中高年以降の男性に多い印象がある腎臓病ですが、若い女性に発症しやすい病気もあります。それが10代から30代の女性の患者さんが多いループス腎炎です。

ループス腎炎は、膠原病の1つである全身性エリテマトーデス(SLE)という病気に合併する腎臓の病気で、進行すると人工透析が必要になります。

今回はループス腎炎の原因は何か、どんな症状が起きるのか、診断のためにはどんな検査をするのかから、どんな治療を行うのかまで詳しくご紹介します。

ループス腎炎とは

ループス腎炎は、膠原病の全身性エリテマトーデス(SLE)により起きる腎炎です。膠原病とは、本来なら自分の体を守る働きをする免疫が自分の組織を攻撃してしまう自己免疫疾患の総称です。全身性エリテマトーデス(SLE)は膠原病の代表的な病気で、細胞と細胞をつないでいる線維タンパク質や血管に慢性の炎症が起こり、内臓の機能障害や関節や皮膚、筋肉などに異常が起こります。

症状は全身の様々な場所で起こり、脳では中枢神経障害によるけいれんや、神経症状、脳卒中、心臓では心膜炎や心筋炎、心不全、胸部では胸膜炎や間質性肺炎、胃腸では胃腸炎や腹膜炎、食欲不振、手や指には多発性関節炎、手掌紅斑などが見られます。

どの臓器に障害を起こすかにより症状や重症度は違いますが、2~3種類の臓器の異常が同時に出る患者さんが多く見られます。中でも腎臓は症状が出やすい臓器の1つで、全身性エリテマトーデス(SLE)と診断された患者さんの約50~70%がループス腎炎を発症します。

他の腎臓病は男性の患者さんの方が多いのですが、ループス腎炎は圧倒的に女性の方が多く、特に10代から30代に見られ、現在全国に約5万人の患者さんがいます。女性に多いことから、発症の原因に女性ホルモンが関わっているのではないかという説もありますが、女性ホルモンとの関係についてはまだ明らかになっていません。

病名のループス(Lupus)とは、ラテン語で狼の意味を表す言葉です。全身性エリテマトーデス(SLE)の患者さんには、鼻を中心として左右の頬に広がる赤い皮膚症状が出るという特徴があるのですが、これがまるで狼にかまれたような状態であることが、ループス腎炎の名前の由来となっています。

ループス腎炎の原因

膠原病を発症する原因は明らかになっていませんが、ループス腎炎の原因は腎臓の糸球体の炎症です。通常腎臓に流れ込んだ血液は、糸球体の毛細血管の中を通過する時にろ過されます。この時タンパク質や血球は血液中に残り、ナトリウムやカリウムなどの電解質や水分などは毛細血管の外側に出ていきます。

しかしループス腎炎の患者さんの場合は、自己抗体と抗原が結合した免疫複合体が糸球体に付着してしまいます。そのため毛細血管が狭くなったり、血管の周囲にあるメサンギウム細胞が増殖することで、ろ過機能が低下し、タンパク質や血球も漏れ出すことでタンパク尿や血尿が見られるようになります。

ループス腎炎の症状

自覚症状に個人差が大きいのも、ループス腎炎の特徴の1つです。検査で発見されるまで気づかないケースがある一方、発熱、むくみ、全身の倦怠感が出る方や、血尿や大量のタンパク尿が出る方、息苦しさや食欲不振、嘔吐などの症状が出る方もいます。

病気の経過も様々で、比較的軽い症状のままで進行しない方もいれば、大量のタンパク質が血液中から尿に出続けることで血中のタンパク質が不足し、強いむくみや脂質異常症を発症するネフローゼ症候群に至る場合もあります。腎機能の低下が進行すると、透析治療が必要になります。

ループス腎炎の診断と治療

①治療方針を決めるための検査

ループス腎炎が疑われる時は、詳しい検査を行います。まず血液検査や尿検査で白血球やリンパ球、血小板、抗核抗体などを調べて、全身性エリテマトーデス(SLE)かどうかを確認します。全身性エリテマトーデス(SLE)と診断された場合は、腎臓の検査にうつります。

尿検査でタンパク病や細胞性円柱が認められれば、ループス腎炎と診断されます。細胞性円柱の検査とは、腎臓の炎症について詳しく調べるためのもので、患者さんの尿を遠心分離して、沈殿した成分を顕微鏡で観察する検査です。

沈殿した成分には様々なものがありますが、その中でも腎臓の病気を調べるためには、尿細管から分布されるT-Hムコタンパクという物質が円柱状に固まった細胞性円柱の種類に着目します。例えば赤血球円柱が見られた場合は出血、白血球円柱からは糸球体の炎症がわかります。その後さらに正確な診断をして治療方針を決めるために、腎生検を行います。

腎生検は、腎臓の組織の一部を採取して顕微鏡などで詳しく調べる検査で、事前の検査も含めて7~10日間入院する必要があります。
腎生検では、まず患者さんはうつ伏せに寝て、超音波で腎臓の位置を確認します。

次に局所麻酔の注射をした後、背中から細い針を刺します。針が腎臓に達したところで患者さんは息を止め、その瞬間腎臓の組織を採取して針を抜きます。これを2~3回繰り返して検査は終了です。採取自体にかかる時間は15~30分程度ですが、腎臓は血流が大変多い臓器のため、出血が起きないように半日~1日ほどベッドで安静にして過ごします。

②ループス腎炎寛解導入療法

腎臓の炎症が強い急性期は、副腎皮質ステロイド薬により寛解導入療法を行います。これは病気の症状が軽減した寛解状態を目的とした治療法です。経口ステロイド療法が基本ですが、腎機能の低下が著しい時は大量のステロイド薬を3日間続けて点滴で投与するステロイドパルス療法を行うこともあります。

ステロイド薬は炎症を抑える効果が高く、様々な病気の治療に使われる薬ですが、長期間飲み続けると免疫力が下がって感染症にかかりやすくなったり、骨がもろくなる骨粗しょう症を発症するなどの副作用のリスクもあるので、薬物療法は主治医の管理化で慎重に行う必要があります。

その後、症状に合わせて少しずつ副腎皮質ステロイド薬の量を減らしていきます。また患者さんの状態に応じて免疫抑制剤などを併用することもあります。

③ループス腎炎維持療法

できるだけ少ない量の副腎皮質ステロイド薬と免疫抑制剤を併用して、再発を予防します。

ループス腎炎は、膠原病の全身性エリテマトーデス(SLE)により発症する女性に多い腎臓病です。
適切な薬物療法で、重症化を防ぎ、透析導入を遅らせることができます。

まとめ

  • ループス腎炎は、膠原病の1つである全身性エリテマトーデス(SLE)によって引き起こされる腎臓病です。
  • ループス腎炎は、女性に多い病気です。
  • 原因は免疫システムの異常で、糸球体に障害が起きることで腎機能が徐々に低下します。
  • 症状の出方には個人差があり、自覚症状がない人からネフローゼ症候群を発症する人まで様々です。進行して腎機能が著しく低下すると人工透析が必要になります。
  • ループス腎炎の診断には、血液検査と尿検査に加えて、腎臓の組織を一部採取して調べる腎生検を行います。
  • 治療は、副腎皮質ステロイド薬と免疫抑制剤を併用した薬物療法を行います。症状が強い場合はステロイド薬の点滴を行うこともあります。