人工透析を続けている患者さんは、自分の受けている治療が世界の中でどのくらいのレベルなのか気になりますよね。日本で末期腎不全の患者さんのほとんどが選ぶ血液透析は、世界トップレベルの技術です。その上、チーム医療で管理がしっかりされているため、治療成績が優れているのも特徴です。

今回は世界と日本の透析や、日本の透析の特徴についてご紹介します。

国別透析患者数TOP5と透析方法の違いについて

日本国内の透析患者さんは年々増加の一途をたどり、2016年の調査では32万人を超えています。日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況」より

人口100万人あたりの透析患者さんの人数を世界各国と比較した場合も、日本は約2600人で、2番目に多くなっています。最も多いのは台湾で、3位はアメリカ、4位シンガポール、5位韓国と続きます。台湾は九州より狭い小さな国ですが、数多くの透析施設があり、日本製のダイアライザーを使って治療を行っています。

近年では、台湾の透析施設で治療を受けながら旅行を楽しむ透析患者さんも増えてきました。また多くの患者さんに選ばれている透析方法も国によって違いがあります。

日本では透析施設に通院して血液透析を受けている患者さんが約97%を占めますが、香港では自分の腹膜を透析膜として使い自宅で行う腹膜透析を選んでいる方が7割以上を占めています。またニュージーランドは、日本ではまだあまり普及していない在宅血液透析を行っている患者さんの割合が2割近くになっています。

日本では、透析導入を始めてからの1年生存率が約90%

約97%の患者さんが選択し、末期腎不全の標準治療とも言える日本の血液透析は、治療成績が非常にいいのも特徴です。日本では透析導入を始めてからの1年生存率は約90%、5年生存率は約60%と高い割合を示し、さらに年々上昇しています。

ヨーロッパの患者さんの1年生存率は約85%、アメリカでは約80%なので、日本の透析治療が優れていることがわかります。

心疾患の合併率も低い日本

透析患者さんの命を脅かす合併症として最も注意しなければならないものに、心疾患があります。この心疾患の合併率も日本は他の国と比べて低くなっています。

うっ血性心不全

心臓の働きが低下し、血液を全身に送り出し循環させることができなくなった状態のことを、うっ血性心不全と言います。
尿が出なくなった透析患者さんは、体に余分な水分がたまりやすくなります。そのため心臓に負担がかかり、うっ血性心不全を起こしやすくなります。

日本では透析患者さんのうっ血性心不全合併率は、約6%。ヨーロッパでは、約25%、アメリカでは約46%なので、日本の患者さんの合併率は大変低くなっています。

冠動脈疾患

心臓が動きを休むことなく続けるためには大量の血液が必要で、その血液は冠動脈を通って供給されています。透析患者さんは動脈硬化が進んでいることが多く、この冠動脈も狭くなったり詰まってしまったりすることから、狭心症や心筋梗塞などを起こしやすくなります。

日本の透析患者さんの冠動脈疾患合併率は約19%で、ヨーロッパの約29%、アメリカの約50%より低くなっています。

左室肥大

高血圧や腎性貧血の方が多い透析患者さんの場合、全身に血液を送り出す心臓の左室はより大きな力が必要になり、筋肉量が増え左室肥大になります。左室肥大が進むと、心臓が動くために必要な酸素量も増えるため、冠動脈からより多くの血液を供給しなければなりません。その結果冠動脈にわずかな狭窄があっても虚血性心疾患が発症しやすくなります。

この左室肥大を起こしている患者さんの割合も、日本は約28%と、ヨーロッパの約55%、アメリカの約34%比べて大幅に下回っています。

海外では在宅血液透析が普及

日本ではまだ実施例が少ない在宅血液透析ですが、海外では普及し始めています。在宅血液透析は、透析のたびに施設に通う必要がなく、自分の生活に合わせて実施できる自由度が高い治療法です。仕事との両立や社会復帰もしやすいのもメリットです。

また透析回数を増やしたり、ゆっくり時間をかけて透析することもできるので、患者さんの体への負担も軽くなります。しかし透析のための準備や装置の操作、針刺し、片付けなどをすべて自分でしなければならないことや家族の負担、自宅に装置を置き透析液を保管するスペースが必要なことなどがハードルとなり、日本ではまだあまり実施されていないのが実情です。

在宅血液透析の割合が高いニュージーランドやオーストラリアでは、自宅に透析装置を置く方法以外に、コミュニティハウス血液透析という取り組みも始まっています。

これは血液透析機器を置き透析液を保存するコミュニティハウスを地域に作り、患者さんはそこに通って自分で透析を行う方法です。
医療スタッフの立ち会いがないのは在宅血液透析と同じですが、自宅に装置を置いたり給水や排水の設備工事や透析装置を動かすための専用電源を作らなくてもいいという利点があります。

このように透析患者さんを地域で支える方法は、日本でも取り入れられる日が来るかもしれません。

透析患者さんの高齢化が進んでいる日本

2016年の調査では、日本の透析導入の平均年齢は69.4歳です。また透析治療中の患者さんの平均年齢は68.2歳でアメリカの61.2歳やヨーロッパの60.2歳と比べても高齢化が進んでいるのが特徴で、この傾向はこれからも続いていくことが予想されます。

透析患者さん全体で見ても、65歳~85歳の方が6割近くを占めています。透析患者さんの高齢化から、さまざまな問題も生まれています。

①他の病気への影響

高齢になると体のあちこちに不具合が生じてきます。心血管系疾患はもちろん、がんなどになる人も増えます。薬の飲み合わせも含め、他の病気への影響も考えながら透析を行う必要があります。

②認知症の発症

認知症の患者さんの場合は、針を抜いてしまったり、動き回るなどのトラブルが起きることもあります。その場合は付き添いが必要になることも多く、ご家族の負担が増えることになります。

③骨粗しょう症の発症

元々高齢者の方は骨粗しょう症を発症しやすいのですが、透析患者さんは骨を強化する腎臓の働きがないためますます骨がもろくなっています。
高齢の透析患者さんにとって骨折は寝たきりにつながるので、注意が必要です。

④介護施設の不足

介護度が重くなり施設入居を希望しても、透析患者さんが入居できる施設はまだ少数です。費用の安い特別養護老人ホームでは透析患者さんを受け入れているところはなく、透析施設と連携している有料老人ホームなどを探す必要があります。高齢化がますます進むことを考えると、透析患者さんが入居できる介護施設の増設にも早急な対応が求められます。

日本の透析治療は世界でもトップレベルで、治療成績も優れています。しかし今後ますます進むであろう患者さんの高齢化への対応には、新たな解決策も求められます。

まとめ

  • 100万人あたりの透析患者数では、台湾に続いて、日本は世界2位です。
  • 日本の透析治療は、アメリカやヨーロッパに比べて治療成績がよく、心疾患の合併も少ないのが特徴です。
  • 日本ではまだ実施例が少ない在宅血液透析も、海外では普及し始めています。
  • 日本は高齢の透析患者さんが多いことから、さまざまな問題が生まれています。