体力低下や合併症の心配もある透析患者さんは、自身に介護が必要になった時のことを考えると不安ですよね。日本には、介護が必要な高齢者とそのご家族を社会全体で支える仕組みとして介護保険制度が整っています。今回は透析患者さんが利用できる介護保険の制度についてご紹介します。介護保険という言葉はよく耳にしていても、具体的な内容についてはよくわからないという方も多いと思います。患者さんも患者さんのご家族もどうぞご参考になさってください。

高瀬高瀬

甚五郎さん、今日はなんだか元気がありませんね。どうしましたか?体調の悪いところがあったらおっしゃってくださいね

甚五郎甚五郎

いや、将来のことを考えるといろいろと不安になってな。これからもっと年を取って身のまわりのことも自分でできなくなったら、どうなるんだろうと。
ワシ達透析患者は、普通の人達より体力はないし、骨がもろくなっているから骨折して歩けなくなるような危険もありそうだし……

高瀬高瀬

大丈夫ですよ。日本には介護保険制度がきちんと整っていますから

甚五郎甚五郎

介護保険の仕組みはややこしくてなかなか理解できないんだ。わかりやすく説明してくれ

高瀬高瀬

わかりました。じゃあしっかり聞いていてくださいね

透析と介護保険について

介護保険は、介護が必要な高齢者を社会全体で支えるために2000年から始まった制度です。

①保険料を払う人

40歳になると介護保険に加入することが義務づけられています。

40歳から64歳までの方

加入している健康保険と一緒に支払う仕組みで、保険料は加入している健康保険組合の種類や所得によって異なります。

65歳以上の方

年金からの天引きで、お住まいの市区町村が徴収します。
介護を必要としている人と保険料を納める人の割合が地域によって違うため、地方自治体によって保険料は異なります。

②介護保険を利用してサービスを受けられる人

65歳以上の方

65歳以上の方は第1号被保険者に分類されます。
第1号被保険者は、所定の手続きを行い介護認定を受けた上で、サービスを受けられます。

40歳から64歳までの方

40歳から64歳までの方は第2号被保険者に分類されます。
第2号被保険者は、指定の16疾病により介護認定を受けた場合、サービスを受けられます。
糖尿病性腎症はこの16疾病の中に含まれているので、糖尿病性腎症が原因で透析治療に至った方は、40歳から介護保険を利用することができます。
また骨折を伴う骨粗鬆症や脳血管疾患も16疾病に含まれているので、透析療法の合併症で骨粗鬆症となり骨折した方や脳血管疾患を発症した方も、40歳から介護保険を利用することが可能です。

透析患者さんが介護保険で利用できるサービス

①訪問介護

資格を持ったヘルパーが自宅を訪問して、日常生活のサポートをする制度です。
買い物や料理、洗濯などの家事から入浴や排泄のケアまでサービスを受けることができます。
透析患者さんが通院する時の乗車、降車の介助のサービスもあります。自己負担額は、地域や施設、要介護度によって変わってきますが、要介護1~5に認定されている方なら1回数百円程度です。

②訪問入浴介護

要介護認定されている方は、専門のスタッフによる入浴の介助を受けることができます。
要介護度が低い場合は自宅のお風呂を利用し、要介護度が高い場合は専用の入浴設備を積んだ車が自宅を訪問します。

③訪問看護

看護師や医師に自宅を訪問してもらうサービスです。
このサービスを利用したい場合は、かかりつけの透析クリニックから紹介を受けてください。

④訪問リハビリテーション

理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などに自宅を訪問してもらい、機能回復をめざしてリハビリテーションが受けられるサービスです。

⑤福祉用具貸与

車いすや歩行器、介護ベッドなどを、介護保険を利用してレンタルすることができます。

⑥福祉用具購入

入浴や排泄時に使う福祉用具などは介護保険を利用して購入することができます。

⑦住宅改修

自宅での手すりの取り付けや段差の解消など、バリアフリー改修工事を行う際は、費用の7~9割について介護保険から支給を受けることができます。支給限度額はひとり生涯20万円までです。しかし、要介護区分が重くなったとき(3段階上昇時)、または転居した場合は、再度20万円までの支給限度額が設定されます。

