腎臓が悪くなるとお酒を飲んでいいのかどうか、迷いますよね。
慢性腎臓病の患者さんや透析患者さんも、病状が安定していて主治医から許可が出ていれば、適量のお酒を飲むことは問題ありません。
しかしお酒を飲む上で守らなければならないルールやおつまみについては注意点があります。
今回は腎臓に負担をかけずにお酒を楽しむ方法についてご紹介します。

ピーピー(甚五郎のナースコールの音)

高瀬高瀬

(やっぱり今日も甚五郎さんだ)どうかしましたか?


甚五郎甚五郎

早く、来なさい! 今日は大事な話があるんだ


高瀬高瀬

どうされました? 何かありましたか?


甚五郎甚五郎

いや、いつも君には世話をかけているから、一度一杯やりたいと思ってね


高瀬高瀬

一杯って……お酒ですか!?


甚五郎甚五郎

決まってるだろう。ここのところずっと飲んでなくてね、酒がどうしても飲みたいんだ。いいだろう?


高瀬高瀬

ち、ちょっと待ってください。原則として少量のお酒なら問題ないのですが、それでもいくつか注意すべき点があるのでお話ししますよ。まずそれをきちんと聞いてください


甚五郎甚五郎

わかった、わかった、早くその話を始めてくれよ

慢性腎臓病に悪影響のある肥満を避けるためにも、お酒は適量を守る!

慢性腎臓病の患者さんや透析患者さんも、重い合併症などがなく病状が安定していれば、原則として適量のお酒を楽しむことには問題がありません。お酒には、塩分やリン、カリウム、たんぱく質などの、腎臓に悪影響を及ぼす成分がほとんど入っていないからです。
しかし肝臓や胃腸など、腎臓病以外の病気もある患者さんの場合は、アルコールを禁止されることもあります。
肝臓は「体の中の工場」と言われています。腎臓病の人は一般に内服薬も多いと思います。そこにさらにアルコールの分解が仕事として加わりますから、肝臓をアップアップさせないように気を付けていたわって下さい。
工場の稼働が落ちてしまうと体内で様々なたんぱく質が作れなくなり、貧血や易出血性など思わぬ合併症を生じる危険性を高くしてしまします。
自分の場合はアルコールを飲んでも構わないかどうかを決して自己判断せずに、主治医に相談して必ず許可をもらうことが大切です。

では飲んでも問題がないアルコールの適量とは、どのくらいの量になるのでしょうか。
お酒の量とアルコール度数から計算できるアルコール量という数値があるのですが、1日あたりのアルコール量は男性の場合なら20~30ml、女性の場合なら10~20mlが適量となります。これは一般の方と同じ量になります。
アルコール量20mlは、具体的にお酒の種類別に置き換えると次のようになります(参照:アルコール健康医学協会ウェブサイト http://www.arukenkyo.or.jp/health/base/index.html)。

・ビール(アルコール度数5度) 約500ml(中ビン1本程度)
・日本酒(アルコール度数15度) 約1合
・ワイン(アルコール度数14度) 約グラス2杯
・焼酎(アルコール度数25度) 約100ml(コップ半分程度)
・ウイスキー(アルコール度数43度) 約60ml(ダブル1杯)

意外に少ないとがっかりされる方もいらっしゃるかもしれませんが、腎臓に負担をかけずにアルコールを楽しむためには必ず適量を守ることが大切です。
また適量以内のアルコール量でも毎日続けて飲むのは肝臓に負担をかけてしまうことがあるので、少なくとも週に2日はお酒を飲まない休肝日を作って肝臓を休ませてあげてください。
さらにお酒はカロリーが高いものが多いため、適量を超えて飲み過ぎると肥満やメタボリックシンドロームなどにつながります。
お酒の飲み過ぎによる肥満は、高血圧や糖尿病を悪化させ、慢性腎臓病の進行の原因にもなるので気をつけましょう。

カリウムやリンが少ないお酒を選ぶことが重要! 糖尿病患者は糖質にも注意!

お酒の種類によってはカリウムやリンの含有量が多いものがあるので、注意する必要があります。
カリウム含有量が多いのは、主に穀物や果実が原料となっているビールやワイン、梅酒などです。
その中でも特にカリウムが多いのは、赤ワインです。
ポリフェノールが豊富でからだにもいいことから人気の赤ワインですが、腎臓病の患者さんにはおすすめできません。
赤ワインを飲む時はごく少量にするようにしましょう。

またリンは、ビールや紹興酒などに多く含まれていますので、透析患者さんでリンの制限を指導されている方は気をつけてください。

さらに糖尿病が原因で慢性腎臓病になった糖尿病性腎症の方は、できるだけ糖質が少ない種類のお酒がおすすめです。
糖質をほとんど含んでいないのは、ウイスキー、焼酎などの蒸留酒です。
蒸留酒はカロリーも低めなので、糖尿病や肥満が気になる方が飲むなら、ウイスキーや焼酎です。
逆にビールや日本酒は糖質もカロリーも高いので、避けた方が安心です。

