透析療法を続けていると、透析はうまくいっているのか、合併症の心配はないのかが気になりますよね。
きちんと老廃物は取り除かれているのか、現在の腎臓や他の内臓の状態はどうか、合併症は起きていないかをしっかりと確認するために、透析療法を受けている患者さんはさまざまな検査を行います。
定期的な検査の結果により、その後の治療を決め、患者さんの食事指導、生活指導などをしていきます。
また合併症も早期に発見し、適切な対処をすることができます。
今回は透析療法中の患者さんが受ける主な検査とその目的をご紹介します。検査の数値で何を確認すべきか、お伝えしますので、参考にしてください。

透析の効果は血液検査で確認

人工透析で老廃物をどのくらい取り除くことができているかを調べるために、透析治療の前と後で血液検査を行います。
つまり、血液がきちんときれいになっているかを確認するための検査です。
血液検査で透析の効果を判断する基準になるのは、主に次の2つです。

①BUN

BUNはBlood Urea Nitrogenの略で、日本語では『血清尿素窒素』と呼ばれているものです。
私たちは毎日の食事からさまざまな栄養素を摂っています。
その中の1つであるタンパク質は、体内に吸収された後、分解され肝臓で代謝されて尿素になります。
腎臓の働きが正常ならば、この尿素は尿となって体外に排泄されるのですが、末期腎不全の患者さんは腎臓が機能を失っているため、血液中に残ってしまいます。
人工透析の役割の1つはこの尿素を患者さんの血液から取り除くことです。
つまり透析前後でBUNを比べることで、透析の効果が出ているかを確認することができます。

②Kt/V

Kは、人工透析によって尿素が完全に取り除かれた血液の量、tは透析時間、Vは患者さんの体液量で、標準化透析量とも呼びます。
BUNとともに透析療法の効率を表す数値で、値が大きいほど透析の効果が出ていると判断されます。
イメージ的には1回の透析で血液が何回入れ替わっているのかを示す指標です。あくまでもひとつの指標ですが、数字が大きいほど透析が十分に行われていることがわかります。

合併症も血液検査で発見

透析療法で起きやすい合併症を発見するために、定期的に血液検査を行います。

①赤血球数・ヘモグロビン

腎臓が分泌しているホルモンの1つに赤血球を作る働きを促進するエリスロポエチンというホルモンがあります。
末期腎不全の患者さんは、エリスロポエチンの分泌が減っているため、赤血球が作られにくくなり、貧血が起きやすくなっています。
血液検査で赤血球数、ヘモグロビンを調べ、貧血が進んでいた場合は治療を始めます。

②血清カルシウム・血清リン

透析患者さんは、ビタミンD作用不足により血清カルシウム値が低下し、リン除去不足により血清リン値は上昇しやすくなります。
カルシウムやリンの異常は骨の障害の原因になるだけでなく、血管の石灰化を進め心血管疾患の合併症につながるので、血液検査の結果をもとに管理します。
また必要に応じて骨密度検査も行い、骨の障害が起きていないか確認します。

心臓や腎臓の、機能や大きさ、形を調べる画像検査

必要に応じて何種類かの画像検査を組み合わせて、心臓や腎臓の状態を確認します。

①胸部レントゲン

患者さんの状態により、週に1回から月に1回程度、胸部レントゲンで心臓の大きさの変化を確認します。
末期腎不全の患者さんは、体内に過剰な水分が溜まりやすいため、血液の量が多くなる傾向があります。
そのため心臓は大量の血液を送り出さなければならなくなり、ゴムが伸びるように心臓が大きくなってしまいます。
心臓が大きくなっている場合は、透析による除水が十分でなく、体内に水分が溜まっていると判断されます。
過剰な水分は、心不全や脳梗塞など命に関わる合併症につながるので、注意が必要です。

②心電図・心臓エコー

定期的に心電図の検査を行い、心臓の動きに問題はないか確認します。
また心臓エコーでは、超音波を使って、レントゲンではわからない心臓内部の状態まで詳しく観察します。
過剰な水分によって心臓の機能が落ちていないかを確認するための重要な検査です。

