腎臓が悪くなってしまった患者さんも、透析治療を受けながら人生を楽しみたいですよね。しかし透析患者さんのQOLを大きく低下させる末梢動脈疾患という病気があります。末梢動脈疾患とは、足の血管に動脈硬化が起きて、血管が狭くなったり詰まることで、血液の流れが悪くなる病気です。重症になると、足に潰瘍ができたり壊死する重症下肢虚血という状態になります。今回は末梢動脈疾患と重症下肢虚血の特徴や治療方法から、早期に発見して対応しようという透析施設での取り組みについてもご紹介します。

重症下肢虚血とは?

末期腎不全の患者さんは、糖尿病、高血圧、高脂血症といったさまざまな原因が絡み合って進行した結果、腎臓の機能を失い透析治療が必要になった方がほとんどです。これらの要因がある方は、動脈の内側にコレステロールがたまったり、血管に負担がかかり続けている状態です。さらに透析患者さんの場合は、体内にたまったリンがカルシウムと結びつき石灰化も進みます。

その結果血管は硬くもろくなり、血管の内部が狭くなることで血液の流れが悪くなります。これが透析患者さんに動脈硬化が多い理由です。
では動脈硬化になり血流が悪くなると、どんな影響があるのでしょうか。

人間の体のすべての組織は、血液によって運ばれてくる酸素と栄養素によって活動しています。ですから動脈硬化が起きると、内臓や筋肉などは酸素不足や栄養障害を起こして、正常に働くことができなくなってしまいます。

動脈硬化は全身どこの動脈でも起こります。主に手足に血液を送る動脈を末梢動脈といい、この末梢動脈に動脈硬化が起きると、手足に血行不良が起こります。特に足の末梢動脈の動脈硬化による影響は深刻で、進行した状態を重症下肢虚血と呼びます。

重症下肢虚血になると、歩けなくなったり、じっとしていても足に痛みを感じるようになります。さらに悪化すると、足に潰瘍ができたり、壊死したりすることもあり、最悪の場合は足を切断しなければならなくなることもあります。透析患者さんの増加により、重症下肢虚血の患者さんも増加しています。また糖尿病が原因で末期腎不全に至る方が多いことも、重症下肢虚血の患者さんの増加に影響しています。

透析クリニックでのフットチェック&フットケア

末梢動脈疾患は、血管の病気のため、専門は血管外科や循環器科になります。しかし透析患者さんには末梢動脈疾患の発症や重症下肢虚血に進行する方が多いため、透析クリニックにおけるフットチェックとフットケアの必要性が注目されるようになりました。最初はなかなか自覚症状が出にくい病気なのですが、週に3回通院する透析クリニックで、早期に発見して重症化を防ごうという取り組みです。

①平成28年度診療報酬改定で新設された「下肢末梢動脈疾患指導管理加算」

透析患者さんのフットケアの重要性は、医療制度でも認められています。平成28年度の診療報酬改定で、透析クリニックの医療従事者が患者さんの足のチェックとケアを行い、重症の患者さんは専門の病院や診療科に紹介することで、診療報酬を請求する仕組みとなりました。つまり透析施設の医師や看護師によるフットケアが義務付けられたというわけなのです。

②透析中に行うフットケア

クリニックによって違いはありますが、透析中に行う主なフットケアは次のようなものがあります。

足浴と保湿

フットケアの前に足浴を行います。
きれいに洗った後水分をよくふきとり、保湿クリームなどをぬります。乾燥が進むとひび割れができて、そこから感染が起きることがあるので、自宅での保湿ケアについても指導します。

胼胝(べんち)のケア

胼胝(べんち)とは、圧力や摩擦、衝撃などが原因で、足の特定の部分の角質が厚くもりあがった状態のことです。タコとも呼びます。
胼胝をそのままにしておくと潰瘍ができたり、潰瘍からの感染の原因になります。胼胝は深く切って出血しないように気をつけながら、削って薄くととのえます。足に合わない靴が胼胝を作っていることもあるので、靴のチェックや指導を行うこともあります。

足白癬、爪白癬

いわゆる水虫のことです。透析患者さんは水虫にかかりやすいので、診断がついた場合は外用薬で治療します。

爪のケア

巻き爪や爪の炎症などの確認と、爪の切り方についても指導します。

潰瘍の治療

潰瘍は、早めに発見して処置を行います。足に負担をかける靴や間違った生活習慣などによって潰瘍ができている場合も多いので、患者さんのお話を聞いて潰瘍の原因を探すこともあります。

専門医療機関への紹介

足の甲の血管の拍動を調べます。拍動が弱ければ末梢動脈疾患が疑われるので両足と両腕の血圧を同時に測って比べるABI検査を行います。通常は足と腕で計る血圧は同じくらいか足がやや高くなるのですが、足の動脈硬化が進んでいる時は足の血圧が低くなります。ABI検査で異常が認められる場合は末梢動脈疾患の専門医療機関へ紹介することも、透析クリニックの重要な役割となっています。

末梢動脈疾患、重症下肢虚血の診察と治療について

透析クリニックから血管外科や循環器科へ紹介されると、ABI検査に加えMRI検査、CT検査などを行い、血管が詰まっている場所や状態などを詳しく調べ、治療方針を立てます。
治療はまず薬物療法で血栓を予防し、コレステロールや血圧を下げますが、それだけでは改善しない場合は、次のような治療を行います。

血管形成術

狭くなった動脈や詰まってしまった動脈をバルーンを使って拡げる治療法です。先端に小さなバルーンが付いているカテーテルを狭くなった血管に挿入し、バルーンを膨らませることで血管を拡げます。その後バルーンをしぼませてカテーテルを抜きます。

ステント治療術

ステントという金属性の柔らかい管で血管形成術を行う治療法です。カテーテルを使ってステントを血管の狭くなった部分に挿入し、そこでステントを拡げて埋め込むことで、血管が拡がった状態を保ちます。

バイパス手術

カテーテルを使った治療法が適さない場合は、外科手術を行います。閉塞した血管部分の上下を、体の他の場所からから採取した血管または人工血管を使ってつないで、血液のう回路(バイパス)を作ります。しかし高齢の患者さんや高血圧や糖尿病の患者さんの場合、体への負担が大きくリスクを伴います。

足の血管に動脈硬化が起きる末梢動脈疾患は、重症になると歩行にも影響ができる深刻な病気です。透析患者さんに発症しやすい病気のため、早期に発見して進行を防げるように、透析クリニックではフットチェック&ケアを行っています。

まとめ

  • 末梢動脈疾患とは、手足の血管に動脈硬化が起きることで、血流が悪くなる病気です。
  • 足の末梢動脈疾患が進行すると、じっとしていても痛みが出て歩行にも影響が出る重症下肢虚血という状態になります。
  • 動脈硬化が進みやすい透析患者さんは末梢動脈疾患を発症しやすいため、透析クリニックでフットチェックやフットケアを行います。
  • 透析クリニックでのフットケアは、医療制度でも義務付けられています。
  • 透析クリニックで末梢動脈疾患が発見された場合は、血管外科や循環器科に紹介されます。
  • 末梢動脈疾患は、薬物療法や血管形成術、ステント治療術、バイパス手術などで治療します。