高齢の患者さんやそのご家族は、透析治療で体に負担がかからないか心配ですよね。年をとるほど腎臓だけでなく体のあちこちに不具合が起きてくるので、主治医は他の病気との兼ね合いや合併症、患者さんの体調を考えながら透析治療を行います。

今回は高齢化に伴い増加の一途をたどる高齢の患者さんの人工透析についてご紹介します。

甚五郎甚五郎

しかしなあ、最近透析を受けにくるとまわりは年寄りばっかりだな。他の病院もこうなのか

高瀬高瀬

(年寄りばっかりって……甚五郎さんもその1人なのに)そうですね。透析治療を受ける高齢の患者さんは年々増えていますからね。
患者さんの高齢化は、社会にとっても私たち医療従事者にとっても大きな問題になっているんですよ

甚五郎甚五郎

そのへんのこと、ワシも将来のために知っておいたほうがいいかもしれんな。説明してくれんか

高瀬高瀬

将来のためって……。では人工透析と高齢者の問題について説明しますから、聞いていてくださいね

甚五郎甚五郎

さ、始めてくれ

高齢者の透析医療の現状

透析導入の平均年齢は1983年は51.9歳でしたが、年々年齢が上がり、2016年の調査では69.4歳と30年あまりで17歳以上も高齢化しています。
(日本透析医学会「2016年末の慢性透析患者に関する集計」より)
http://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2017/p015.pdf
また人工透析を行っている患者さんの平均年齢も、1983年は48.3歳でしたが、2016年は68.2歳にまで上昇し、65~85歳の患者さんが透析患者さん全体の6割近くを占めています。
(日本透析医学会「2016年末の慢性透析患者に関する集計」より)
http://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2017/p007.pdf
もはや透析治療が必要な末期腎不全は高齢者が中心の病気ともいえる状況となり、治療を行ううえでの注意点や患者さんご本人のQOL、介護など様々な課題があるのが現状です。

高齢の透析患者さんの特徴

①他にも病気がある患者さんが多い

心血管系疾患や癌など、高齢の患者さんには他にも病気をかかえている方が多く見られます。
透析治療が他の病気で飲んでいる薬に与える影響なども考慮する必要があります。

②認知症の発症

認知症の患者さんの場合は、透析治療中針を抜いてしまったり、ベッドから離れて動き回るなどのトラブルが起きることもあります。
ご家族または医療スタッフの付き添いが必要になるケースが多いです。

③骨粗鬆症の発症

骨粗鬆症は骨がスカスカになって非常にもろくなってしまう病気で、ちょっとしたことで骨折しやすくなります。元々高齢者の方は骨粗鬆症を発症しやすいのですが、透析患者さんの場合は骨を強化する活性化ビタミンDの生成が減っているので、骨を強く保つことができません。高齢の透析患者さんは、骨折がきっかけで寝たきりになることもあるので注意が必要です。

④薬の管理の難しさ

降圧剤や高脂血症治療薬、リン吸着剤、カリウム吸着剤、貧血の治療薬など、透析患者さんは服用しなければならない薬も多く、高齢になれば症状に合わせてますます薬の種類が増えるのが一般的です。通院時の検査結果などにより薬が変わることもあり、何種類もの薬を正しく服用し続けるのは、若い患者さんでも大変です。高齢の患者さんにはもの忘れが見られる方も多いため、薬の飲み間違いや飲み忘れがないようご家族の協力が必要になります。

高齢者が透析治療を続けるうえでの注意点

①血圧低下

高齢の患者さんは血液透析中に血圧が下がり過ぎるケースが見られます。すでに狭心症や脳梗塞などの心血管系疾患がある患者さんの場合は、血圧を下げ過ぎると心血管系疾患が悪化することがあるので、透析量が多くなり過ぎないように注意して透析を行います。

②栄養不良

元々食が細くなっている高齢の患者さんの場合は、食事制限を守ろうとして必要以上に量を減らしてしまう方も少なくありません。また長年親しんできた味の好みを変えるのは高齢の方ほど大変なので、塩分制限がきっかけとなり食欲が落ちてしまう場合もあります。栄養不良が続くと全身状態の悪化や体力の低下につながります。主治医や管理栄養士に相談しながらそれぞれの方に合わせた食事制限の実践方法を見つけていきましょう。

