「腎移植の手術を受ければ、食事制限から解放され、健康な人と同じような生活が送れるのではないか」と、透析患者さんなら一度は考えたことがありますよね。腎移植は、健康な腎臓を提供してもらいそれを手術により移植する治療法で、末期腎不全の唯一の根治療法です。

しかし移植する腎臓の提供を受けることの難しさや術後の管理の問題もあり、誰でも簡単に受けられる治療法だとは言えないのが現状です。
今回は、腎移植についてご紹介しますので、どうぞご参考になさってください。

腎移植とは

腎移植とは、他の人の腎臓を末期腎不全の患者さんの腎臓として働かせる治療法です。家族や血縁者から腎臓を提供される生体腎移植と、脳死・心停止した方から提供される献腎移植の2種類があり、日本では生体腎移植が主流です。

①生体腎移植

健康な人から腎臓を1つもらう方法です。腎臓を提供してくれる人をドナーと言います。日本では生体腎移植のドナーは、両親、兄弟姉妹、子供など6親等以内の血族または配偶者、配偶者の兄弟姉妹など3親等以内の姻族と定められています。実際にドナーになっているのは、親子、兄弟姉妹、配偶者がほとんどです。

またドナーは心身ともに健康な成人で、腎機能が正常であることも求められます。ドナーの体から腎臓を摘出する手術は安全性の高い手術のため、特に心配はいりません。

摘出により2つあった腎臓が1つになるため、手術直後はドナーの腎機能はいったん半分まで低下しますが、その後徐々に回復して摘出前の約70~75%まで戻ります。

②献腎移植

腎移植を受けたい人が、日本臓器移植ネットワークを通じて、生前にドナー登録をしていて亡くなった人から腎臓をもらう方法です。
しかし移植を希望して登録している人に対しドナー登録者が少ないため、献腎移植を受けられる人はまだ少数です。

腎移植を受けるための条件

腎移植は、全身麻酔で行う手術に耐えられる体力があれば受けることができ、特に年齢制限はありません。しかし心肺機能などの問題から、実際には70歳位までの方が多いです。

その他悪性腫瘍がないこと、治療が必要な感染症がないこと、心臓・肝臓・肺に病気がないことなどの条件があります。

そして腎臓を提供するドナーと腎臓をもらう患者さんの間で、拒絶反応が起きないことも重要になります。以前はABOの血液型が同じでないと移植が行えませんでしたが、現在では治療法の進歩により、生体腎移植の場合は血液型が一致していなくても腎移植ができるようになりました。しかし血液型が一致していた方が移植後の腎機能は良好であるケースが多いです。

また組織適合抗原(HLA抗原)という遺伝子の型についても確認が必要です。組織適合抗原とは、白血球に含まれる抗原で、拒絶反応の原因になる物質です。ドナーと患者さんの間で適合している方が移植後の経過もよくなりますが、現在では免疫抑制剤の進歩により、適合していなくても移植することができるようになっています。

さらに移植後に急激な拒絶反応が起きないかを調べるリンパ球クロスマッチテストというテストも行います。このテストが陽性となるドナーと患者さんの組み合わせの場合は、以前は移植ができませんでした。今は免疫抑制療法が進歩しているため、生体腎移植は可能です。

腎移植の手術について

腎移植の手術時間は約4時間で、全身麻酔で行います。患者さんは、約1週間前から入院し、手術後は経過が順調であれば2~6週間程で退院できます。

手術では下腹部を15~20㎝程切開し、提供された腎臓を患者さんの骨盤の中に入れ元の腎臓のやや下の位置に移植し、血管と尿管をつなぎます。元の腎臓は通常そのまま残しておきますが、多発性嚢胞腎や悪性腫瘍のおそれがあるケースでは摘出することもあります。
生体腎移植の場合は、移植された腎臓はすぐに働き始めます。

尿管から尿が出始めたのを確認し、尿管を膀胱につないで手術終了です。献腎移植の場合は、ドナーの心停止後に摘出された腎臓のため、腎臓が働いて尿が出始めるまでに10日から2週間程かかります。

