腎臓が悪いと心臓にも悪影響が出る、と聞くと不安になりますよね。事実、慢性腎臓病は、腎臓の働きが失われていくだけではなく、心臓病を発症するリスクが高くなる病気です。特に高血圧や糖尿病から腎臓病になった方は、注意が必要になります。今回は、腎臓病の方が知っておきたい心臓病との関係についてご紹介します。

密接な関係がある腎臓病と心臓病

一見、関わりがなさそうに見える腎臓と心臓ですが、実は密接な関係があります。例えば、透析患者さんが命を落とす原因の第1位は、心不全なのです。
日本透析医学会 わが国の慢性透析療法の現況より)

透析療法が必要になった末期腎不全の患者さんだけでなく、慢性腎臓病があると軽度でも心臓病を発症する危険性が高まります。なぜ腎機能が低下していると、心臓に悪影響がおよぶのでしょうか。主な理由をご紹介しましょう。

①心臓の仕事量が増える

腎機能が低下すると、体内には老廃物や水分がたまりやすくなり、血液量も増加します。心臓はより多くの血液を送り出さなければならなくなり、負担が重くなります。その結果、心臓病を発症しやすくなるのです。特に尿が出なくなった透析患者さんの場合は、体内に余分な水分がたまりやすくなるため、過剰な水分により心臓の機能が奪われる「うっ血性心不全」に注意が必要です。

②高血圧と高血糖

慢性腎臓病では、多くの場合、糸球体の毛細血管が傷つき、正常なろ過機能を発揮できない状態になっています。毛細血管に障害を起こす要因は、主に高血圧と高血糖ですが、この時、傷ついているのは、腎臓の血管だけではありません。全身の血管にも障害が起きているため、心臓病の中でも心臓そのものではなく血管に原因がある「狭心症」や「心筋梗塞」などを発症しやすくなるのです。

③腎性貧血が心臓に負担をかける

一般的に貧血というと、赤血球を構成するヘモグロビンが不足することで起きる「鉄欠乏性貧血」です。鉄欠乏性貧血は、ヘモグロビンのもとになる鉄分を補給することで改善できますが、腎臓病の患者さんはヘモグロビンとは無関係の貧血を発症しやすくなっています。それが、腎機能低下が原因となっている「腎性貧血」です。

赤血球は、骨髄の中で作られ、網状赤血球として血管の中に移動して成長します。赤血球の成長に必要なのが、「エリスロポエチン」という腎臓の尿細管で分泌されるホルモンです。腎機能が低下するとエリスロポエチンの量が減少し、赤血球が育たなくなってしまい、貧血が進むのです。

貧血になって赤血球の量が不足すると、全身の細胞や組織に運べる酸素の量が減少します。心臓は、もっと多くの血液を運んで酸素を供給しようと鼓動を早くするため、心臓に大きな負担がかかるようになります。

腎臓病の患者さんがかかりやすい心臓の病気は?

腎臓病の患者さんに多い心臓病の特徴と主な症状を知っておきましょう。

・狭心症
心臓に酸素やエネルギーを供給している冠動脈が動脈硬化によって狭くなると、心臓に送る血液が不足します。この状態で、急いで歩くなどの行動をした時、心臓の筋肉が酸欠状態になるのが、「狭心症」です。胸に痛みや圧迫感を感じますが、数分間でおさまります。また朝、胸の痛みで目が覚めることや、起床後しばらくしてから胸の苦しさが起きることもあります。

・心筋梗塞
冠動脈がさらに狭くなり詰まってしまうのが、「心筋梗塞」です。心臓に酸素や栄養が供給されなくなることで、細胞が壊死し、早急に治療を開始しないと心停止にいたります。狭心症との違いは、時間や動作に関係なく、突然激しい胸の痛みが起きて、15分以上続くことです。息切れや冷や汗、めまい、脱力感なども起きます。

腎臓と高血圧の関係について

腎臓と血圧は、お互いに強く関係しあっています。腎臓は血管のかたまりのような臓器なので、血圧の影響を大きく受けるのですが、特に糸球体の毛細血管に強い圧力がかかり続けることで、動脈硬化が進み、腎機能が低下することになります。

腎臓は血圧を調整するレニンというホルモンを分泌しているのですが、腎臓の働きが悪くなるとレニンが分泌されなくなり、血圧を一定に保つことができなくなってしまいます。さらに腎機能が低下すると、体内の水分や電解質を調整できなくなるため、余分な塩分や水分が体内にたまりやすくなり、血液量が増え、血圧が上がります。

つまり高血圧で腎臓が悪くなると、ますます高血圧になるという悪循環に陥ってしまうわけなのです。

腎硬化症は高血圧の人に多い腎臓が萎縮する病気

高血圧が原因で腎臓に動脈硬化が起きると、腎臓への血流が悪くなり、腎臓が硬く小さく委縮してしまいます。これを腎硬化症と言います。腎硬化症には、徐々に進行する良性と急速に進行する悪性があります。

・良性腎硬化症
高齢の高血圧患者さんに多く、腎機能が徐々に低下する病気です。最初のうちは高血圧による動悸や頭痛、肩こりがある程度で、自覚症状はほとんどありません。超音波検査やCTを行うと、両方の腎臓の萎縮が見られます。血圧を下げることで悪化を防ぐことができるため、治療は血圧のコントロールが中心です。食事療法で減塩を行い、降圧剤を用いた薬物療法を行います。

・悪性腎硬化症
30~40歳代の男性に多く高血圧緊急症ともいわれる病気です。拡張期血圧の著しい上昇と腎機能障害が急激に進み、頭痛や嘔吐、けいれん、意識障害に加え、眼底出血や視力障害が起きることもあります。心不全など命に関わる病気を引き起こすこともあるので、すぐに入院して降圧治療を始めます。腎不全になり、透析療法が必要になることもあります。

慢性腎臓病は、腎機能が低下するだけでなく、心臓病を発症するリスクも高くなる病気です。高血圧は腎臓病を悪化させる重大な要因の上、腎機能が低下すると血圧も高くなるという悪循環に陥るので、注意が必要です。

まとめ

  • 慢性腎臓病の患者さんは、腎機能の低下が軽度でも、心臓病を発症するリスクが高くなります。
  • 腎臓が悪くなると、体内に余分な水分がたまりやすくなることで、心臓に負担がかかります。
  • 血圧が高い状態が続くと、腎臓の糸球体の動脈硬化が進み、腎機能が低下します。
  • 腎硬化症は、高血圧による動脈硬化が原因で腎臓が萎縮する病気です。
  • 悪性腎硬化症は、すぐに入院して治療を開始します。悪性腎硬化症から腎不全になり、透析療法が必要になるケースもあります。