人工透析が必要と言われると、高額な医療費がかかるのではないか、また働けなくなったら生活費はどうしたらいいのかなど、お金のことも不安になりますよね。そんな末期腎不全の患者さんが経済的な面で安心して治療を続けられるように、医療費を助成したり生活を支えたりする制度が整っています。

今回は透析患者さん達が利用できる社会制度についてご紹介します。制度を利用するためには、手続きが必要です。しっかり確認しておきましょう。

自己負担額を少なくできる医療費助成制度

1ヵ月の透析にかかる医療費は、血液透析で約40万円、腹膜透析で約35万~70万円と大変高額です。そのため、患者さんの負担を軽くするために公的な助成制度が整っています。

まず特定疾病療養受療証の利用で、自己負担額は月に1万~2万円程度に抑えることができます。さらに制度を組み合わせることで、自己負担額をほぼなくすこともできます。

①特定疾病療養受療証

透析治療が必要な末期腎不全は特定疾病に指定されているため、特定疾病療養受療証の交付を受けることができます。これは加入している健康保険組合から支給される医療費で、医療機関の窓口で払う毎月の自己負担額が1つの医療機関につき1万円に減額される制度です。

また70歳未満で国民健康保険の被保険者で基礎控除後の所得金額が600万円を超える方、健康保険の被保険者または被扶養者で療養のあった月の標準報酬月額が53万円以上の場合は、自己負担額の上限が2万円になります。

高齢の患者さんの場合は後期高齢者医療制度において、同様の助成を受けることができます。申請先は、加入している健康保険または後期高齢者医療制度の窓口です。

②地方自治体による助成制度

特定疾病療養受療証を使用した後の自己負担額について、地方自治体からさらに独自に助成を受けられる制度です。例えば東京都には、自己負担額の1万円を助成してくれる難病医療費助成制度があります。

助成の金額や内容は地方自治体によって異なり、難病見舞金等の交付や、通院にかかる交通費の助成、住民税の減免などを行っている自治体もあります。お住まいの自治体での助成制度については市町村の障害福祉課などに確認しておきましょう。

③身体障害者手帳

透析治療を受けている人だけでなく腎機能が一定レベルまで低下している慢性腎臓病の患者さんの場合は、重症度によって身体障害者1級、3級、4級の申請ができます。

身体障害者手帳が交付されると、等級と所得により他の病気やケガなどで医療機関を受診した時も医療費の助成を受けることができます。
その他タクシー券の配布などの福祉サービスも受けられますが、内容は各市区町村によって異なります。

身体障害者手帳の申請先は、自治体の障害福祉担当窓口です。申請の際には、都道府県知事が任命している指定医の診断書・意見書が必要になります。主治医が指定医ではないケースもあるので、注意してください。

④自立支援医療(更生医療・育成医療)

心身の障害を対象とした医療費について、自己負担額の軽減ができる公費負担医療制度です。視覚障害、聴覚障害、言語障害、肢体不自由、内部障害などの対象疾患が定められていて、人工透析は内部障害にあたります。自立支援医療により他の制度を利用した後の自己負担分について、さらに補助を受けることができます。

透析患者さんの場合は、年齢別に2つに分けられています。
18歳以上の患者さんは、更生医療を利用でき、お住まいの市区町村の福祉係で手続きを行います。
18歳未満の患者さんは、育成医療の対象となり、お住まいの地区を管轄する保健所で手続きが必要です。

透析患者さんの生活を支える制度

透析治療は週3回通院し、1回の治療には4~5時間かかります。時間的制約が多くなるため、これまでと同じように働くことができなくなることも少なくありません。

そこで透析患者さんの生活費を補助して、生活を支える制度も整っています。

①傷病手当金

社会保険に加入している会社員や公務員の方に健康保険から支払われる給付金です。病気やケガが原因で3日以上連続して仕事を休み、休業中に給与をもらっていない場合、給与の3分の2に相当する額が支給されます。支給期間は、最長1年6カ月までですなお国民健康保険にはこの制度はありません。