食事制限を守るためにも、おつまみは低塩分、低カロリーのものを

お酒のおつまみというと、チーズや枝豆 ナッツ類、チュコレート、ソーセージ、ポテトフライ、から揚げなどが定番です。
しかしこれらはどれも塩分が多いものがほとんどで、高カロリーな上に、チーズや枝豆 ナッツ類はカリウムやリンを多く含んでいます。チョコレートはリンを多く含んでいます
またソーセージなどの加工食品には、リン酸塩などの添加物が使用されています。
飲んでいるうちについついおつまみを食べ過ぎて、食事制限を守れなくなった……などは命に関わるので、冗談ごとではありません。
決してそうならないように、おつまみには低塩分でカロリーも低いものを選びましょう。
例えばお店でお酒を飲んでいる場合、可能なら「ポテトフライに塩をふらないで」「サラダのドレッシングは別添えにして」と、お店に頼むのもおすすめです。
お刺身は揚げ物や焼き物に比べてカロリーは低くなりますが、醤油のつけ過ぎに気をつけてください。
生姜などの薬味を多めに添えて、醤油の量を控える方法もあります。

透析患者さんはお酒の水分にも気をつけて

透析を導入すると尿がほとんど出なくなるので、水分の制限が厳しくなります。
飲み物からの水分摂取量の目安は、1日500~600mlです。
つい忘れがちなのですが、お酒を飲むことはつまり水分摂取量が増えるということです。
1日の水分摂取量の合計が増えすぎないように、お酒を飲む日はそれ以外の水分を一層控えめにすることも大切です。
夜お酒を飲む予定なら、日中はお茶などの量を減らしましょう。

リラックス効果があり気分転換にもなるお酒は、慢性腎臓病の患者さんや透析患者さんも楽しむことができます。
しかし適量を守り、おつまみは食べ過ぎないというルールを必ず覚えておきましょう。
酒は「百薬の長」ともいわれていますが、若い時の酒屋でのアルバイトの経験からすると「酒が不味くなる」と危険です。酒屋の小僧が配達して「お前のところの酒は最近味が落ちた。古くなったやつを持ってきているわけじゃないだろうナア!」とおしかりを受けることがありましたが、そう発言した人は危険です。直後に入院したりお亡くなりになるケースが多かった印象です。酒屋をいじめたくなるのは危険なサインです。アルコールはやはりほどほどに楽しみましょう。それが「百薬の長」とするコツです。

高瀬高瀬

わかりましたか? 甚五郎さんもお酒を飲む時には、以上のことは必ず守ってくださいね。約束ですよ!


甚五郎甚五郎

わかったけれど、君の言う適量はずいぶん少ないなあ。もう少し、いいだろ?


高瀬高瀬

だめです! それに甚五郎さんは水分もしっかり制限する必要があるんですから、この適量は絶対守ってくださいね。まず、その前に飲んでいいかどうかきちんと主治医に許可をもらうんですよ


甚五郎甚五郎

なかなか厳しいなあ。せっかく名酒の○○が手に入ったから、君と飲もうとおもったんだけどな……


高瀬高瀬

えっ、○○ですか! めったに手に入らないお酒じゃないですか。わかりました、一緒に飲みましょう


甚五郎甚五郎

(なんだ、酒の名前を聞いたら態度が変わったぞ)よしよし、一緒に飲もう


高瀬高瀬

その代わり、飲み方やおつまみの食べ方などは隣で厳しくチェックしますよ


甚五郎甚五郎

うるさいけど、その方が安心と言えば安心だな。よろしく頼むよ


高瀬高瀬

慢性腎臓病の患者さんや透析患者さんがお酒を飲む場合の注意点について下にまとめておいたので、ちゃんと読んでおいてくださいね


甚五郎甚五郎

わかったよ。じゃあ一緒に飲む日を楽しみにしているよ

まとめ

  • 慢性腎臓病の患者さんや透析患者さんも、病状が安定していて主治医の許可があれば適量のお酒を楽しむことができます。
  • 1日あたりの適量は、ビールなら中ビン1本程度、日本酒なら1合程度です。
  • 毎日飲むのではなく、週に2日程度は休肝日を作りましょう。
  • 赤ワインは特にリンの含有量が多いので、リンの制限を指導されている患者さんは飲み過ぎないようにしてください。
  • 塩分が多くカロリーの高いおつまみは食べ過ぎに気をつけましょう。
  • チーズは塩分もリンも多いので要注意です。
  • 枝豆ナッツ類・チョコレートはリンが多いので要注意です。
  • 水分制限を指導されている透析患者さんは、お酒で水分を摂り過ぎないようにしてください。