ご家族が透析治療を受けている方は、自分もいずれは腎臓が悪くなって人工透析が必要になるのではないか心配になったことはありませんか?
やがて末期腎不全になって透析療法が必要になる原因疾患には、一部遺伝する病気もありますが、すべてが遺伝するというわけではありません。
むしろ遺伝する腎臓の病気は少数です。
今回は遺伝的要素が強い腎臓の病気についてご紹介します。

空ちゃん空ちゃん

こんにちは、清水さん


清水清水

いらっしゃい、空ちゃん。あら、どうしたの、今日はなんだか元気がないわね。もしかしてお父さんの具合が悪いの?


空ちゃん空ちゃん

いえ、父は今のところ特に症状は進んでいません。実は、父のことじゃなくて自分のことが心配なんです。慢性腎臓病で将来は人工透析が必要になる父のように、私もいつかは腎臓が悪くなって透析をすることになるのかなあって。腎臓の病気って遺伝するんでしょうか


清水清水

なんだ、それが心配だったのね。確かに遺伝するもののあるけれど、遺伝しない病気の方が多いのよ。でも空ちゃんは腎臓の病気について勉強しているから、遺伝性の疾患についても知っておいた方がいいわね。これから説明するからしっかり聞いてね


空ちゃん空ちゃん

はい!ありがとうございます

腎臓の病気は遺伝する?

末期腎不全となって透析療法が必要になる腎臓の病気には、さまざまなものがあります。
その中には遺伝的な病気もありますが、全体の中での割合はそれほど多くありません。
しかし、両親のどちらかが遺伝的な腎臓病で透析治療に至った場合には、その子供も同じ経過をたどる可能性があります。
では遺伝しやすい腎臓の病気の例をご紹介します。

透析の原因疾患4位の多発性嚢胞腎

多発性嚢胞腎とは、左右両方の腎臓に大小無数の嚢胞ができる遺伝性の腎臓病です。
嚢胞は次第に大きくなっていくため、腎臓の組織が圧迫されて委縮し、腎機能が低下してしまいます。
比較的まれな病気ですが、末期腎不全に至ることが多く、透析療法を受けている患者さんの原因疾患としては4番目で、全体の3.6%を占めています。(日本透析医学会『わが国の慢性透析療法の現状』よりhttp://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2017/p011.pdf
原因疾患の1位は糖尿病性腎症で、2位は慢性糸球体腎炎、3位は腎硬化症で、これらに次ぐ多さの原因疾患です。
最も遺伝性の高い腎臓病で、両親のうちどちらかがこの病気の遺伝子を持っていた場合、50%の確率で子供に遺伝します。
男女のどちらかに特に遺伝しやすいということはなく、性別による差はありません。
しかしすべての原因が遺伝というわけではなく、この病気の家族がいなくても突然発症する場合もあります。
この病気の遺伝子を持っている人が発症するのは30代、40代が多く、その後70歳までに半数前後の患者さんが末期腎不全となり透析療法が必要になります。
遺伝の型によっては幼児期に発症するタイプがあり、その場合は急激に悪化して命に関わることも多いです。

①原因

尿細管細胞の中では、繊毛が尿の流れを感知して尿細管の太さを調整しています。
この繊毛の働きに関係する遺伝子にPKD遺伝子というものがあるのですが、多発性嚢胞腎の患者さんの場合PKD遺伝子に異常があることで尿管の太さを調整することができなくなり、嚢胞ができて腎臓が肥大化し腎機能が低下してしまいます。

②症状

発症する30代、40代頃までは、ほとんど症状が出ません。
最初の症状は血尿、腹痛、腰痛などです。
その後嚢胞が大きくなって腎臓をおおっている膜が伸ばされるようになると、慢性的に痛みを感じるようになります。
また嚢胞に感染が起きると高熱が出ることもあります。
血圧が高くなるのもこの病気の特徴で、健診で高血圧が見つかり精密検査をしたところ多発性嚢胞腎であることがわかったというケースも少なくありません。
最も注意したいのは、この病気の患者さんは、脳の血管の一部が膨らんで弱くなる脳動脈瘤ができるやすいことです。
高血圧が続くと、脳動脈瘤が破裂してくも膜下出血が起きるため、非常に危険です。
脳のMRI検査で脳動脈瘤ができていないか確認し、脳動脈瘤が発見された場合は厳格な血圧コントロールを行います。