⑧デイサービス

事業所に通って食事や入浴などのケアをしてもらうサービスです。透析患者さんの場合は食事や水分摂取の制限や入浴時の注意点があるので、事業所のスタッフに対応してもらう必要があります。

⑨ショートステイ

要介護認定されている方が、短期間施設に入所できるサービスです。
ショートステイ中に透析治療に行く場合の送迎をご家族ができるようなら、対応可能な施設もあります。

介護保険を利用するための手続き

介護保険を利用するためには、次のような手続きを行う必要があります。

①地方自治体の介護保険担当窓口または地域包括支援センターに申し込む

申請書、介護保険の被保険者証、65歳以下の場合は健康保険の保険証を揃えて、申請します。
申請書にはマイナンバーの個人番号も記入する必要があります。

②訪問調査

市区町村の職員などが自宅を訪問し、本人の普段の様子や、生活機能、心身の状態などについて聞き取りをします。この調査を基にして介護にどの程度の手間がかかるかを統計学的にすべて時間に換算して一次調査結果とします。時間換算にはこれまで実際の状況を勘案して複数回の改定が行われており、最近では精度および信頼性とも大変向上していて公平性も確保されています。この調査では御自身の「イイトコロ」を見せる必要は全くありませんので、ご自分のありのままの身体能力を日常生活での悩みをふくめてありのままにアピールするのがよいと思います。

③主治医の意見書

かかりつけ医に心身の状態について意見書を作成してもらいます。

④コンピューター判定と介護認定審査会

訪問調査の結果と主治医の意見書によりまずコンピューターで一次判定を行い、その後専門家が二次判定を行います。

⑤要介護認定結果通知

要介護1~5、要支援1、2、非該当のどれかに認定されます。
通常、申請から30日以内に認定結果が通知されます。

⑥ケアマネージャーを選ぶ

要介護度が決まったら居宅介護支援事業者に連絡して、ケアマネージャーを選びます。

⑦サービスの利用と介護のプランを作成する

ケアマネージャーと相談しながら、利用するサービスを決定します。サービス利用の自己負担額は地域や利用する施設によっても異なるので、確認しておきましょう。

透析患者さんは、介護が必要になった時、介護保険制度利用してさまざまなサービスを受けることができます。一般的に介護保険を利用できるのは要介護認定を受けた65歳以上の方ですが、糖尿病性腎症が原因で透析治療が必要となった方の場合などは40歳から介護保険を利用することができます。

甚五郎甚五郎

なるほど。これだけ制度が整っていれば、年をとって介護が必要になっても大丈夫だな。安心したよ。透析治療にかかる医療費も特定疾病療養受療証や障害者自立支援制度などで、ずいぶん助けられているしな

高瀬高瀬

でもできるだけ自立した生活を送れるように、きちんと治療を続けて、食事や日常生活の注意をまもってくださいね

甚五郎甚五郎

わかった、わかった。しかしワシがこれからも元気で介護を受けずに生活できるかどうかは、アンタにかかっているんだからな!頼むよ!

高瀬高瀬

そ、そんな……。ま、一緒に頑張っていきましょう。介護保険の制度については下にまとめておきますから、読んでおいてくださいね

まとめ

  • 介護保険制度は、介護が必要な高齢者やそのご家族を社会全体で支えていく仕組みです。
  • 要介護認定を受けた65歳以上の方は、介護保険を利用してさまざまなサービスを受けることができます。
  • 糖尿病性腎症が原因で透析治療に至った方などの場合は、要介護認定を受けた場合40歳から介護保険を利用することができます。
  • 介護保険で受けられるサービスには、訪問介護や訪問入浴などさまざまなものがあり、バリアフリーにするための住宅改修費も補助を受けられます。
  • 介護保険を利用するためには、地方自治体の介護保険相談窓口などに申請して要介護認定を受ける必要があります。
  • 申請から30日以内で認定結果が通知されます。