長期間透析治療を続けていると、骨や関節に痛みが出る透析アミロイドーシスや皮膚のかゆみなどの合併症が起きてきますよね。これらの合併症の原因になる血液透析では取り除きにくい老廃物を除去できるのが、血液ろ過透析(HDF)です。
老廃物といっても生物学的にはたんぱく質の一種で様々な分子量のたんぱくで構成されています。近年ではパソコンと組み合わせるなどして透析技術も年々向上してきています。生体内でその人にとって一番悪役と思われる分子量の蛋白に狙いを定めて除去できる時代となってきました。
今回は血液ろ過透析についてご紹介します。

血液透析の種類

血液透析は、末期腎不全患者さんの血液を体外に取り出して浄化する治療方法です。血液透析では、次の3つの原理を利用しています。

拡散

液体の中に溶けている物質が、濃度の濃いかたほうから薄いほうへ移動し均一な濃度になろうとする原理です。この原理により、患者さんの血液の中の尿素や窒素などの老廃物は半透膜を通って透析液へ、透析液中の栄養成分は血液へと移動します。

浸透圧

半透膜をはさんで濃度の違う溶液があると、濃度の低いほうから高いほうへ、水分が移動する原理です。

限外ろ過

半透膜をはさんだ溶液の片側に圧力をかけて膜の反対側との間に圧力差が生まれると、圧力をかけた側にある水分が反対側に押し出される原理です。

①血液透析

拡散の原理を利用して、血液中の老廃物を透析液中に移します。しかしそれだけでは水分が浸透圧の原理で透析液側から血液中に入ってきてしまうので、限外ろ過で血液側に圧力をかけて、水分を透析液側に移動させるようにします。血液透析は、小分子量物質は効率よく除去できますが、皮膚のかゆみや透析アミロイドーシスの原因になる中分子量物質や大分子量物質はあまり除去できません。また透析中の血圧低下や不均衡症候群などの合併症を起こしやすいという特徴があります。

②血液ろ過

透析液は使わずにヘモフィルターという血液ろ過器に患者さんの血液を通し、大量に限外ろ過を行います。フィルターを通過するときに尿毒素物質も水分と一緒に外側にしみ出してきて除去される仕組みです。ろ過により水分と電解質を失うため、その後補充液を加えて、バランスを整えます。中分子量物質、大分子量物質の除去には優れていますが、小分子量物質はあまり除去できません。血液ろ過は、血液透析では血圧が低下してしまう患者さんに適応となります。また眼圧が上昇しにくいので、緑内障を合併している患者さんには血液ろ過が行われることが多いです。

血液透析と血液ろ過にはそれぞれメリットとデメリットがあるので、この2つの治療方法を組み合わせたのが血液ろ過透析(HDF)です。

あらゆる大きさの物質を除去できる血液ろ過透析

血液ろ過透析(HDF)は、血液透析と血液ろ過を同時に行う治療法です。大量の補充液を回路に注入して、その量と同じ水分量をヘモダイアフィルターという専用の膜でろ過します。この大量のろ過により、老廃物を水分と一緒にろ過することができます。

以前は透析時に血圧低下などの症状が起きる透析困難症や透析アミロイドーシスの患者さんのみに適応でしたが、2012年よりすべての患者さんに実施できる治療法となりました。血液ろ過透析には、患者さんの体に負担をかけずに小分子量から大分子量まであらゆる大きさの老廃物を効率的に除去できるというメリットがあります。

特に透析アミロイドーシスの原因となるβ₂マイクログロブリンという物質の除去を行うことが可能です。透析アミロイドーシスは、長期間透析を続けている患者さんに起こりやすい合併症で、β₂マイクログロブリンがアミロイドという物質に変性し骨や関節に沈着することで、手がしびれる手根管症候群やばね指、関節痛などを引き起こします。

進行すると手指の運動障害や歩行障害などが起きる破壊性脊椎関節症へと進展することもあるので、透析アミロイドーシスの症状が見られる患者さんには血液ろ過透析を実施し、β₂マイクログロブリンを積極的に除去する医療機関が増加しています。

血液ろ過透析の種類

①バイオフィルトレーション

アセテートという物質を全く含まない透析液や補充液を使った血液ろ過透析です。アセテート不耐症の患者さんや透析時に血圧が低下しやすい患者さんに実施されます。

②オンラインHDF

透析液を補充液として使う方法です。大量の透析液がダイアライザーを介さずに血液中に注入されるため、透析液の徹底した清浄化が必須になります。補充液を回路に注入する部位により、前希釈法と後希釈法に分類されます。

前希釈法

補充液を注入する部位がダイアライザーより前にある方法です。大量の透析液を注入することができるというメリットがありますが、ダイアライザーに入る前に患者さんの血液を薄めることになるので、透析効率が下がります。

後希釈法

ダイアライザーでろ過した後に補充液を注入する方法です。老廃物を効率よく除去できますが、アルブミンの漏出量が多くなるという欠点があります。

③オフラインHDF

補充液に専用の置換液を使用し、透析液回路と切り離されているものをいいます。

④プッシュ&プルHDF

補充液を使用せず回路に圧力をかけてろ過と逆ろ過を行う方法です。

⑤i-HDF

一定時間ごとに少量の補充液を注入しながら、血液透析を行う方法です。透析液側から血液側にしみ出すように補充液を注入するので、透析膜の目詰まりを防ぎ、老廃物を効率よく除去します。治療中の血圧低下や末梢循環器不全を防ぎます。

血液ろ過透析の効果

2013年末に日本透析医学会が行った調査によれば、血液ろ過透析は透析効率に加え様々な目的のために実施されています。
http://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2014/p039.pdf

透析アミロイドーシスや、血圧低下などの透析困難症の患者さんに加え、皮膚のかゆみや睡眠障害、イライラの改善などの目的でも実施されています。またむずむず脚症候群とも呼ばれる下肢に不快な症状を感じるレストレスレッグス症候群に悩む患者さんにも実施されています。

血液透析と血液ろ過を組み合わせた血液ろ過透析は、あらゆる大きさの老廃物を効率的に除去できる透析方法です。透析アミロイドーシスや皮膚のかゆみなどの合併症が気になる方は、現在治療を受けている医療機関で血液ろ過透析を受けることはできるか、主治医に相談することをおすすめします。

まとめ

  • 透析療法は、拡散、浸透圧、限外ろ過の3つの原理を利用した治療法です。
  • 血液透析では、拡散と限外ろ過により患者さんの血液から老廃物と余分な水分を除去しています。
  • 血液透析では小分子量物質は効率よく除去できますが、中分子量物質や大分子量物質はあまり除去できません。
  • 血液ろ過では、中分子量や大分子量物質は除去できますが、小分子量物質は血液中に残りやすくなります。
  • 血液ろ過透析は、血液透析と血液ろ過を組み合わせた治療方法で、すべての大きさの老廃物を効率よく除去することができます。
  • 血液ろ過透析は、患者さんの体への負担が少なく、合併症を防ぐ治療法です。
  • 透析アミロイドーシスの原因になるβ₂マイクログロブリンは分子量が大きいので、血液透析で取り除くことが難しくなります。
  • 血液ろ過透析は、β₂マイクログロブリンを効率よく取り除き、透析アミロイドーシスの発症を防ぎ、進行を抑えます。
  • 血液ろ過透析は、透析中の血圧低下を防ぎます。
  • 血液ろ過透析には、補充液の種類や注入方法により、バイオフィルトレーション、オンラインHDF、オフラインHDF、プッシュ&プルHDF、i-HDFなどの方法があります。