また生体腎移植の場合、腎臓を提供するドナーも、術前の検査のために1週間程前から入院し、腎臓摘出手術後も1週間から10日間程度の入院が必要になります。

腎臓摘出手術は約4時間で、左の腎臓を摘出するのが一般的です。手術方法は開腹手術と内視鏡下手術がありますが、最近では傷が小さく術後の回復も早い内視鏡下手術が増えています。

腎移植手術の費用

腎移植手術には健康保険が適用されるので、自己負担分は1~3割となります。この自己負担分についても、次のような助成制度を利用することで、実際に自分で支払う額は低額になります。ただし健康保険が適用されない差額ベッド代、食費など入院時の費用は別途必要になります。

①自立支援医療(更生医療)

身体障害者の自立と更正のために医療費の助成を行う制度です。透析患者さんのほとんどが持っていらっしゃる身体障害者手帳を提示して申請すれば、1カ月の自己負担額は所得に応じて0~2万円になります。

②重度心身障害者医療費助成制度

重度の障害がある方の医療費の自己負担を軽減する制度です。身体障害者手帳の提示が必要で、助成内容は自治体によって異なります。

腎移植後の生活について

腎移植手術が成功すると、健康な人とほぼ同じような生活を送れるようになります。しかしそれを維持するためには、日常生活の中では次のようなことに注意してください。

①免疫抑制剤を飲み続ける

人間の体には、異物が入ってくると排除しようと働く免疫機能があります。そのため移植した腎臓に対しても拒絶反応が起こります。この拒絶反応を防ぐために、腎移植をした患者さんは一生免疫抑制剤を飲み続ける必要があります。

移植直後は免疫抑制剤の量が多く、副作用が出ることもありますが、自己判断で薬を止めたり減らしたりすることは絶対に避けてください。
副作用が気になる場合は、必ず受診して主治医に相談しましょう。

手術後3カ月間が最も拒絶反応を起こしやすいので、気をつけて過ごす必要があります。尿の量が減ったり、むくみが出て体重が増えた場合などは、拒絶反応が起きていることもありますので、すぐに受診してください。また感染症にかかりやすい時期なので、発熱などにも気をつけましょう。

②慢性移植腎症

免疫機能とは関係なく、移植後3カ月以降に徐々に腎機能が落ちていく場合があり、これを慢性移植腎症と言います。慢性移植腎症の発症には複数の原因が関わっていることが多く、糖尿病の再発や免疫抑制剤の影響で腎機能が低下しているケースもあります。

③食事

移植後は、透析中のような厳しい食事制限はなくなりますが、バランスのよい食事を心がけましょう。腎臓に負担をかけないように減塩を続けることをおすすめします。喫煙は禁止、アルコールは適量を守ってください。

④運動

肥満予防と体力維持のために、ウォーキングなどの軽めの運動から始めてください。透析中に骨がもろくなっていることが多いので、移植後すぐは激しい運動は避けましょう。新しくスポーツを始めたい場合は、主治医に相談してからが安心です。

⑤通院

退院後も定期的に通院の必要があります。手術直後の数カ月間は週に1~2回程度通院して、拒絶反応が起きていないか、腎機能は保たれているか、免疫抑制剤の重い副作用は起きていないか等を確認します。経過がよければ受診の頻度は減り、1年後以降は1~2カ月に1度になります。

健康な腎臓そのものを提供してもらう腎移植は、末期腎不全の唯一の根治療法です。しかしドナーの少なさや術後の管理など課題も多く、日本ではまだ一般的とは言えない治療法です。

まとめ

  • 腎移植は、健康な腎臓を移植する治療法で、生体腎移植と献腎移植があります。
  • 日本では、親子、兄弟、夫婦間での生体腎移植が主流です。
  • 献腎移植はドナー登録者が少なく、日本ではまだあまり行われていません。
  • 腎移植の手術は約4時間で、術前に1週間程度、術後に2~4週間程度の入院が必要です。
  • 腎移植の費用は、各種助成制度の利用で1カ月0~2万円程度です。
  • 移植手術後は、免疫抑制剤を一生服用する必要があります。