ネフローゼはよく耳にする病名ですが、なんとなく腎臓が悪くなる病気とは知っていても、具体的な原因や症状まで理解している方は少ないですよね。ネフローゼ症候群とは、腎臓の糸球体の異常のため尿に大量のタンパクが漏れ、血液中のタンパクが不足する状態で、腎機能の低下が進むと人工透析が必要になります。

ネフローゼ症候群は、腎臓の病気が原因となって起きる一次性ネフローゼ症候群と腎臓病以外の病気が原因となっている二次性ネフローゼ症候群に分けることができます。

また一般的に中高年以降に多い他の腎臓病とは違い、ネフローゼ症候群には子供に発症しやすい種類の病気があることも特徴です。今回はネフローゼ症候群についてご紹介します。

ネフローゼ症候群とは

大量のタンパク尿が出てむくみが出る腎臓の病気の総称を、ネフローゼ症候群と言います。ネフローゼ症候群は様々な病気から起こりますが、一次性ネフローゼ症候群と二次性ネフローゼ症候群の大きく2つに分けられます。

①一次性ネフローゼ症候群

腎臓の病気そのものが原因になっているものです。
主に次のようなタイプがあります。

微小変化型ネフローゼ症候群

最も多いタイプで、子供の患者さんも多い病気です。糸球体の形態には変化が起こりませんが、タンパク尿と低タンパク血症が急激に進行し、強いむくみが起こります。副腎皮質ステロイド薬の治療により治りやすいのですが、再発率も高いので、経過観察が必要です。

膜性腎症

大人のネフローゼ症候群では最も多く、中高年の患者さんが多い病気です。糸球体の毛細血管の壁である基底膜が厚くなることでろ過機能が低下し、多量のタンパク尿が出ます。

膜性増殖性糸球体腎炎

子供から20歳前後までの方に発症しやすい病気です。糸球体の基底層が厚くなり、腎機能が低下します。高血圧や血尿が見られることもあります。

巣状(分節性)糸球体硬化症

年齢を問わず発症する病気です。一部の糸球体に硬い部分が生じ、徐々に腎機能が低下します。発症率は低いのですが、薬物療法の効果が出にくく、20年で半数以上の患者さんが末期腎不全に至ります。

②二次性ネフローゼ症候群

糖尿病性腎症やループス腎炎、細菌やウィルスなどの感染、悪性腫瘍などが原因となって起きるものです。ネフローゼの治療の前に原因疾患の治療が必要になります。

ネフローゼ症候群の診断

ネフローゼ症候群の検査では、まず尿検査で尿に漏れ出しているタンパクの量を確認します。加えて尿を遠心分離機にかけた時に沈殿してくる成分である尿沈渣も確認し、重症度や原因疾患を調べます。血液検査では、血液中の総タンパクや血清アルブミンの量を確認します。

ネフローゼ症候群では、アルブミンの量が極端に少なくなることが特徴です。また脂質異常症も合併しやすいため、血清コレステロール値も調べます。診察ではむくみの状態も確認し、次のような診断基準をもとに、判断することになります。

ネフローゼ症候群の診断基準

大人の場合

必須条件
・1日の尿タンパク量が3.5g以上で、それが持続する。
・血清総タンパク尿が6.0g/dL以下。血清アルブミン値が3.0g/dL以下。

診断の参考
・むくみがある。
・血清総コレステロール値が250mg/dL以上。

子供の場合

必須条件
・1日の尿タンパク量が3.5g以上、または体重1kgあたり0.1g以上、または早朝起床時の最初の尿で300mg/dL以上の尿タンパクが3~5日以上持続する。
・血清総タンパク尿が、学童・幼児なら6.0g/dL以下、乳児なら5.5g/dL以下。血清アルブミン値が、学童・幼児なら3.0g/dL以下、乳児なら2.5g/dL以下。

