慢性腎臓病と診断されたら、どんな薬を飲むことになるのか、そしてその薬は体内でどんな働きをするのか気になりますよね。腎臓が悪い患者さんに処方されることが多い薬の1つに、利尿剤があります。利尿剤は余分な塩分や水分の排泄を促し、尿の量を増やすことでむくみを改善するために使います。

今回は、利尿剤の働きや種類から、気をつけたい副作用まで、詳しくご紹介します。

利尿剤の目的は、むくみと高血圧の改善

慢性腎臓病の治療薬には、病気の原因に直接働きかける薬と、症状を改善する薬があります。利尿剤は、現れている症状を改善する対症療法の薬です。

腎臓は尿を作ることで体内の水分量を調節し、体内の塩分(ナトリウム)の濃度を一定に保つという大切な働きをしています。しかし、腎機能が低下している慢性腎臓病の患者さんの場合は、糸球体のろ過機能が正常に働かないため、過剰な水分や塩分が体内に残りやすくなってしまいます。

そして慢性腎臓病のステージが進行すると、尿が出にくくなるという症状が見られるようになります。では、尿が出にくくなり水分がたまりやすくなるとどのような状態になるのでしょうか。

慢性腎臓病の患者さんは、手や足の皮膚を指で押した時、へこんだままで元に戻らない症状が見られることがあります。これがむくみで、血液の中の過剰な水分が血管の外にしみ出して皮下組織にたまった状態です。過剰な水分がたまるむくみは重症になると手や足だけでなく、内臓にも起こり、内臓の機能に障害を引き起こします。

肺に起きれば呼吸困難、心臓なら心不全など危険な病気につながるため、このむくみを改善するために使われるのが利尿剤です。利尿剤には、尿の量を増やして体内の水分量を調整する作用があります。

また多くの慢性腎臓病の患者さんに見られる高血圧も過剰な水分と塩分摂取量が深く関わっています。水分の排泄が正常に行われないと血液量が増え、高血圧につながります。

さらに塩分(ナトリウム)は水分をためこむ性質があるため、ますます血圧が高くなってしまうというわけなのです。利尿剤は水分と一緒に塩分の排泄も促すため、血圧を下げる効果もあります。しかし重症な高血圧の患者さんの場合は利尿剤だけでは降圧効果が弱いため、降圧剤も一緒に使うことが一般的です。

糸球体ろ過率が低下している患者さんにも利尿効果が高いループ利尿薬

むくみや高血圧のある患者さんによく処方される一般的な利尿剤です。尿細管は、糸球体から伸びる近位尿細管という部分から尿を腎盂へ送る集合管に至る遠位尿細管へとU字状につながっているのですが、近位尿細管から遠位尿細管に変わるカーブの部分をヘレンループと呼びます。

ヘレンループは尿を濃縮する働きをしている部分で、ループ利尿薬はこのヘレンループに作用し、水分と塩分の再吸収を抑制し尿として排泄させることで尿の量を増やします。

腎臓の糸球体のろ過機能が低下している患者さんにも高い効果がある利尿作用が強い薬です。しかし、むくみが重症で腸管までむくみが見られるような場合は内服薬が吸収されにくくなるため、ループ利尿薬の注射剤を使用することもあります。

ループ利尿薬の一般名

フロセミド(商品名 ラシックス、オイテンシン)
ブメタニド(商品名 ルネトロン)
アゾセミド(商品名 ダイアート)
トラセミド(商品名 ルプラック)

ナトリウムの再吸収を抑制するサイアザイド系利尿薬

集合管につながる遠位尿細管に作用し、ナトリウムの再吸収を抑える利尿薬です。水分を取り込むナトリウムの排泄を促進するので、余分な水分の再吸収も防ぎ、尿の量を増やします。利尿作用は低めですが、ナトリウムの排泄による降圧作用もある薬です。またこの薬を服用すると慢性腎臓病ステージ1~3の患者さんの場合、尿タンパクが減少する効果が見られることもあります。

