何の自覚症状もなかったのに、健康診断で腎機能の低下を指摘された。腎臓が悪くなっていることがわかった…こうして腎臓病との付き合いが始まったという方が、患者さんの多くをしめています。
腎臓は予備能力が大きいため病状がかなり進行しないと自覚症状が現れません。片方の腎臓を誰かに移植しても十分に日常生活が行えるという事実からも予備能力の大きさを理解いだけるかと思います。
実は腎臓病の中でも気がつかないうちにじわじわと進行する慢性腎臓病には、生活習慣が深く関わっています。

今回は腎機能と生活習慣についてご紹介します。
あなたの生活習慣が腎臓に負担をかけていないか、ぜひチェックしてみてください。

生活習慣と腎臓の関係について

年を取ると体のあちこちに不具合が出てきて、若い頃と同じようにはいかないことが増えてきます。腎臓も例外ではなく、加齢とともに腎機能も低下します。しかし同じ年齢でも腎臓の働きが正常な人と、障害がある人がいます。どうしてそのような違いが生まれるのでしょうか。
その原因の1つは、生活習慣です。

慢性腎臓病になりやすい人とは

腎臓の病気は、主に細菌やウイルスの感染が原因になって起きる急性のものと、徐々に腎臓の働きが弱くなっていく慢性のものに大別されます。

慢性腎臓病は患者数も多く、放置しておけば確実に悪化していきます。
慢性腎臓病は、特に次のような人がかかりやすい病気です。

高血圧の人

腎臓の重要な働きの1つは、糸球体で血液中の老廃物や有害物質をろ過して、尿として体外へ排出することです。
しかし血圧の高い状態が長く続くと、糸球体の毛細血管に高い圧力がかかり続けるため、毛細血管が傷つき、ろ過機能が低下してしまいます。

また腎臓の働きが悪くなると塩分がたまりやすくなったり、腎臓が産生している血圧をコントロールするホルモンのため、ますます血圧が上がるという悪循環に陥ってしまいます。

このように高血圧は慢性腎臓病につながる大きな要因の1つなので、高血圧の方は収縮期血圧130㎜Hg未満、拡張期血圧80㎜Hg未満を目安に降圧剤での薬物療法を行います。

糖尿病の人

高血圧だけでなく、糖尿病による高血糖も慢性腎臓病の原因になります。
高血糖が続くと全身の血管に動脈硬化が起こります。

ですから腎臓の血管にも動脈硬化が起こり、血管の壁が硬く厚くなり内腔が狭くなるため、血液のろ過機能に障害が起きます。

また糸球体の毛細血管と毛細血管の間にあるメサンギウム細胞という部分が拡大し、毛細血管を圧迫するようになり、ますますろ過機能が低下することになります。

糖尿病が原因となって起きる糖尿病性腎症は、透析が必要な末期腎不全に至るケースが多く、全透析患者に占める割合が最も多くなっています。

メタボリックシンドロームの人

メタボリックシンドロームとは、食生活の乱れや運動不足などによって内臓脂肪が蓄積し、高血圧、高血糖、脂質異常などが起きている状態です。

腹囲(へそ回り)が男性で85㎝以上、女性で90㎝以上あり、それに加えて高血圧、高血糖、脂質異常のうち2つ以上の症状があると、メタボリックシンドロームと診断されます。

メタボリックシンドロームの人は、高血圧、高血糖などの影響で動脈硬化も進みやすくなっています。これらは原因が共通していることもあり、メタボリックシンドロームの人は、慢性腎臓病を発症しやすいのです。

生活を改善して、腎臓をまもる!

生活習慣が深く関わっている慢性腎臓病は、生活を改善することで進行を抑える効果が期待できます。腎臓に負担をかけている悪い習慣は1つずつ変えていきましょう。

①たばこをやめる

たばこに含まれるニコチンには、血管を収縮させたり、交感神経を活発にさせたりする作用があるため、血圧が上がります。

また糖尿病の患者さんの場合は、インスリンの働きが悪くなり、血糖値が上がります。

コレステロールや中性脂肪も増えるため、動脈硬化が進行します。
さらに煙に含まれる物質の影響で血管が収縮し傷つけられたり、酸素不足の状態になったりすることで尿細管が傷つけられ糸球体が硬くなることもあります。

