透析患者さんは日常生活の中で心配なことがいくつかありますが、お風呂もその1つですね。入浴の際急激な血圧変化が起きて命に関わる重篤な病気につながることもあるので、特に高齢の透析患者さんは注意が必要です。
今回は透析患者さんやそのご家族が知っておきたいお風呂の入り方についてご紹介します。血液透析の患者さん、腹膜透析の患者さんそれぞれの注意点もどうぞご参考になさってください。

入浴中の体調悪化や不慮の事故を防ぐために

①温度差による血圧変化

お風呂での不慮の事故は、寒い季節に増えるという特徴があります。それは寒い脱衣所や浴室と、浴槽のお湯との温度差が大きいと、急激に血圧や脈拍数が上昇し血管に大きな負担がかかるためです。

さらに、冷えた体で熱いお湯につかった場合、入浴後数分で血管が収縮し血圧が急上昇することになります。最悪の場合、動脈硬化が進んでいる透析患者さんは血管が破れて脳出血を起こしたり、心臓に負担がかかり心筋梗塞などにつながることがあるので注意が必要です。

入浴時の急激な血圧変化を防ぐためには、事前に脱衣所や浴室内を暖めておく、お湯の温度は41℃以下のぬるめにする、長湯は避けるなど気を配ってください。また透析患者さんが入浴している時はご家族がまめに声かけをするように心がけましょう。一般的には夜間での入浴が多いと思いますが、状況が許せばむしろ午後2時~3時頃の比較的気温が安定しているタイミングでの入浴がより安全といえましょう。

②転倒

入浴直後は血圧が上昇しますが、そのままお湯につかっていると今度は血管が拡張して徐々に血圧が下がってきます。そのため浴槽から出るとめまいや立ちくらみなどが起きることがあります。
この時、転倒して頭を打ったり、骨折したりという事故につながることがあるので、気をつけてください。お湯から出る時は手すりなどにつかまるようにすると安心です。

③血糖値の低下

入浴は思った以上にカロリーの消費が多いものです。あまりにも 空腹で入浴すると 血糖値が下がってしまいます。 よく 宿泊する宿で部屋に お茶とお茶菓子が用意されていますが これは おもてなしの意味だけでなく 血糖値が下がらないように 入浴前に糖分を補充してもらう意味もあります。ですから 糖尿病で治療されている方は 低血糖症状が起こらないように 十分気をつける必要があります。

血液透析患者さんの入浴の注意

血液透析を行っている患者さんの場合は、透析をした日の入浴は避けてください。透析治療を受けた日は血圧が低下していることが多いので、入浴によってさらに血圧が不安定になり血管に負担がかかったり、めまいなどを起こすことがあります。

また血圧透析で使う針は通常の注射針より太いため、透析を受けた日に入浴するとシャント部分の針の孔から雑菌が入り、感染を起こしたり出血したりする可能性があります。どうしても入浴したい場合は湯船につからず、シャント部分をぬらさないように気をつけてシャワーだけを使うようにしましょう。

腹膜透析患者さんの入浴の注意

腹膜透析患者さんの場合は、下腹部の腹壁に穴をあけ、透析液を出し入れするためのカテーテルという柔らかいチューブをお腹の中に埋めこみ、カフという固定具で皮膚に固定してあります。ですから入浴の際にはこのカテーテルの出入り口部をどうするかということが問題になります。この出入り口の皮膚は内側にむかって凹みができているため、入浴で細菌感染を起こさないように注意することが必要です。
腹膜透析患者さんが入浴する時は、出入り口を保護するクローズド法と保護しないオープン法があります。

クローズド法

水を通さない専用の粘着フィルムや粘着剤のついた袋で出入り口部をおおって入浴する方法です。まず体や髪を洗ってから浴槽に入り、最後にシャワーを浴びてから浴室を出ます。その後水滴が入らないようによく体を拭いてから、出入り口を保護していたフィルムをはずしてください。