③治療

嚢胞の増大を抑制する薬も開発されてきていますが、根本的な治療は今のところありません。
腎機能の低下をできるだけ防ぐ治療を行いますが、末期腎不全となった場合は透析療法が必要になります。

聴力障害や視覚障害をともなうアルポート症候群

男性に遺伝しやすい腎臓病です。幼少期から血尿が出て、年齢とともにタンパク尿も見られるようになります。
そして30代頃には透析治療が必要になる経過が一般的です。
女性の患者さんが全くいないわけではありませんが、男性に比べると軽症で、末期腎不全に至るケースは少ないです。

①原因

腎臓の糸球体の構成成分に関係する遺伝子の変異が原因です。

②症状

腎機能の低下だけでなく、難聴や視覚障害も発症します。

③治療

遺伝性の疾患のため、根本的な治療法はありません。
腎機能低下を防ぐ治療を行います。

糖尿病Ⅰ型とⅡ型、遺伝の影響があるのはどっち?

末期腎不全に至る原因として最も多い糖尿病には、Ⅰ型とⅡ型があります。
Ⅰ型は子どもや若い人に多いため遺伝性疾患と誤解されやすいのですが、遺伝的要素はなく膵臓のインスリンを出す細胞が壊されてしまう自己免疫性の疾患です。
インスリンが正常に分泌されないと、高血糖の状態が続くことで全身の血管で動脈硬化が起きます。
その結果、腎臓でろ過機能を果たしている毛細血管の壁も厚くなり腎機能が低下し、糖尿病性腎症を発症します。
糖尿病の発症後約10年で糖尿病性腎症となります。
一方Ⅱ型は、生活習慣が大きく影響し、太った人や中高年に多い糖尿病です。
このⅡ型糖尿病は遺伝的体質が影響するので、祖父母や両親にⅡ型糖尿病の患者さんがいる人には発症率が高くなります。
しかし遺伝的体質を自覚した上で生活習慣に気をつければ、Ⅱ型の発症を防ぐことは充分に可能です。

人工透析に至る原因疾患には、遺伝性の腎臓病もいくつかあります。
家族がそのような病気だと自分も発症するのではないかと心配になることもあるかもしれませんが、気をつけていれば早期発見、早期治療できることを前向きに考え、定期的な検査と早めに適切な対応をとるようにしましょう。

清水清水

遺伝しやすい腎臓病について説明したけど、わかったかな?


空ちゃん空ちゃん

はい、よくわかりました。ありがとうございます。父の場合は遺伝性が高い腎臓病じゃないから、私も必ずかかるというわけでないんですね。ほっとしました


清水清水

お父さんは、糖尿病から慢性腎臓病になられたのよね


空ちゃん空ちゃん

そうです。年をとってからなったのでⅡ型糖尿病ですね


清水清水

Ⅱ型糖尿病は、生活習慣に気をつけていれば防げるから大丈夫よ


空ちゃん空ちゃん

もしかしたら糖尿病になりやすい体質を受け継いでいるかもしれないから、年をとってからも気をつけます!


清水清水

今日話した遺伝する腎臓の病気については下にまとめておくから、復習しておいてね


空ちゃん空ちゃん

はい、そうします。さ、帰って父の食事指導をしないと……


清水清水

(お父さん、毎日うるさく言われて大変だろうけれど、そのくらいの方が悪化しなくてちょうどいいかもしれないわ)では、またね

まとめ

  • 人工透析の原因疾患になる腎臓の病気には、遺伝性の病気もあります。
  • 腎臓に無数にできた嚢胞が徐々に大きくなり、腎機能が低下する多発性嚢胞腎は、人工透析原因疾患の4位です。
  • 多発性嚢胞腎は脳動脈瘤ができやすいので、定期的な脳の検査と血圧コントロールが重要です。
  • アルポート症候群は、聴覚障害や視覚障害もともなう遺伝性の腎臓病です。
  • 糖尿病Ⅰ型は遺伝性の疾患ではありませんが、糖尿病Ⅱ型は遺伝の影響もあるので、生活習慣に気をつけて糖尿病性腎症の発症に注意が必要です。