Q者

透析患者も旅行に行くことはできるでしょうか


川田川田

透析治療を受けている患者さんも、体調がよく、事前の準備をしっかりすれば、旅行に出かけても大丈夫です。普段は透析中心の生活をおくり、食事制限も頑張っていらっしゃる患者さんが、旅行に出かけてリフレッシュするのは私も賛成です


Q者

事前の準備はどんなことをすればいいのでしょうか


川田川田

国内旅行の場合と海外旅行の場合で必要な準備は違うので、まず国内旅行の場合からご紹介しますね。
まずは準備の1番目。
主治医の許可をもらうことです。透析治療の効果が出て体調は保たれているか、合併症が起きていないかなどが確認できれば、主治医から旅行の許可が出ます


Q者

旅行の具体的な日程やプランなども主治医に見せた方がいいですね


川田川田

はい、そうしてください。患者さんの体に無理がない旅行であることを主治医に確認してもらいましょう


Q者

主治医から旅行の許可をもらえれば安心できます


川田川田

次は準備の2番目。
旅行に行くために必要なものを揃えましょう。保険証はもちろんですが、透析治療の医療費助成を受けている特定疾病療養受領証などの医療券、身体障害者に認定されている方は身体障害者手帳も持って行きます。東京都が発行しているマル都医療券のような地方自治体独自の医療費助成制度は、旅行先の施設では利用できませんが、後で自己負担分の返金を受けられるなど地方自治体によって対応が異なるので、透析治療の領収書は保管し担当窓口に問い合わせてください。また普段受けている透析治療の記録も持って行きましょう


Q者

旅行先で透析治療を受けるための準備ですね


川田川田

そうです。
そして準備の3番目。
旅行中透析を受ける場合の施設探しと予約をしましょう


Q者

旅行先で透析を受ける場合の施設はどのようにして探せばいいですか


川田川田

旅行中透析を受ける施設の探し方はいくつか方法があります。

例えば、現在通院している施設に紹介してもらう方法があります。
主治医に旅行の許可をもらった時に、旅先で透析を受ける施設も紹介してもらいましょう。全国の透析施設名簿から、適切な施設を教えてくれます。ご要望があれば透析施設名簿のコピーを差し上げることもできます。先方の施設と日程や場所等の確認で『伝言ゲーム』となって誤解を生じないためにも患者さんご本人で連絡をしてみることもお勧めしています。気軽に主治医に相談してみましょう。

全国組織の患者会『腎友会』の地方支部に問い合わせて探すという方法もあります。
URLはこちらになります。
http://www.zjk.or.jp/jinyuukai/search/index.html
旅行予定先の『腎友会』支部に連絡をして、透析を受ける施設を紹介してもらいましょう。

最も確実なのは、透析患者向けのパックツアーを利用する方法かもしれません。
透析患者を対象としたツアーを各旅行会社が企画しています。透析導入後、初めての旅行の時や、自分で計画するのが不安な方は、そういったツアーを利用するのもいいでしょう。
旅行日程の中に透析の時間があらかじめ組み込まれていて、食事制限にも対応しているので、安心です。

透析を受ける施設を決めたら出発の1カ月くらい前までには、予約を入れておきましょう


Q者

パックツアーがあるなら、無理のない予定で旅行が楽しめそうですね。ところで私は温泉旅行に行きたいと思っているのですが、透析患者が温泉旅行をする時にはどんなことに注意したらいいでしょうか


川田川田

透析患者さんが温泉につかること自体については問題ありませんが、あまり長湯をするのは体力を消耗し、体に負担をかけることがあるので避けてください。またシャント部分からの感染を避けるため、透析治療を受けた当日、温泉の大浴場を利用するのはやめましょう。例えば1泊2日の温泉旅行なら、透析をした翌日に出発しその夜は温泉旅館に宿泊。次の日はまたいつもの施設で透析……といった予定にすれば問題ありません


Q者

温泉旅館は夕食が楽しみなのですが……


川田川田

旅行に行くと解放感からいつもより食べ過ぎたり飲み過ぎたりする患者さんもいらっしゃるのですが、食事制限を守って自己管理する必要があります


Q者

特に気をつけた方がいい料理は何でしょうか


川田川田

絶対に気を付けなければならないのがカリウムです。高カリウム血症による心臓のトラブルは回復するのが大変に困難な状態になります。若干のリンの上昇等は1度透析をすれば普通は回復します。トロピカルフルーツといったご当地のおいしい果物や、特にジュース類はおいしさの誘惑に負けて絶対に食べ過ぎ・飲みすぎしないように注意してください。『お味見』程度にとどめて味覚を楽しむくらにしておくのが無難です。
塩分の多い汁物にも要注意です。透析中の食事は塩分制限が最優先ですから、汁物は1日1食にし、汁の量は半分残すなど工夫して、減塩してください。もちろん、普段のようにカリウムにも気をつけ、野菜や果物の取りすぎにも十分注意しましょう。
また旅行中の食事は、タンパク質が多くなりやすいので、自分で調整する必要があります。タンパク質は食べ過ぎるとリンやカリウムの過剰摂取につながるので、肉や魚は控えめに食べるようにしましょう。1、2食程度は低タンパク食を持参する方法もあります。
せっかくのエンジョイするための旅行ですので、あまり窮屈には考えずにおおまかに「腹八分目」つまり「もう少し食べたいな」というところで止める。適度に楽しんだ後にはサッと食品のある場所から離れてしまうのも工夫のひとつと思います。
最近では透析治療中の人や腎臓が悪い人向けの食事を出してくれる旅館やホテルも増えているので、そういったところを利用すれば安心して食事を楽しむことができます


