慢性腎臓病が進行すると骨にも影響が出ると聞くと、心配になりますよね。
人間の骨は一度形作られたらそれで終わりということではなく、栄養として摂取された血中のカルシウムが常に骨に付いたり離れたりして「動的平衡状態」をたもって様々な状況に対応しています。骨を良い状態に保つには適度な日光浴や運動の他に腎臓でのビタミンDに関連した働きが必要になります。
腎臓は骨の健康を保つ大切な働きをしている臓器のため、腎臓が悪くなると骨の新陳代謝が正常に行われなくなり、もろくなります。

また血液中にリンがたまっていくことで、骨以外の全身の組織に石灰化が起き、さまざまな障害を起こしやすくなります。
今回は慢性腎臓病の患者さんに起きやすい骨ミネラル代謝異常の原因から症状、治療、予防方法までご紹介します。

腎臓と骨の関係について

私達の体の細胞が生まれ変わるように、骨も新陳代謝を繰り返しています。
古くなった骨に変わって新しい骨が生まれることで、骨の健康が保たれています。

しかし慢性腎臓病になって腎機能が低下すると、この骨の新陳代謝が正常に行われない骨ミネラル代謝異常になります。
そのメカニズムは次のようになります。

健康な人の場合

骨の新陳代謝には、破骨細胞と骨芽細胞という2つの細胞が関わっています。
破骨細胞は古くなった骨を壊す働きをします。

一方骨芽細胞は、新しい骨を作る細胞で、まず骨組みを作り類骨という壁を作ります。
類骨はまだもろい未完成の骨なのですが、活性化ビタミンDの働きで石灰化し、新しい骨が完成します。

このように古い骨が壊され新しい骨が作られることで、健康で強い骨が保たれるというわけなのです。

慢性腎臓病が進行した患者さんの場合

ビタミンDは骨を丈夫にするビタミンですが、そのままでは働くことができません。
皮膚での日光による働きとともに腎臓で活性化されて活性化ビタミンDとなることで、小腸でのカルシウム吸収を促進し、骨の石灰化を助けます。

したがって慢性腎臓病になって腎機能が低下すると活性化ビタミンDが作られなくなり、骨がもろくなります。
また慢性腎臓病が進行すると、糸球体のろ過機能が低下し、血液中にリンがたまっていきます。

体内にリンがたまると副甲状腺が刺激され、副甲状腺ホルモン分泌が促進されます。
副甲状腺ホルモンは破骨細胞の働きを亢進するため、古い骨が壊されるスピードに骨芽細胞が新しい骨を作る働きが追いつかなくなってしまいます。

この状態を二次性副甲状腺機能亢進症と言い、腎機能が低下した患者さんによく見られる症状です。
二次性副甲状腺機能亢進症になると骨がもろくなり骨折しやすくなる線維性骨炎や、脊椎で骨が形成されている部分と骨が吸収されている部分がラグビー選手のシャツの縞模様のように見えることから名づけられたラガーシャツ脊椎などを発症します。

関節炎や動脈硬化の原因になる異所性石灰化

血液中にリンがたまったままの状態が続くと、リンとカルシウムが結合して骨以外の組織に沈着する異所性石灰化が起きます。
異所性石灰化は全身で起き、関節が石灰化すると関節炎となります。また眼では結膜炎、皮膚ならかゆみを引き起こします。

特に注意が必要なのは、血管が石灰化することによる動脈硬化です。慢性腎臓病の患者さんは高血圧や糖尿病などがあるケースが多く元々動脈硬化が起きやすいのですが、異所性石灰化により動脈硬化が進行することで、脳梗塞や心筋梗塞などの心血管系疾患のリスクが高くなります。

二次性副甲状腺機能亢進症による骨ミネラル代謝異常の治療と副作用

二次性副甲状腺機能亢進症には病状に合わせて治療法がありますが、副作用や他の異常を引き起こしやすいという難しさもあります。

①活性化ビタミンD製剤の投与

活性化ビタミンDを投与して副甲状腺ホルモンの分泌を直接抑制する方法です。
活性化ビタミンD製剤0.25~0.5μgを、1日1回服用します。

しかし活性化ビタミンDには腸管からのリンとカルシウムの吸収を促進させる働きもあるため、血液中のリンの濃度とカルシウムの濃度が高くなりやすく、異所性石灰化が起きやすいという副作用があります。

