夏になると連日出される熱中症の注意報…水分や塩分の摂取制限がある透析患者さんは、どうしたらいいのか困りますよね。健康な人と同じように水分をたくさん摂取してしまうと、体内に余分な水分がたまり過ぎて、心血管系疾患を起こしてしまうこともあります。透析患者さんの場合、熱中症を防ぐための対策は、一般的な方のものとはやや異なります。特に高齢の患者さんや糖尿病から末期腎不全にいたった患者さんは、熱中症のリスクが高くなります。

今回は透析患者さんの熱中症対策についてご紹介します。患者さんご本人はもちろんご家族の方もご参考になさってください。

熱中症とは

熱中症とは、気温と湿度が高くなり、人間の体が対応できなくなった状態のことです。高い気温が長く続くことで、大量の汗が出て体内の水分や塩分が失われ、湿度が高いことで、汗が蒸発せず、体内の熱が放出されずこもったままになることで起こります。熱中症は、症状の重さで3段階に分類されます。

I度(軽症)
主な症状は、めまいや立ちくらみ、手足のしびれ、こむら返りなどです。室外で症状が現れた場合は、室内の涼しい部屋へ移動して休憩し、体を冷やして水分を摂ることで回復します。

II度(中等症)
Ⅰ度より症状が進み、頭痛や吐き気、嘔吐、脱力感などが起きます。意識がしっかりしているようなら、Ⅰ度の時と同じように涼しい場所に移動して様子をみてください。それでも症状がよくならない場合や、意識がはっきりしない場合などは、早めに医療機関を受診しましょう。

III度(重症)
呼びかけても反応せず意識障害が見られる場合や、けいれんやまっすぐ歩けないなどの症状がある場合は、重度の熱中症と考えられます。最悪の場合 命に関わるケースもあるので、救急車を呼び、救急病院を受診しましょう。

透析患者と熱中症

熱中症は、気温や湿度の影響、運動の状態などで、すべての年代の方に起こりうる症状です。その中でも特に次のような方が熱中症になりやすい上、重症化しやすい特徴があります。

・高齢者
高齢の方は体温の調節機能が低下している上に、暑さを感じる感覚も弱くなっています。本人が気づかないうちに重症化していることもあるので、まわりの方が気をつけてあげましょう。

・糖尿病患者さん
糖尿病の患者さんは、神経の働きに異常が出る糖尿病神経障害を合併している方が少なくありません。そのため汗の分泌を調節している自律神経がうまく働かず、体温調節ができなくなることで、熱中症を発症しやすくなります。

・肥満の人
肥満の人は痩せ型の人に比べ、皮下脂肪が熱を逃がさないように働くため体内に熱がこもりやすく、熱中症の症状が強く出ることがあります。

・透析患者さん
透析患者さんは、体内の電解質のバランスが崩れやすく、汗腺の働きも衰えているので、体温を調節する機能が低下しています。糖尿病のある方や肥満の方、高齢の方も多いため、熱中症にかかりやすい要因がそろっている状態です。

どう防ぐ?透析患者の熱中症

では透析患者さんが熱中症を防ぐためには、どのようにすればいいのでしょうか。一般的な熱中症対策との違いを理解しておきましょう。

①水分制限は守る

健康な方の場合は、熱中症を防ぐために水分をたくさん摂ることを推奨されますが、透析患者さんは水分制限を必ず守る必要があります。飲みもの からの水分摂取量の目安は、1日500ml以内です。暑いから、汗をかいたからと飲み過ぎないように、マイカップなどを決めて、1日に摂った水分量を管理しましょう。一気に飲むと飲み過ぎてしまうので、一口ずつ含むようにするのがポイントです。また水ではなく氷を口に含むのもおすすめです。暑い時期は水分摂取量が多くなり過ぎていないか確認するために、まめに体重を計るようにすると安心です。

②飲みものは、水か麦茶

スポーツドリンクは一般的な熱中症対策には効果的ですが、塩分やカリウムを多く含んでいるため、透析患者さんは避けましょう。飲みもの は水または、透析患者さんが制限しなければならないカリウム量が少ない麦茶を選んでください。

②暑さを避ける

4月末から10月末までの間、最高気温35℃以上が予想される日は、気象庁から高温注意報が発表され、熱中症への注意が呼びかけられます。暑い日の外出はできるだけ避け、涼しい室内で過ごしましょう。エアコンを上手に使って、室内を適温に保ってください。また、意外に多いのが、梅雨時の熱中症です。梅雨時は真夏のような気温ではなくても湿度が高くなるため、汗が出にくく、体がまだ暑さに慣れていないことが原因になります。高齢の方は自分で熱中症に気がつかないケースもあるので、ご家族がサポートしてあげましょう。

透析患者が熱中症になってしまったら

注意していても透析患者さんが熱中症になってしまった場合はどうしたらいいのでしょうか。健康な方なら まず水分を補給しますが、透析患者さんは一度に大量の水分を補給するわけにはいきません。適切な対処方法を覚えておきましょう。

①涼しい場所、気温の低いところに移動する

まず屋外なら木陰などできるだけ涼しい場所に、屋内に入ることができる場合は、エアコンの効いた部屋に移動しましょう。この時、洋服をゆるめて、体を楽にしてあげてください。

②体を冷やす

熱中症の患者さんの体は、熱がこもることで熱くなっています。冷たいタオルや、冷えたペットボトル、氷枕などを使って、患者さんの体を冷やしましょう。冷やす場所はおでこよりも、わきの下や首などが効果的です。霧吹きが使えるようなら、全身に水をかけてあげてください。

③水分を少しずつ補給する

小さなコップなどに水や麦茶を入れ、少しずつ飲むようにします。水分摂取量が多くなってしまった場合は、普段透析治療を受けているクリニックに連絡して患者さんの状態を詳しく伝えましょう。患者さんの状態により、スケジュールを変更して透析治療を行うこともあります。

④症状が回復しないようなら医療機関へ

涼しいところで体を冷やしても症状が回復しない場合や、意識がはっきりしない場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。その場合も必ず透析治療中であることを伝えてください。

透析患者さんは、体温調節機能が低下していることや糖尿病のある方が多いことなどから、熱中症にかかりやすくなっています。透析患者さんの場合は、水分や塩分を補給するという一般的な熱中症対策を行えないので、慎重な対応が必要です。

まとめ

  • 熱中症は、高い気温と湿度に人間の体が対応できなくなった時に起きる症状です。
  • 熱中症は症状の重さにより、軽症、中等症、重症の3段階に分類されます。
  • 熱中症にかかりやすく、症状が重くなりやすいのは、高齢者、糖尿病のある方、肥満の方、透析患者さんなどです。
  • 透析患者さんが熱中症になってしまった場合の対応は、健康な方の場合とは少し異なります。
  • 熱中症になった場合も、水分を一度に大量に摂ることはせず、涼しい場所に移して、体を冷やしましょう。
  • スポーツドリンクは塩分が多いので、透析患者さんは控えましょう。