しかし長年喫煙習慣のあった方ほど、禁煙はストレスもたまりなかなか難しいものです。

自分1人での禁煙に自信がない場合は、禁煙外来で、医師による禁煙治療を受ける方法もあります。禁煙外来では禁煙治療薬を使ったり、ニコチンパッチを使ったりして、禁煙指導を行います。

②運動不足を解消する

腎機能をまもるためには、体重の管理が大切です。肥満やメタボリックシンドロームは高血圧の原因になり、腎臓に負担をかけることになります。
肥満の方は、標準体重に近づけるようにしましょう。

標準体重は、BMIの数値で計算します。
・BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
BMI18.5以上25.0未満が普通体重で、BMI22前後が最も病気になりにくい標準体重です。

標準体重に近づけるためには、適度な運動がおすすめです。
体を動かすことで、血圧や血糖値、コレステロール、中性脂肪が安定する効果が期待できます。
これらの数値が改善されれば、腎臓病の進行を遅らせることにつながります。

③お酒は適量をまもって飲む

腎臓が悪くなっても、適量の飲酒なら問題はありません。
適量とは、ビールなら1日中ビン(約500ml)、日本酒なら1合弱(約165ml)程度が目安になります。
また毎日は飲まずに、少なくとも週に2日は休肝日を作るようにしましょう。

さらにアルコールは脱水を招き、腎臓に負担をかけることがあります。
お酒を飲んだ日は寝る前に水を飲むようにしてください。

④食生活を見直す

腎臓は老廃物をろ過して排泄する臓器のため、食事で体内に取り入れた栄養成分の影響を大きく受けます。ですから腎機能の低下を防ぐためには食生活を見直すことが必要です。

慢性腎臓病と診断されたらステージに合わせて食事制限をすることになりますが、ステージが初期の段階から気をつけなくてはいけないのは、塩分とタンパク質、摂取エネルギーです。

塩分

塩分の摂り過ぎは血圧を上げ、腎臓に負担をかけてしまいます。
1日の塩分摂取量は6g未満が目標です。

日本人の平均的な塩分摂取量は11~12gなので、約半分と考えてください。
注意したいのは、塩分が塩味を感じるものだけに含まれているわけではないということです。

調味料や加工食品、パンや麺類、甘いお菓子などにも含まれています。
商品のパッケージには塩分の量が表示されているので、必ず確認するようにしましょう。

タンパク質

タンパク質は体を作る重要な栄養素ですが、体内で分解される過程で老廃物が発生します。
そのためタンパク質の過度の摂り過ぎは老廃物をろ過する腎臓の仕事量を増やし負担をかけることになるので、注意してください。

摂取エネルギー

摂取エネルギーは少なくても多くても、腎臓によくありません。
エネルギーが不足すると、筋肉を構成しているタンパク質がエネルギー源として利用されるため、血液中の老廃物が増えることになります。
逆にエネルギーの摂り過ぎは、肥満につながります。

摂取エネルギーの目安は、自分の標準体重(身長m×身長m×22)kg×25~35kcalです。

⑤冷えや寒さを防ぐ

人間の体の血管は、暑い時は拡張して熱を放出し、寒い時は収縮して熱を逃がさないようにします。
寒さで体が冷えた状態が続くと、腎臓の血管も収縮して腎臓へ流れ込む血液量が減少するため、腎機能の低下につながります。

また血管が収縮した時は血圧が上昇し、腎臓の糸球体の毛細血管にも高い圧力がかかるので、腎臓に悪影響をおよぼします。
腎臓をまもるためには、体を冷やさないように心がけましょう。

腎臓病の発症や進行には、生活習慣が深く関わっています。
しかし逆に考えれば、生活を改善することで、腎機能の低下を抑えることができるということなのです。

禁煙、運動、食生活の改善など、できることから取り組んで、大切な腎臓をまもりましょう。

まとめ

  • 慢性腎臓病は生活習慣との関係が深い病気です。
  • 慢性腎臓病にかかりやすいのは、高血圧の人、糖尿病の人、メタボリックシンドロームの人です。
  • 腎機能の低下を防ぐためには、禁煙や運動不足の解消が必要で、飲酒は適量をまもることが大切です。
  • 減塩を中心とした食生活の改善や冷えや寒さを防ぐことも、腎臓をまもります。