一方、製剤を毎日服用するのではなく1週間分を週に1回か2回まとめて服用するパルス療法だと、血液中のカルシウム濃度が上がりにくく、副甲状腺ホルモンの抑制効果も高まります。

②活性化ビタミンD製剤の注射

患者さんの状態に合わせて、週に1~3回透析終了時に回路から活性化ビタミンD製剤を注射する方法です。
副甲状腺ホルモンの抑制効果が高く、患者さん自身で服用薬を管理する必要がないため、現在では内服薬よりも注射の方が主流です。

③PEIT(経皮エタノール注入療法、Percutaneous Ethanol Injection Therapyの略)

副甲状腺は4つあることが多いのですが、二次性副甲状腺機能亢進症が進行している患者さんは、1つか2つが小豆大に腫れて副甲状腺ホルモンを活発に分泌している状態になっています。

その場合は活性化ビタミンDの内服や注射では副甲状腺ホルモンを抑えきれないので、PEITという治療法を行います。
PEITとは、腫れて大きくなった副甲状腺に直接針を刺して、エタノールを注入する治療法です。

副甲状腺ホルモンの分泌を抑制するためには、一度ではなく何度か繰り返す必要があります。
PEITの副作用には、一過性の反回神経麻痺があります。

反回神経とは、副甲状腺の近くにある神経なのですが、エタノールが副甲状腺から漏れて反回神経に影響を与えることが少なくありません。
反回神経は声帯を調節する神経のため、声がかすれるなどの症状が現れます。

また両側の副甲状腺に同時にPEITを行うと、両側の反回神経に同時に麻痺が起き、呼吸ができなくなるリスクがあるため、エタノールの注入は必ず片方ずつ行います。

④副甲状腺の摘出手術

PEITを行っても副甲状腺ホルモンを抑制できない場合や、過大な副甲状腺には副甲状腺を摘出する手術が必要になります。術前に画像検査で副甲状腺の大きさと位置を確認した上で、副甲状腺を全摘します。

しかし、単に全摘しただけでは急激な副甲状腺機能低下症を起こしてしまうおそれがあります。そのため摘出した副甲状腺を切り、一部を前腕等に埋め込む措置を行います。

さらに術後は低カルシウム血症を起こしやすいので、しっかりとした管理が必要になります。

骨ミネラル代謝異常の予防

腎機能低下の進行とともに骨ミネラル代謝異常を発症しやすくなるため、慢性腎臓病の患者さんはステージ3aから血液中のリンやカルシウム、副甲状腺ホルモンを定期的に検査します。

①薬物療法

検査結果に合わせて、カルシウムや活性化ビタミンDを補い、リン吸着剤で体内のリンを減らします。
現在よく使用されているリン吸着剤の炭酸カルシウムには、血液中のカルシウムを増やす効果もあります。
最近ではカルシウムを含まないリン吸着薬も使われており、それぞれの特長を生かしての投薬がなされています。

②食事療法

慢性腎臓病ステージ5になり、透析を導入したら、リンの摂取量を制限します。
透析ではリンも除去するのですが、除去できる量には限りがあるため、1日のリン摂取量は800mg位までとします。

リンはたいていの食品に含まれているので、特にリンの多い乳製品などは減らすようにしましょう。

腎機能が低下すると、骨の新陳代謝が正常に行われなくなることで骨がもろくなったり、骨以外の場所に石灰化が起きたりすることがあります。

そのためCKDステージ3aからは定期的な検査を行い、必要に応じて薬物療法などを行います。

まとめ

  • 慢性腎臓病が進行すると、体内にリンがたまることで、副腎皮質ホルモンの分泌が過剰になる二次性副甲状腺機能亢進症を発症することがあります。
  • 二次性副甲状腺機能亢進症になると、骨の新陳代謝が正常に行われなくなり、骨がもろくなります。
  • 血液中にリンがたまったままの状態が続くと、カルシウムと結びついて骨以外の場所に石灰化が起きる異所性石灰化が起きやすくなります。
  • 二次性副甲状腺機能亢進症は、薬物療法やPEIT、手術などで治療します。
  • 血中リン濃度が高い場合はリン吸着剤などを服用します。
  • 透析を導入したら、リンの摂取量を制限します。