Q者

短期間の旅行や、国内旅行なら実現しやすそうですね。慣れたら海外旅行にも行ってみたいです


川田川田

海外旅行や海外出張に出かけられる透析患者さんもたくさんいらっしゃいます。海外でもたいていの国や都市には透析施設がありますが、事前の準備は国内旅行の場合より充分にする必要があります。
海外旅行の場合も準備の一番目は、まず主治医の許可をもらうことです。
旅行を希望している目的地や飛行時間、時差、旅行期間、日程などを話し、現在の体調から考えて問題ないか相談しましょう。旅行の許可が出たら、旅行中の透析日、透析の回数を決めます


Q者

海外旅行だと、往復のフライト中も心配です


川田川田

長時間のフライトだとむくみが出やすいので、できるだけ体を動かすように気をつけてください。航空会社によっては、持病のある方用の機内食を用意しているところも多いので事前に確認しておくと安心です。
最近のジェット旅客機は空気抵抗の少ない高度1万メートル内外の高高度を高速巡行します。およそマッハ0.8の速度です。このため機内の気圧が下がらないように与圧をします。圧縮された(断熱圧縮)空気を機内に取り入れるので、乾燥した空気となります。そのためノドが渇くと思いますが水分の取り過ぎに注意しましょう。
皮膚の掻痒予防にあらかじめ軟膏を塗っておくのもよいでしょう。
また、軽度の迎角をとって飛行しますから、客室の床はゆったりとした坂道になっています。機内で移動する場合は転ばないように気を付けてください。キャビンアテンダントがワゴンを押して回るのは、意外と重労働になっているんですよ。
お酒についても注意しましょう。与圧しているとはいえ地上よりは低気圧になっていますからアルコールに酔いやすい環境になっています。酒類は少量にするか飲まない方が無難でしょう。
またそのような状況には遭遇したくありませんが、万一緊急用の酸素マスクが天井から降りてきた場合には、決して侮らずマスクを正しく装着して酸素を確保してください。一般に透析を受けている方は貧血傾向にありますから低酸素状態には弱くなっています。キャビンアテンダントの重要な仕事は安全確保の保安要員ですから、万一の場合はその指示に素直に従ってください


Q者

海外での透析施設はどのようにして探せばいいですか


川田川田

そうですね。
それが大事な準備の二番目、透析施設探しと予約になります。
インターネットなどで探すこともできますが、大手旅行代理店などのパックツアーなどで海外透析予約サービスを利用すると便利です


Q者

透析患者向けの海外パックツアーもあるのですね。それだと透析施設の予約も旅行の予約と一緒にできるので便利そうです


川田川田

ツアーを利用した場合も個人で予約した場合も、先方の施設から患者さんの情報についてのレポート作成依頼が来るので、主治医に必要な書類を作成してもらいます


Q者

いろいろと準備があるのですね


川田川田

準備はまだあります。
準備の三番目は、目的地の医療事情についての情報収集です。
万が一旅行中に体調が悪化した時に治療を受けられる医療施設もあらかじめ調べておく必要があります。旅行中の治療費用等を補償する海外旅行保険にも加入しておきます


Q者

何が起きても大丈夫なようにしておくということですね


川田川田

そして準備の四番目は海外で受けた透析費用還付方法の確認です。
海外では日本の健康保険は使えませんから、透析治療の費用は現地で全額払うことになります。帰国してから手続きをすれば治療費の一部が払い戻されることが多いので、必要な書類や手続きについて、加入している健康保険組合やお住まいの地方自治体の窓口に確認しておきましょう


Q者

よくわかりました。海外旅行にもぜひチャレンジしたいと思います


川田川田

旅行から帰ったら体重測定や血液検査など、しっかりとチェックを受けましょう。旅行で気分転換できれば、これからも透析治療を頑張っていこうと前向きになれますよね。また次はどこに行こうかなという楽しみも励みになります。充分な事前準備と自己管理で、旅行を楽しんでください

まとめ

  • 透析患者さんも、主治医の許可と事前の準備があれば、旅行に行くことができます。
  • 旅先で透析を受ける施設は前もって調べ予約しておきましょう。
  • 旅行中の食事は塩分・カリウムとタンパク食の摂り過ぎに注意しましょう。
  • 海外旅行の場合はより念入りな準備が必要です。
  • 海外で透析を受けた場合の医療費は現地で全額払い、帰国後一部払い戻されることが多いです。