Q者

透析を開始して初めての冬です。これまでは毎年インフルエンザの予防接種をしていたのですが、透析治療を受けていても予防接種を受けても大丈夫でしょうか

川田川田

透析患者さんがインフルエンザの予防接種を受けることは、問題ありません。むしろ透析患者さんには、インフルエンザの予防接種を積極的に受けるようおすすめしています。

健康な方より予防接種の副作用が出やすくなるのではないかといった心配もご無用です。予防接種で使用するワクチンは、ウイルスや病原菌の毒性をなくして、免疫をつくる成分だけを製剤にしたものなので、透析患者さんが接種を受けても体調に影響が出ることは通常はありません。

特に高齢の患者さんの場合は抵抗力が落ちているので、インフルエンザにかかると重症化しやすいおそれがあります。また週に3回通院して、透析施設で4~5時間過ごすことになる透析患者さんは、人の集まりやすい場所に行くことで、インフルエンザ感染の機会も多くなります。予防接種でインフルエンザを防ぐことは非常に重要です

Q者

体調に悪影響がなく、副作用が出やすくならないなら安心しました。しかし逆に透析によって予防接種の効果が弱くなってしまうことはありませんか

川田川田

予防接種をすると、体内にウイルスを異物と認識する抗体が作られます。この抗体はタンパク質の一種なのですが、血液透析によって除去されることはありません。ですから透析患者さんにも、健康な方と同じように抗体が作られ、予防接種の効果があらわれます。

抗体はインフルエンザウイルスが体内に侵入してきた時、素早く反応して、私達の体をまもりインフルエンザの発症を防ぐ働きをします

Q者

ではインフルエンザの予防接種はいつ頃受けるのがいいでしょうか

川田川田

予防接種を受けてすぐに抗体ができるわけではありません。約2週間かかります。また抗体がウイルスから体をまもる力の持続期間は、5カ月程度になります。

Q者

なるほど。しかし予防接種をしてもインフルエンザになることはあるそうですが、もしかかってしまった場合はどうしたらいいでしょうか

川田川田

確かに絶対にかからなくなるわけではありませんが、予防接種を受けていれば、インフルエンザにかかっても重症化せず、軽くすむことがほとんどです。しかし発熱などの症状が出た場合も、透析治療は普段通り続けなければなりません。

インフルエンザは発症後約4日間は人に感染させる可能性があるため、その期間は人との接触に充分に注意する必要があります

Q者

熱が出たら、インフルエンザによるものかどうか診察を受けて調べた方がいいですね

川田川田

はい、インフルエンザの検査は簡単にできてすぐに結果がわかるので、調べてください。
もしインフルエンザに感染したことがわかったら、いつも通院しているクリニックにすぐに連絡をしましょう。

他の患者さんと接触しないで透析を受けられるように、クリニック側は準備をします。そしてクリニックから透析治療に来る時間などについて指示がありますから、従ってください

Q者

インフルエンザにかかった場合の透析治療についてはわかりました。ではインフルエンザの治療自体はどうなるのでしょうか。例えばタミフルやリレンザのような抗インフルエンザ薬は、透析患者でも使うことはできるのでしょうか

川田川田

インフルエンザの治療は、発症後48時間以内なら抗インフルエンザ治療薬を投与して行うのが一般的です。この抗インフルエンザ薬は透析患者さんにも使用できますが、薬の種類や患者さんの状態によっては、薬の量や投与の回数などを変えることもあります。

インフルエンザの治療を受ける時も、透析治療中であることを必ず伝えるようにしてください

Q者

まずできるだけインフルエンザにかからないように気をつけることが大切ですね

川田川田

そのためには必ず予防接種を受け、外から帰ったらうがいと手洗いを欠かさないようにしてください

Q者

インフルエンザ以外の予防接種についてはどうでしょうか

川田川田

他の予防接種に関しても、透析患者さんが受けられないものは特にありません。
腎臓が悪い方は免疫力が低下し感染症にかかりやすくなっているので、予防接種はできるだけ受けることをおすすめします

Q者

腎臓が悪いとなぜ感染症にかかりやすくなるのでしょうか

川田川田

健康な人の場合は、血液中の白血球がウイルスや異物を排除する働きをしています。これを免疫機能と言います。
しかし腎臓が悪い方や透析患者さんは、尿毒素や老廃物が体内にたまりやすくなっていることや栄養不足などで免疫機能が低下しています。

また糖尿病が原因で末期腎不全に至った方の場合は、白血球が病原菌等を排除する力がより衰えています。
実際透析患者さんが亡くなる原因は、心不全に次いで感染症が第2位となっています
日本透析医学会2016年末の慢性透析患者に関する集計

Q者

感染症には用心しないといけませんね。インフルエンザ以外に積極的に受けた方がいい予防接種はありますか

川田川田

肺炎球菌ワクチンの接種をおすすめします。肺炎球菌は、肺炎の原因として最も多く、肺炎の約半数は肺炎球菌によるものです。

そのため肺炎が重症化しやすい65歳以上の高齢者や、60歳以上65歳未満で心臓や腎臓、呼吸器などに障害がある方に接種がすすめられています。

肺炎球菌ワクチンの効果は5年間続くため、接種は5年おきになります。予防接種の費用の一部は公費で負担される仕組みとなっていますので、お住まいの地方自治体の窓口で確認してください

Q者

肺炎は命に関わる病気なので、必ず予防接種を受けることにします

川田川田

肺炎球菌ワクチンもインフルエンザの場合と同じように、ワクチンを接種してもかかるケースがあります。しかしその場合も予防接種を受けていない場合よりも重症化を防ぐことができます

Q者

予防接種を受ける予定も、透析クリニックの主治医に相談した方がいいでしょうか

川田川田

そうですね。体調が安定している時にタイミングよく接種できるように、主治医に話しておくと安心でしょう。また透析クリニックでもインフルエンザや肺炎球菌の予防接種を行っているケースが多いので、透析治療を受けに通院した時に接種するのもおすすめです。

透析患者さんは、抵抗力が弱っている上に、週に3回の通院などで外出することも多く、インフルエンザなどの感染症にかかりやすくなっています。
予防接種を積極的に受け、うがい、手洗いも行い、感染を防ぎましょう

まとめ

  • 透析患者さんがインフルエンザの予防接種を受けることには問題がありません。むしろ積極的に受けることをおすすめします。
  • 予防接種の副作用が強く出たり、予防接種によって作られた抗体が透析で取り除かれてしまうこともありません。
  • もしインフルエンザにかかってしまった場合は、透析クリニックに連絡をして、他の患者さんを接触せずに透析治療を受けられるような対応をしてもらいましょう。
  • 60歳以上の透析患者さんは、肺炎球菌ワクチンの接種も積極的に受けることをおすすめします。