透析にはいったからといって、これまで何十年も続けてきた食生活を突然変えろといわれても土台無理な相談だという気持ちもわかりますが「食」が健康の基盤であることは御理解いただけると思います。あまり難しく考えないで、減塩に心がけて飲み食いすべて「腹八分目」という認識で日常を過ごしてみて下さい。後は血液データ等をみながら微調節という感じでやっていくとよろしいかと思います。日本語には「腹八分目」という本当に便利な言葉があります。

高齢の透析患者さんが利用できる公的補助制度

クリニックに通って治療を受ける血液透析の医療費は1カ月で約40万円と大変高額ですが、公的な補助制度の利用で自己負担額は1カ月1万円程度になります。また年金も、老齢年金の一部と障害年金の一部を組み合わせて受給することができます。

①後期高齢者医療制度

75歳以上の方は医療費の自己負担額が1割(年収が約370万円以上の場合は3割)になります。血液透析を受けている患者さんは自己負担額が1割でも1カ月約4万円と高額ですが、この自己負担額も次に紹介する各種公的補助制度の利用で減らすことができます。

②特定疾病療養受療証

加入している健康保険、または後期高齢者医療制度の窓口で手続きします。特定疾病療養受療証を医療機関の窓口で提示すれば、75歳未満の方は所得に応じて自己負担額は1カ月1万円または2万円になり、75歳以上の後期高齢者の患者さんは所得に関係なく1万円になります。

③地方自治体による補助

特定疾病療養受療証を交付されている患者さんの自己負担分の助成や、通院にかかる交通費の補助などを受けられます。対応は各自治体によって異なるので、お住まいの自治体の窓口で確認してください。

④身体障害者手帳

人工透析を受けている患者さんは年齢に関わらす身体障害者1級(検査の結果では3級の場合もある)の申請ができます。高齢の透析患者さんは他の病気も患っていることが少なくありませんが、身体障害者手帳が交付されると、他の病気で医療機関を受診したときも医療費の助成が受けられます。

⑤年金

65歳以上の患者さんは老齢年金と障害年金の両方を受給することができます。年金の内容と額については加入している年金の種類によって異なりますので、年金事務所で確認してください。

高齢の透析患者さんは、年々増加しています。他の持病も抱えている患者さんが多いことや合併症の進行など、高齢ならではの治療の難しさもあり、高齢になるほど主治医の適切な対応と家族のサポートが重要になります。

甚五郎甚五郎

なるほど、よくわかったよ。
確かに薬の管理はなかなか大変なんだよ。ワシもよく飲み間違いそうになるからな

高瀬高瀬

そうですか。では甚五郎さんもご家族に助けてもらっているんですね

甚五郎甚五郎

透析をするようになって、あらためて家族のありがたみを感じるよ。
アンタもワシが高齢者になってもよろしく頼むよ

高瀬高瀬

(だから、甚五郎さん、もう充分に高齢者なんですけど……)
もちろん私たちは患者さんのために一生懸命やらせていただきますが、これからますます増えるであろう高齢の透析患者さんのことは介護の問題も含め、社会全体で考えていく必要があると思いますね

甚五郎甚五郎

そうだな。高齢の透析患者が幸せに暮らせる世の中になってほしいよ

高瀬高瀬

高齢の透析患者さんの現状や治療について以下にまとめたので、読んでおいてくださいね

甚五郎甚五郎

わかったよ。ありがとう

まとめ

  • 透析導入の平均年齢は69歳で、透析患者さん全体の中で65歳以上の方が約6割を占め、透析患者さんの高齢化が進んでいます。
  • 癌や心血管系疾患、認知症など他の病気をかかえている場合は、それに配慮した透析治療が必要になります。
  • 透析患者さんは骨がもろくなりやすいので、高齢の患者さんの場合は骨折に注意が必要です。
  • 患者さんが薬を正しく服用できるように、ご家族がサポートしてあげましょう。
  • 高齢の患者さんの場合は透析中に血圧低下が起こりやすく、栄養不良による体調悪化が起きることもあります。
  • 高齢の患者さんの経済的負担が少なくなるよう様々な公的補助制度が整っています。