②障害年金

障害年金は公的年金から支給されるもので、病気やケガの影響で仕事が制限されている20歳以上65歳未満の方が受け取ることができます。障害年金の等級は身体障害者手帳の等級とは異なり、透析患者さんは基本的に2級の障害等級に分類されます。

初診日に国民年金に加入していた方には障害基礎年金、厚生年金に加入していた場合は障害基礎年金に加えて障害厚生年金が支払われます。障害年金の金額は等級によって決まっていて、2級は年額77万9300円です。子供の人数など家族構成より金額が加算されます。また障害年金を受給するためには、保険料の納付状態などの条件を満たすことが必要です。申請先は年金事務所です。

③生活保護

透析治療を受けていて働くことができなくなり、1年6ヵ月間の傷病手当金給付期間も終了した後は、生活保護を申請することができます。認定されると医療扶助の制度もあり、発行された医療券を医療機関で提示すれば、透析治療を含むすべての医療費が無料になります。その他生活費を支給する生活扶助や住居の維持や住居を支給する住宅扶助などが受けられます。申請先はお住まいの市町村区の福祉事務所です。

介護が必要になった時のための制度

介護保険を利用して介護サービスを受けられる方は、第1号被保険者と第2号保険者に分類されます。

第1号保険者とは、65歳以上の方です。ですから、65歳以上の透析患者さんは、介護保険を利用することができます。
第2号保険者とは40歳から64歳までの方で、指定の16疾病により介護認定を受けた場合、介護保険を利用して介護サービスを受けることができます。

糖尿病性腎症や骨折を伴う骨粗しょう症、脳血管疾患はこの16疾病に含まれています。つまり糖尿病性腎症が原因で透析に至った方や、透析療法の合併症で骨粗しょう症となり骨折した方や脳血管疾患を発症した方は40歳から介護保険を利用することが可能となります。主な介護サービスには、次のようなものがあります。自己負担額は、地域や介護度によって変わってきます。

訪問介護

資格を持ったヘルパーが患者さんの自宅を訪問して、買い物や料理、洗濯などの家事から入浴や排泄のケアまで日常生活のサポートを行うサービスです。透析クリニックに通院する時の乗車、降車の介助のサービスもあります。

訪問入浴介護

専門のスタッフによる入浴の介助を受けることができます。介護度が高い患者さんの場合は、専用の入浴設備を積んだ車が自宅を訪問して、入浴介助を行います。

訪問看護や訪問リハビリテーション

看護師や医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などに自宅を訪問してもらうサービスもあります。

福祉用具寄与や福祉用具購入

車いすや歩行器、介護ベッドなどの福祉用品は介護保険を利用してレンタルしたり購入したりすることができます。

住宅改修

手すりをつけるなどバリアフリー工事の費用の一部に介護保険を利用することができます。

透析患者さんには医療費の助成や生活費の補助、介護が必要になった場合のサポートなど、安心して治療を続けていただくための各種制度が整っています。申請方法は、それぞれ窓口が異なるので、ご家族も一緒に確認しておきましょう。

まとめ

  • 透析治療にかかる医療費は高額ですが、公的制度の利用で自己負担額は毎月1万~2万円になります。また複数の制度を組み合わせれば自己負担額がほとんどなくなることもあります。
  • 透析患者さんは、傷病手当、障害年金、生活保護など生活をサポートする制度も利用できます。
  • 65歳以上の方が利用できる介護保険も、糖尿病性腎症が原因で透析に至った方や、透析療法の合併症で骨粗しょう症となり骨折した方や脳血管疾患を発症した方は40歳から利用することが可能です。
  • 以上のような情報を熟知していて、行政(市役所等)との手続きの仕方や、どのようなサービスが受けられるのかといった相談に乗ってくれるプロが社会福祉士:ソーシャルワーカーとよばれている人たちです。最近では多くの医療施設にソーシャルワーカーの方がおりますので気軽に相談するようにしましょう。