③腹部エコー

腹部に超音波を当て、腎臓の位置や形、大きさ、腫瘍の有無などを調べます。
異常が見つかった場合は、CT検査や造影剤を使用したレントゲン検査で詳しく調べます。
同時に、腎臓に隣接する臓器である肝臓、胆のう、すい臓などの状態も確認することができます。
透析は腎臓自体を治すという治療法ではありませんので、透析を行いながらも腎不全は進行して腎臓は次第に萎縮します。その過程で「のう胞」といわれる水の溜まった袋に腎実質が置き換わっていきます。のう胞に腫瘍性変化が起きていないか確認することも重要です。

動脈硬化の進み具合を調べる脈波検査・ABI・TBI

透析患者さんによく見られる動脈硬化は、心不全や脳梗塞など危険な病気の原因となります。
突然の病状悪化を防ぐために、動脈硬化の状態も定期的に検査します。

①脈が伝わる速さで血管の状態を調べる脈波検査

動脈硬化の進み具合を調べるのが脈波検査です。
脈は心臓から出て波のように動脈を伝わっていくのですが、血管の壁が厚く硬いほど、早く伝わっていくという性質があります。
そこで脈の伝わる速さにより、血管の硬さや壁の厚さ、つまり動脈硬化の状態を調べるのが脈波検査です。
腕と足の4カ所にセンサーをつけて測定します。

②脚の動脈の状態を調べるABI検査

脈波検査と同時に行うことが多いのがABI検査です。
ABI検査は両足首と両腕の4カ所で血圧を測り、脚の動脈に詰まりや狭窄がないか調べます。
通常は脚の方が腕よりも血圧が高いのですが、脚の方が低く出た場合は脚の動脈に詰まりや狭窄がある可能性を疑います。
脚の動脈硬化が進行すると、下肢閉塞性動脈硬化症という病気になり、最悪の場合は足を切断しなければならなくなるケースもあります。
そのため定期的な検査で脚の動脈硬化の状態を確認しておく必要があるのです。

③透析や糖尿病の患者さんはTBI検査を

透析療法を受けている方や糖尿病の患者さんは脚の血管の石灰化が進んでいるため、足首と腕で血圧を測定するABI検査では正しい結果が出ないこともあります。
その場合は足の指と腕で測定するTBI検査を行います。

人工透析中は体重管理が重要です

体内に余分な水分が溜まっていない時の体重をドライウエイトと言います。
透析治療の前と後に体重を計り、透析後にはドライウエイトになるように血液中から余分な水分を取り除きます。
尿が出なくなった末期腎不全の患者さんの場合、体から出ていく水分よりも食べ物や飲み物から摂る水分の方が多くなるため、体内に水が溜まって体重が増えることになります。
つまり人工透析を受けた後、次の透析日までの体重増加の大部分は体に溜まった水分になります。
体に水分が溜まり過ぎていると、心臓や肺、血管などに負担がかかり、心不全などの合併症につながるため、大変危険です。
人工透析を受けている患者さんは体重の管理が重要で、水分が溜まり過ぎないように透析と透析の間の食事には注意する必要があります。
水分摂取量に加え、水分が溜まりやすくなる塩分の摂取量も厳守してください。

透析療法中に行うさまざまな検査は、腎臓の悪い患者さんが元気で長生きするために欠かせないものです。

まとめ

  • 血液検査で透析でとのくらい老廃物が取り除かれているかを確認します。
  • 血液検査で合併症が起きていないか確認します。合併症が発見されれば治療を開始します。
  • 画像検査で心臓や腎臓の状態を確認します。特に心臓の検査は、心血管系疾患を防ぐために大切です。
  • 動脈硬化の状態は脈波検査で確認します。
  • 透析治療中の患者さんは体内に水分が溜まりやすいので、体重管理が重要です。