オープン法

出入り口部にカバーなどをはらずに入浴する方法です。カテーテル挿入手術後2~3カ月経って出入り口の状態に異常がなければ、オープン法で入浴することもできます。この方法で入浴する時は、感染を防ぐために家族の中で1番先に入浴するようにしてください。また浴槽には、殺菌効果のある洗浄剤を使うと、さらに安心です。体と髪を洗った後に、弱酸性の液体石鹸を泡立て、指の腹を使って出入り口部やそのまわりをやさしく洗ってください。その後シャワーで石鹸を洗い流し、清潔なタオルを使って出入り口の水分をふきとります。

温泉、公衆浴場、サウナでの注意

①温泉

透析治療を受けている患者さんも、体調が安定している時なら、温泉旅行などに行くことは問題ありません。ただしあまり長湯をするのは血圧の変動が激しくなることがあるので避けてください。血液透析の患者さん、腹膜透析の患者さんそれぞれに注意点があります。

血液透析の患者さんの場合

血液透析をした後は入浴しないのが原則です。ほとんどの患者さんは血液透析を1日おきに行っていますから、一泊二日で温泉旅行に出かける場合は、血液透析を受けた次の日に旅行に出発しましょう。そして、その日の夜は宿で温泉に入ります。

翌朝、もう一度温泉に入りたかったら朝湯に入ってから帰宅し、予定通り血液透析治療を受けます。これなら、シャント部分からの感染を心配することなく、温泉を楽しむことができます。

腹膜透析の患者さんの場合

温泉旅館やホテルの大浴場は雑菌が多いので、カテーテルの出入り口からの感染のリスクがあります。
部屋についている内風呂を利用するようにしてください。

②公衆浴場

血液透析の患者さんは、透析治療を受けた日以外なら銭湯などの公衆浴場を利用することは問題ありません。腹膜透析の患者さんはカテーテルの出入り口からの感染を防ぐため、公衆浴場を利用することは避けてください。

③サウナ

高温のサウナで汗をかいてから水風呂に入る行動は、血圧が急激に変動するので、血管や心臓に大きな負担がかかります。透析患者さんは心臓の機能が弱っていたり動脈硬化が進んでいる方が多いので、サウナは控えてください。

「サウナで汗をかくのは体内の余分な水分を除去できるからいいのではないか」とおっしゃる患者さんもいらっしゃいますが、透析患者さんは汗腺の働きが衰え汗が出にくくなっていることがほとんどです。そのような方が汗をかくまで熱いサウナで無理に過ごすのは大変危険で、心血管系疾患のリスクも高めてしまいます。サウナ併設の入浴施設に行った場合もサウナは利用しないようにしましょう。

透析患者さんが入浴で注意しなければならないのは、急激な血圧の変化と転倒、そしてシャントやカテーテルの出入り口からの感染です。お風呂のお湯を溜めおきしておいて沸かしなおすという形をとると、まれにレジオネラという厄介な感染症を起こすこともあります。浴槽およびお風呂場の清潔管理も大切です。安全な入浴ができるように、患者さんご本人はもちろんご家族も気をつけてあげてください。

まとめ

  • お風呂での急激な温度変化は、血圧の急上昇を招きます。動脈硬化が進んでいる透析患者さんは心血管系疾患の原因になることがあるので注意が必要です。
  • お風呂での不慮の事故が増えるのは寒い季節なので、事前に脱衣所や浴室内を暖めておくなどの工夫でお湯との温度差を少なくしましょう。
  • 透析患者さんがお風呂に入っている時は、ご家族がまめに声かけをしてあげてください。
  • 血液透析の患者さんの場合は、血液透析を受けた日はシャント部分からの感染を防ぐため、入浴は控えましょう。
  • 腹膜透析の患者さんの入浴法には、カテーテルの出入り口を専用のフィルムなどでおおうクローズド法と、おおわずに入るオープン法があります。オープン法の場合は一番湯に入るなど感染を防ぐ工夫が必要です。
  • 透析患者さんも体調が安定している時なら温泉に入るのは問題ありません。ただし血液透析の患者さんは透析を受けた日を避けてください。腹膜透析の患者さんは大浴場は避け、内湯を使いましょう。