サイアザイド系利尿薬の一般名

トリクロルメチアジド(商品名 フルイトラン)
ヒドロクロロチアジド(商品名 ヒドロクロロチアジド錠「トーワ」)
ベンチルヒドロクロロチアジド(商品名 べハイド)

水分のみの排泄を促進するV2受容体拮抗薬

利尿剤は水分と塩分の排泄を促進して尿の量を増やすものが一般的ですが、近年登場したのが水分のみの排泄を促進する働きがあるV2受容体拮抗薬です。

腎臓の集合管で、水分の再吸収を促しているバソプレシンという抗利尿ホルモンの作用を阻害することで、尿の量を増やします。
他の利尿剤では効果が見られないケースに使用される他、腎臓内に複数の嚢胞ができる多発性嚢胞腎の治療にも使われています。

V2受容体拮抗薬の一般名

トルバプタン(商品名 サムスカ)
モザバプタン(商品名 フィズリン)

足のつりやこむら返りなどを防ぐカリウム保持性利尿薬

腎臓の遠位尿細管で、尿の中の水分やナトリウムなどを血液中に戻す働きを促すアルドステロンというホルモンがあります。このアルドステロンの作用を抑えて、水分とナトリウムの排泄を促進し、同時にカリウムの排泄を抑えるのがカリウム保持性利尿薬です。

むくみや高血圧を改善し、カリウムの不足により起きやすい足のつりやこむら返りなどを防ぎます。ループ利尿薬など他の利尿薬と併用して使われることもあります。

カリウム保持性利尿薬の一般名

カンレノ酸カリウム(商品名 ソルダクトン)
スピロノラクトン(商品名 アルダクトンA)
トリアムテレン(商品名 トリテレン)

利尿剤の副作用について

むくみの改善や血圧の安定に有効な利尿剤ですが、患者さんの体調や薬の量によっては副作用が出ることもあります。副作用は薬の種類によって違うので、主なものをご紹介します。

①ループ利尿薬の副作用

低カリウム血症や尿酸値の上昇、血糖値の上昇などを起こすことがあります。また急激な利尿により脱水症状が起きると血栓ができやすくなるので、脳梗塞や心筋梗塞を起こしたことがある方は注意が必要です。

②サイアザイド系利尿薬の副作用

低カリウム血症や尿酸値の上昇に加え、光線過敏症になりやすくなることもあります。

③V2受容体拮抗薬の副作用

口の渇きや電解質異常などが起きることがあります。

④カリウム保持性利尿薬の副作用

高カリウム血症や多毛症の他、男性では女性化乳房、女性では乳房痛や月経異常が起きることがあります。

また副作用が見られなくても、状態が変われば適切な薬の種類や量に変えることになります。
自覚症状に大きな変化がなくても、定期的に通院することが大切です。

慢性腎臓病の患者さんに起きやすいむくみや高血圧は、放置しておくと心臓に負担がかかり心血管疾患の原因にもつながります。
医師の指示を守って、その時の状態に合った利尿剤をきちんと服用しましょう。

まとめ

  • 利尿剤は、慢性腎臓病の患者さんがむくみや高血圧を改善するために飲む薬です。
  • 余分な水分や塩分の排泄を促し、尿の量を増やします。
  • 利尿剤には様々な種類があり、最も利尿効果が高いのはループ利尿薬です。
  • ナトリウムの排泄を促して血圧を下げるのは、サイアザイド系利尿薬です。
  • 近年使われるようになったV2受容体拮抗薬は、水分のみの排泄を促進する利尿薬です。
  • 低カリウム血症の人が使いやすいのは、カリウム保持性利尿薬です。
  • 利尿剤は副作用が起きることがありますが、薬の種類によって起きやすい副作用は違います。
  • 副作用が起きたり症状が変化した場合は、薬の種類や量などを変えて対応します。