透析治療を受けている患者さんは、透析器の中で自分の血液と接する透析液の成分については、透析膜を介しているとはいえ気になりますよね。透析液は、患者さんの血液から老廃物や水分を除去し、不足しているものを補う働きをします。

今回は血液浄化の過程で重要な役割を果たしている透析液の働きや成分、クリニックでの管理についてご紹介します。どのような仕組みで血液が浄化されているのか理解しておくことは、治療を続ける上でもプラスになります。どうそご参考になさってください。

透析液の役割

血液透析では、患者さんの血液を一度体外に出してダイアライザーと呼ばれる透析器に通します。ダイアライザーは人工の半透膜でできた細い管が束ねられたもので、半透膜が腎臓の糸球体に似た働きをします。この細い管の内側には血液が流れ、外側には透析液が血液と反対方向に流れています。では透析液は、透析器の中でどんな働きをしているのでしょうか。

①拡散現象で血液から不要なものを除去

物質には、液体の中を均等に散らばっていこうとする拡散という性質があります。末期腎不全の患者さんの血液には、健康な人なら尿となって排泄されている老廃物や、水分が多く含まれています。また電解質、酸などのバランスも崩れた状態です。ですから透析膜を間にはさんで片方に血液と、反対側に透析液があると、血液中の老廃物や不要な電解質、酸などは、濃度の低い透析液側に移動します。

水分も血液と透析液の濃度が同じになるように、血液から透析液側に移動します。逆にカルシウムなどは血液中に不足しているので、透析液から血液へと移動します。このように不要なものを患者さんの血液から除去し、必要なものを血液に補うのが透析液の大切な役割です。

②代謝性アシドーシスを改善する

健康な人の体は、尿を酸性にして排泄することで、弱アルカリ性に保たれています。しかし尿が出なくなった末期腎不全の患者さんの場合は、体内に酸がたまり、酸性に傾いてしまいます。これを代謝性アシドーシスと言います。

代謝性アシドーシスは特に自覚症状はありませんが、進行すると血中のカリウム濃度を上昇させたり、細胞の活動に悪影響を与えます。この代謝性アシドーシスを改善するために、透析液にはアルカリ化剤が投入されています。アルカリ化剤は透析膜の孔を通って血液側に移動し、酸を中和します。

透析液の成分について

血液透析治療で使用する透析液は、製薬会社が製造している濃い透析液をきれいな水で溶かして、薄めて使用しています。1回の透析で使われるのは約90~150リットルで、浴槽いっぱいとほぼ同じ量になります。その透析液を使用して40~70リットルの血液を浄化します。

透析液の主な成分は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、クロール、重炭酸または酢酸、ブドウ糖などです。これらの成分は血液浄化に深い関係があります。

通常、末期腎不全の患者さんの場合、血液中のカリウム、マグネシウムやリンなどの濃度が高くなっています。ですから透析液は、カリウムやマグネシウム濃度を低くし、リンは入れないことで、これらの成分を患者さんの血液中から透析液側に移動させるようにしています。

また透析患者さんの場合カルシウム濃度は一般的には低い方が多いのですが、服用している薬物の影響で高値になっているケースもあります。その場合は透析液のカルシウム濃度を低くします。血液中のカルシウム濃度が高い状態が続くと、リンと結合して血管の石灰化を引き起こすことがあるため透析液のカルシウム濃度は低めに設定されているケースが多いです。

そしてアルカリ化剤として使われているのは、重炭酸です。以前はアセテート(酢酸塩)がアルカリ化剤として用いられていましたが、アセテートが体内に入ると血圧が下がったり、強い全身倦怠感が出るアセテート不耐症の患者さんが見られたため、重炭酸が使われるようになりました。

透析液の管理について

透析膜を介しているとはいえ、患者さんの血液と接することになるわけですから、透析液の管理は厳重に行います。

①純水を作る

特に透析液の原液を薄めるための水が重要です。水道水をそのまま使うわけにはいきません。水道水にはさまざまな成分が含まれているので、透析の効果を妨げるだけでなく、合併症の原因になることもあります。そのために透析クリニックには、安全な水を作るための装置が設置されています。

透析原液を薄める純粋の作り方

1)水道水を軟水装置に入れます。
2)軟水装置に入っている活性炭やイオン交換樹脂などが、水道水からカルシウムやマグネシウムなどの電解質や金属類を除去します。
3)軟水装置で処理された水を、加圧ポンプで押し出しながらRO装置に送ります。
4)RO装置の中には、ポリスルホンという合成膜でできた半透膜があり、この半透膜の孔は大変小さいため、ナトリウムなどのイオンも通しません。
5)RO装置から不純物を全く含まない純水がしみだします。この純水で透析原液を薄めれば、透析液の完成です。

②エンドトキシン対策

エンドトキシンは水道水の中に存在する毒素で細菌の死骸から出てくる物質です。RO装置で純水を作る過程でほとんどは除去されるのですが、ごく微量残ったり、再汚染されるケースもゼロではありません。また軟水装置内の活性炭フィルターで水道水から塩素が除かれると細菌を抑える力がなくなり、細菌が繁殖可能になり、エンドトキシンが生まれてしまいます。

透析クリニックでは各装置や配管等の清浄化を徹底して、エンドトキシンが透析液に入らないように管理しています。

③透析アミロイドーシス対策

透析を長く続けていると発症しやすい合併症に透析アミロイドーシスがあります。骨や関節の痛み、手指のしびれなどが代表的な症状ですが、β2-MGというタンパク質がアミロイドに変化して体内にたまることが原因です。

末期腎不全の患者さんは、元々β2-MGが体内に蓄積しやすいのですが、細菌やエンドトキシンもβ2-MGの量をさらに増加させてしまいます。
透析アミロイドーシスの発症や進行を防ぐためにも、透析液や機器、回路などの清浄化が重要です。

患者さんの血液から老廃物や水分を受け取り、電解質や酸の状態も整えるのが透析液の働きです。透析液を厳重に管理して清浄に保つことで、その働きや安全性も高まります。

まとめ

  • 患者さんの体内から取り出した血液と透析液は、透析器の中で透析膜を介して接しています。透析液は、血液とは反対方向に流れています。
  • 末期腎不全の患者さんの血液は、カリウム、マグネシウム、リンの濃度が高くなっています。透析液は、カリウム、マグネシウム濃度が低くリンは含んでいないため、拡散現象で患者さんの血液中から透析液側に移動します。
  • 水分も血液から透析液側に移動します。
  • 末期腎不全の患者さんの体は酸性に傾きがちなので、中和するために透析液にはアルカリ化剤が含まれています。アルカリ化剤には重炭酸が使われています。
  • 透析液は、製薬会社が製造した原液を水で薄めて使います。
  • 原液を薄める水は、軟水装置とRO装置を通して作った純水です。
  • 透析治療を効果的に行い、透析アミロイドーシスなどの合併症を防ぐために、透析クリニックでは透析液や装置、回路の清浄化を徹底して行っています。