血圧と腎臓の病気は一見関係がなさそうに思われるかもしれませんが、深く影響を及ぼし合っています。高血圧が続くと、腎臓は悪くなっていきます。
実際高血圧が原因で発症する腎硬化症という病気があり、人工透析の原因疾患では3位と、患者さんも少なくありません。
今回は高血圧が腎臓に及ぼす影響から腎硬化症の特徴まで、詳しくご紹介します。
血圧が気になっている方はぜひご参考になさってください。

腎硬化症とは

腎硬化症とは、高血圧が原因になって腎臓の血管に動脈硬化が起こり、そのために腎機能が低下する病気です。
動脈硬化は全身の血管で起こりますが、腎臓の血管に起こる動脈硬化はタイプが異なります。
一般的な動脈硬化は太い動脈にコレステロールなどが溜まることによって進行していくのですが、腎臓の場合は細動脈硬化といって、腎臓内に多数ある細い動脈や、糸球体内で動脈がさらに細かく枝分かれした毛細血管で起こるものです。
腎硬化症には、徐々に進行する良性のものと急速に進行する悪性のものがあります。

①良性腎硬化症

高血圧状態が長い方に見られますが、老化現象としても起こることもあり、比較的高齢の患者さんが多い病気です。
自覚症状はほとんどなく、尿検査をすると軽度のタンパク尿や顕微鏡的血尿が確認されます。
良性という名前はついていますが、むくみや貧血、食欲不振などの自覚症状が現れた時は、腎機能がかなり低下しているケースが多いので、注意が必要です。

②悪性腎硬化症

最大血圧が180㎜Hg以上、最小血圧120㎜Hgという著しい高血圧の時に発症する30~40代の男性に多い病気です。
高血圧により腎臓の細い血管に障害が起こると、血流をよくしようと腎臓から血圧を上げるレニンというホルモンが分泌され、それによってさらに血圧が上昇するという悪循環に陥ります。
早急に治療を始めないと、短期間で末期腎不全に至るだけでなく、腎臓以外の心臓や脳の血管にも障害が広がり、心血管疾患のリスクが高まります。

腎硬化症の原因

腎臓は毛細血管のかたまりのような臓器のため、高血圧の影響を強く受けます。
高血圧が長く続くと、腎臓の細い血管は血液から強い圧力を受け続けるため、血管壁の細胞が傷つきます。
すると細胞はその傷を修復しようとして増殖して厚くなり、血管の内側が狭くなります。
これが細動脈硬化というものです。
そして細動脈硬化により血管が狭くなると腎臓への血流が悪くなる状態が続き、腎臓そのものが硬く小さくなる腎硬化症になってしまうというわけなのです。
腎臓内部には細い動脈がたくさんあり、ろ過する血液を糸球体に送り込んでいます。
血管が細くなり糸球体に送り込まれる血液が少なくなると、尿を作る働きにも影響が出て、腎機能が低下することになります。
このように腎硬化症の主な原因は高血圧による腎臓の細動脈硬化なのですが、一般的な動脈硬化によっても腎臓の障害が出ることがあります。

一般的な動脈硬化は粥状硬化(アテローム)と呼ばれ、血液中の余分なコレステロールなどが、太い動脈の血管の壁にドロドロになって溜まる状態です。
その様子がまるでお粥のようであることから、粥状硬化と名付けられました。
粥状硬化が進むと血管の壁が内側に盛り上がってきて狭くなるため、血流が悪くなります。
狭くなった血管に血栓が詰まると、脳梗塞や心筋梗塞など命に関わる病気につながります。
腎動脈でこの粥状硬化が起きると、腎臓に流れ込む血液が減ってしまうため、腎機能が低下します。
粥状硬化が多く見られるのは、肥満やメタボリックシンドロームの人、糖尿病や脂質異常症の患者さんです。
加齢によっても粥状硬化が進むので、高齢者にも多い症状です。

腎硬化症の症状

腎硬化症の症状は、良性と悪性で異なります。
良性腎硬化症の場合は、自覚症状がほとんどなく、初期は高血圧による動悸や頭痛、肩こり程度です。
悪性腎硬化症では、激しい頭痛や嘔吐、意識障害が起こります。
高血圧により視神経や目の血管にも障害が起きるので、視力障害や眼底出血が見られることもあります。
心不全など心血管疾患の発症にも注意が必要です。

腎硬化症の治療

腎硬化症の治療は、血圧コントロールが基本となります。
腎機能の低下を遅らせるためにも、心血管疾患を防ぐためにも、適正な血圧を持続することが重要です。
具体的な治療は、良性と悪性の場合で異なります。

①良性腎硬化症の治療

良性の場合は血圧を下げることができれば、腎機能の低下が急激に進行することはありません。
血圧降圧の目標は、最大血圧が130㎜Hg未満、最小血圧80㎜Hg未満です。
降圧薬のカルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、ARBなどを服用します。
食事療法も重要で、塩分制限は1日6g未満となります。
その他の生活習慣改善も同時に行い、特にタバコは本数を減らすのではなくきっぱりと禁煙する必要があります。
タバコに含まれるニコチンには、血管を収縮させ交感神経を活発にする働きがあり、高血圧の原因につながるためです。
肥満の方は、食事制限だけでなく、運動も行って減量するようにしてください。
また病状を自己管理するために、自宅でも血圧を測ることを習慣にすることも、治療にはとても重要です。
血圧は時間によって変動するので、朝と夜の1日2回、時間を決めて測るようにしてください。
患者さんによっては、日中病院で血圧測定をする時にはちょうど降圧薬が効いていて血圧が正常範囲になっていても、早朝や夜間には薬の効果が薄れて高くなっているケースがあります。
血圧コントロールができているか正確に医師に伝え、適切な治療を行ってもらうためにも、自宅での血圧測定の記録は、診察の時に主治医に見せるようにしましょう。

②悪性腎硬化症の治療

悪性腎硬化症の場合は、著しい高血圧により急激に腎機能が低下するので、早急に入院して降圧治療を始めます。
患者さんの症状に応じて、飲み薬での降圧治療ではなく、カルシウム拮抗薬の点滴などを用います。
ただし急激に血圧を下げると、腎機能の低下を進めてしまうことがあるので、徐々に血圧を下げていくようにします。
悪性腎硬化症では、急激に腎機能が低下して末期腎不全に至り、透析療法が必要になることもあります。

肥満やメタボリックシンドロームの方が増えるに従って高血圧の患者さんも増え、以前は主に高齢者の病気だった腎硬化症も若年化しています。
高血圧は腎臓だけでなく他の臓器にも動脈硬化を起こし心血管疾患の原因につながります。
高血圧と診断されたら、ふだんから血圧のコントロールをしっかりと行いましょう。

まとめ

  • 腎硬化症は、高血圧による腎臓の血管の動脈硬化が原因となり腎機能が低下する病気です。
  • 腎臓に多数ある毛細血管が狭くなってしまう細動脈硬化が起こることで、腎臓への血流が低下し、障害が起きます。
  • 腎硬化症には良性と悪性があります。
  • 良性腎硬化症は、早期には自覚症状がほとんどない高齢者に多い病気です。降圧薬の内服、塩分制限などの食事療法、禁煙などの生活習慣改善で治療します。
  • 著しい高血圧で腎機能が急激に悪化する悪性腎硬化症は、早急な降圧治療が必要となります。短期間で末期腎不全に陥り、透析療法が必要になることもあります。