双子など多胎妊娠の場合は、母体への負担が増え、リスクが高くなります。

妊娠高血圧症候群の原因

なぜ妊娠により高血圧になるのか、原因はまだはっきりわかっていません。軽症のうちはほとんど自覚症状がないので、リスクの高い方は妊婦検診時以外にも自宅で血圧を測る習慣を作ることをおすすめします。

妊娠高血圧症候群の症状

妊娠高血圧症候群の2大症状は、高血圧とタンパク尿です。
軽症と重症は次のように定義されています。

軽症

血圧は収縮期血圧が140mmHg以上で160mmHg未満、拡張期血圧が90mmHg以上で110mmHg未満
タンパク尿は24時間尿を用いた検査で、1日300mg以上2g未満

重症

血圧は収縮期血圧が160mmHg以上、拡張期血圧が110mmHg以上
タンパク尿は24時間尿を用いた検査で、1日2g以上、あるいは複数回の新鮮尿検査で連続して+++(300mg/dl)以上の陽性反応が出た場合

血圧とタンパク尿が診断の目安になりますが、強いむくみも妊娠高血圧症候群の特徴です。妊娠中はむくみが見られる方が多いのですが、頻繁に強いむくみが見られる時は要注意です。

胎児と母体への影響

妊娠高血圧症候群が重症になると胎児と母体の両方に深刻な影響が出ることがあります。

①子宮内胎児発育遅延

血圧の上昇により血管が収縮することで胎盤への血流が減少し、胎児の発育状態が悪くなります。

②子癇発作

高血圧が原因で起きる全身性のけいれんです。
軽症の妊娠高血圧症候群の方でも起きることがあります。

③ヘルプ症候群

肝機能障害や、血小板減少、溶血性貧血が起こる病気で、血が止まりにくくなることもあります。
上腹部やみぞおちの突然の痛みが特徴です。

④肺水腫

高血圧により腎機能低下が進行すると、過剰な水分が肺全体に拡がり呼吸が苦しくなる肺水腫を引き起こすことがあります。

妊娠高血圧症候群の治療

①軽症の場合

定期的に血圧を調べながら、自宅でできるだけ安静を心がけて過ごします。また減塩を中心とした食事療法も行います。血圧が安定しない場合は降圧剤を服用するケースもあります。

②重症の場合

入院して安静を保ちながら、薬物療法や食事療法を行い、血圧が上がらないようにコントロールします。腎機能、肝機能、胎盤機能、胎児の状態を調べながら、できるだけ妊娠を継続できるように厳重に管理します。しかし母子ともに危険な状態と診断された場合は、帝王切開や誘発分娩で出産を早めることになります。

③出産後の治療

妊娠高血圧症候群は妊娠が原因となって起きるため、出産後は症状が改善されるケースが多いです。しかしその後の生活習慣や食習慣などで高血圧が慢性化した場合は腎機能の低下が進んでしまうので、注意が必要です。

妊娠高血圧症候群の予防

日常生活の工夫や食生活で、妊娠高血圧症候群を予防しましょう。

①減塩&低カロリーの食生活

塩分を摂り過ぎると、血管内の水分が増え血液量が増加します。その結果多くの血液を流そうとして、血圧が高くなってしまいます。妊娠中はつわりや食べ物の好みの変化により、濃い味つけのものを食べたくなることもありますが、できるだけ薄味を心がけましょう。
妊娠高血圧症候群の予防のためには塩分は1日10g未満が目安です。

また妊娠中に太り過ぎることも高血圧につながることがあります。1日の摂取カロリーは1800kcal以内を目安とし、脂肪や糖質の摂り過ぎには気をつけてください。自分の身長に合った適正な体重を保てるように心がけましょう。

②休養と睡眠

疲労も血圧を上げる原因につながります。充分な休養と睡眠をとるように心がけてください。日中も疲れた時は横になって体を休めると、交感神経の働きが抑制され、大きくなった子宮による血管の圧迫も少なくなるため、血圧上昇を防ぐことができます。

またストレスは血管を収縮させるため高血圧につながります。自分なりの気分転換、ストレス解消の方法を見つけることも大切です。

③適度な運動

特に医師から禁止されていなければ、適度に運動して体を動かすようにしましょう。ウォーキングやストレッチなどの軽い運動がおすすめです。

妊娠が原因で起きる妊娠高血圧症候群は、高血圧とタンパク尿、強いむくみが起きる病気です。減塩と充分な休養で予防し、発症した場合は早期に適切な対応ができるように血圧チェックを心がけましょう。

まとめ

  • 妊娠腎とも呼ばれる妊娠高血圧症候群は、妊娠が原因で血管の負担が増えることによって起きる病気です。
  • 妊娠20週以降に高血圧が見られた場合、妊娠高血圧症候群と診断されます。
  • 妊娠20~31週に発症する早発型の妊娠高血圧症候群とタンパク尿が見られる妊娠高血圧腎症は重症化しやすいので注意が必要です。
  • 元々血圧が高い方や双子を妊娠している方、体重が重い方は発症のリスクが高くなります。
  • 重症化すると母子ともに深刻な影響があるので、入院して厳重に管理します。
  • 出産後は高血圧が改善する方が多いですが、腎機能の低下が進み、腎臓病になる方もいます。
  • 予防には減塩と適度な運動、充分な休養とストレスをためない生活が大切です。