診断の参考
・むくみがある。
・血清総コレステロール値が、学童なら250mg/dL以上、幼児なら220mg/dL以上、乳児なら200mg/dL以上。

ネフローゼ症候群の原因

ネフローゼ症候群の原因は、腎臓の糸球体の障害です。糸球体は毛細血管のかたまりのような組織で、血液をろ過するフィルターの役割をしています。通常はタンパク質や血球などは通さず、不要な老廃物だけを通して、尿のもとになる原尿を作っています。しかし糸球体に異常が起きると、毛細血管の壁が破れたり孔が大きくなってしまいます。

その結果体に必要なタンパク質まで通してしまい、尿中のタンパク量が増え逆に血液中のタンパク量は減少してしまうというわけなのです。

ネフローゼ症候群の症状

ネフローゼ症候群の4大症状は、「高度タンパク尿」「低タンパク血症」「強いむくみ」「脂質異常症」です。

①高度タンパク尿

健康な人の場合尿中に排泄されるタンパクは、150mg/dL以下です。一方ネフローゼ症候群の患者さんの場合は、1日3.5g以上ものタンパクが尿中に出てしまい、その状態が持続します。大量のタンパクが出た尿は、泡立ちができてなかなか消えません。このような尿が見られた時は、すぐに受診するようにしてください。

②低タンパク血症

尿中に大量にタンパクが出ていってしまうことにより、血液中のタンパク、特にアルブミンが減少します。その結果浸透圧の影響で血液中の水分が血管の外へと移動し、全身に強いむくみが起きることになります。またタンパクが不足した状態が続くと、それを補うために肝臓がタンパクを生成します。その過程でコレステロールや中性脂肪が結合したリポタンパクという物質が大量に作られ、血液中のコレステロールが増え脂質異常症を引き起こします。

③強いむくみ

全身に強いむくみが起きると、体重が増え、胸水や腹水がたまることで、せきが出たり息苦しさを感じたりするようになります。進行すると心臓に負担がかかり、うっ血性心不全を引き起こすリスクもあります。むくみは、ほとんどの患者さんが最初に感じる自覚症状です。

朝起きた時に顔全体がむくんでいたり、目が腫れぼったくなっていることが続くようなら要注意です。また手足がむくんで時計や指輪、靴などが急にきつく感じられるようになったら、受診するようにしましょう。

④脂質異常症

血液中のコレステロールが増えて脂質異常症になると、血液の粘り気が増えたいわゆる血液ドロドロの状態になります。そのため血栓ができやすくなり、腎静脈血栓症や肺塞栓症などに至ることもあります。

ネフローゼ症候群の治療

ネフローゼ症候群の治療は、入院して安静を保ちながら薬物療法を行います。一次性ネフローゼ症候群の治療には、副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制剤を使い、症状に合わせて脂質異常症や高血圧の治療も行います。また塩分制限、水分制限、タンパク質制限などの食事療法も同時に行います。

大量のタンパク尿が続き強いむくみが出るネフローゼ症候群は、子供から大人まであらゆる年齢の方に発症する可能性があります。尿の状態やむくみには日頃から注意して、異常を感じたらすぐに受診して重症化を防ぎましょう。

まとめ

  • ネフローゼ症候群とは、糸球体の異常により大量のタンパク尿と強いむくみが見られる腎臓の病気の総称です。
  • ネフローゼ症候群の4大症状は、「高度タンパク尿」「低タンパク血症」「強いむくみ」「脂質異常症」で、尿検査と血液検査で診断を確定します。
  • 微小変化型ネフローゼ症候群は、子供に多く発症します。薬物療法で治りやすい病気ですが、再発しやすいという特徴もあります。
  • 膜性腎症は中高年に多く見られる病気です。
  • 膜性増殖性糸球体腎炎は、子供から20歳頃までの患者さんが多く、高血圧や血尿を伴うこともあります。
  • 巣状(分節性)糸球体硬化症は予後が悪く、20年で半数以上の患者さんが末期腎不全に至ります。
  • 糖尿病性腎症やループス腎炎などによる二次性ネフローゼ症候群は、原因疾患の治療をまず先に行います。
  • ネフローゼ症候群の治療は入院して安静を保ちながら、薬物療法と食事療法を行います。