Q者

最近透析治療を始めたのですが疲れやすく、体がだるく感じます。透析治療を始めると体調がよくなると思っていたのに、なぜでしょうか

川田川田

透析を始めたばかりの患者さんからは、よく同じようなご相談を受けます。透析に行った日と透析に行かない日では、体調の違いはありますか

Q者

透析治療を受けた日の方が、疲労感やだるさを感じます。翌日は少し回復するのですが、またその次の透析に行くとだるさが出るといった感じです

川田川田

それなら不均衡症候群による症状かもしれません

Q者

不均衡症候群とは、何ですか

川田川田

不均衡症候群は、透析を始めた頃に見られやすい代表的な合併症です

Q者

不均衡症候群は、どんな症状が起きるのですか

川田川田

頭痛、吐き気、嘔吐、脱力感、血圧低下、足のつりなどが、透析治療の最中や透析を終えて12時間以内に起きることが多いです

Q者

私も透析を受けている時に、頭痛や吐き気を感じたことがあります。なぜあのような症状が起きるのでしょうか

川田川田

血液透析は、患者さんの血液から老廃物を除去して血液をきれいにする治療法です。末期腎不全の患者さんの場合、老廃物は体中に溜まっているのですが、そのすべてが同じタイミングで除去されるわけではありません。透析を開始するとまず血液中の老廃物が除去されます。次に細胞の中に蓄積していた老廃物が細胞から外に出て血液中に入り除去されるという仕組みです。しかし細胞の中の老廃物が取り除かれるまでには時間がかかるので、『細胞の外の老廃物は除去されているが、細胞の中には老廃物が残っている』という状態が起きます。
これが特に起きやすいのが脳内なのです

Q者

どうして脳内では、細胞の中に老廃物が残りやすいのですか

川田川田

脳の毛細血管の壁は毒素の侵入を防ぐため、体の中の他の部分よりもバリア機能が強くなっているためです。ですから透析を行っても脳の細胞内の老廃物が血液中に移動するには時間がかかることになります

Q者

つまり脳の細胞の外側と内側で老廃物の濃度差できてしまうということですね

川田川田

濃度の差、つまり不均衡が起きると、濃度を均一にしようとして水分が脳の細胞内に移動し、一過性の脳浮腫を起こすことになります。これが不均衡症候群の起きる原因です

Q者

なるほど、これがだるさや疲労感を引き起こしていたのですね。では不均衡症候群は何か治療が必要なのでしょうか

川田川田

不均衡症候群は、特に治療を行うことはありません。体が透析に慣れていけば徐々に起きにくくなりますので、しばらく様子をみてください。もしなかなか症状が治まらないようなら、主治医やクリニックのスタッフに相談してください

Q者

では不均衡症候群を防ぐ方法はないでしょうか

川田川田

患者さんの体の中に除去しなければならないもの、つまり老廃物や余分な水分などが多いほど、不均衡症候群は起きやすくなります。ですから医師から指示されている食事制限や水分制限にしっかり取り組むことが、患者さんができる不均衡症候群の予防です。不均衡症候群は多くの患者さんが悩まれる症状なので、クリニックの方でも対策をしています。同じ患者さんに起こることが多いので、一回の透析量を少なくしたり、時間をかけてゆっくり透析をするなどの対応をしています。
また透析終了後ベッドでしばらく休んでいただいて、重い症状が出ないか確認してから帰宅していただくことも多いです

Q者

わかりました。食事や水分摂取についてはこれまで以上に気をつけるようにします

川田川田

1日おきに通院し、1回あたり4時間の治療を受けることだけでも、慣れるまでは疲れが出るものです。患者さんによっては、4時間ベッドにじっとしていること自体がお疲れの原因になる方もいらっしゃいます。透析療法のペースに慣れるまで、決して無理をせずしっかり休養を取るようにしてください

Q者

透析を始めた頃に起きやすい不均衡症候群についてはわかりました。では透析初期を過ぎてもだるさや疲労感が消えない時は、どのような理由が考えられるでしょうか

川田川田

貧血が進んでいる可能性があります。腎臓は、体内の老廃物をろ過して尿を作る以外にも大切な働きをしている臓器です。その1つが赤血球を作る作用を促すホルモンであるエリスロポエチンを分泌することです。透析療法は末期腎不全の患者さんの腎臓の働きを代行する治療法ですが、老廃物や余分な水分の除去は行えても、エリスロポエチンの働きを補うことはできません。そのため透析患者さんには貧血の方が多くみられます。

エリスロポエチンの不足による貧血を腎性貧血と言いますが、腎性貧血以外に鉄分が不足したことによって起きる鉄欠乏性貧血などを併発している方も少なくありません。腎性貧血の治療はエリスロポエチン製剤、鉄欠乏性貧血は鉄剤の投与を行います。しかし薬物治療を行っても貧血がなかなか改善しない時は、消化器などの病気で出血が起きている場合もありますので、注意が必要です

Q者

貧血の検査はクリニックで定期的に行っているので、異常があった場合は適切な対応が受けられると思います

川田川田

その他高齢の患者さんの場合は栄養状態が悪くなっていることもあります。食事制限に悩まれて、食欲が落ちてしまう患者さんもいらっしゃいます

Q者

私も塩分だけでなく、タンパク質やカリウム、リンなど、様々な食事制限があるので、何を食べたらいいのかわからなくなってしまうことがあります

川田川田

食事制限は大変ですが、透析で除去しなければならないものが増えるほど、透析治療による体の負担も増えるので、しっかり取り組むようにしてください。ルールを守りながら美味しく食べるコツや料理法などは、管理栄養士に相談しましょう。また食が細くなっている高齢の方の場合は、食事制限をするとさらに食事量が減ってしまう場合もあります。高齢の方の場合は、エネルギー不足は筋肉量や体力の低下を招き、寝たきりの原因につながってしまうこともあります。場合によっては食事制限よりも低栄養の改善が必要なこともありますので、ご家族も気をつけていてあげてください

Q者

だるさや疲労感の原因もいろいろあるのですね

川田川田

透析を始めたばかりの方は、疲れや体のだるさを訴えられる方も少なくありません。不均衡症候群はお辛いと思いますが、腎臓がほとんど機能しなくなった末期腎不全の患者さんは透析を行わないと命に関わります。体が透析に慣れてくるとだんだん起きなくなるので、症状が強い時は透析終了後ベッドで休むようにしてください。また透析を長期間続けていてもだるさや疲労感が続く場合は、貧血が進んでいたり、食事制限のため必要なエネルギーが摂れず、低栄養になっていることもあります。早めに主治医に相談しましょう。

透析自体どうしても多少は体力を使いながらの治療になります。体重増を気にされて透析直前の食事を抜いてしまう人をたまにみかけますが、欠食は体調不良の原因となります。たとえばおにぎり1個でもOKですので欠食しないようにしましょう。健常人であっても飲まず食わずでジョギングをしたら途中でたおれてしまいますね

まとめ

  • 透析初期の患者さんが感じる疲労感や体のだるさは、不均衡症候群という合併症が原因のことがあります。
  • 不均衡症候群は、脳内の細胞の外側と内側で老廃物の濃度差が生じることで起きます。
  • 透析に体が慣れると、不均衡症候群は徐々に起きにくくなります。
  • 透析初期を過ぎてもだるさや疲れが強い場合は貧血などが起きていることがあります。
  • 高齢の患者さんで食が細くなっている場合は、食事制限よりも低栄養の改善が必要なケースもあります。