人工透析を始めると合併症が起きやすくなる、と聞くと心配になりますよね。
機能が低下した腎臓の働きを代行して、末期腎不全の患者さんの命を守るために欠かせない透析療法ですが、完全に腎臓の働きを補えるわけではないので、どうしても別の病気を併発する合併症が起きやすくなります。中には、命に関わる合併症もあるので注意が必要です。
人工透析の合併症には、透析を始めたばかりの時に体が透析に慣れていないために起きるものと、透析療法が長期間になるほど起こりやすいものがあります。
また2種類の透析療法、血液透析と腹膜透析、それぞれに起きやすい合併症もあります。
安心して人工透析を受けていただくためにも、どんな合併症があるのか、またその対処法など、ご紹介させていただきますね。

甚五郎甚五郎

ビー・ビー(ナースコールの音)


高瀬高瀬

はい。どなたですか!?…なんだ、また甚五郎さんですか。


甚五郎甚五郎

ヒマだから相手をしなさい。


高瀬高瀬

透析の時間は自分で有効に使えばどんなことだってできるんです。本を読んでも映画を観ても、勉強をしてもいい。なのにヒマを持て余すなんて…(ワナワナ)


甚五郎甚五郎

そんなに目くじらを立てるな。くだらない雑談をするために呼んだんじゃない、合併症について教えてほしくて。


高瀬高瀬

え! もしかして何かの自覚症状がありますか!?大変だ、早く検査をしないと!


甚五郎甚五郎

いやいや、慌てなさんな。今後の参考にアンタの話を聞いておきたいだけじゃ。


高瀬高瀬

なんだ、ビックリさせないでくださいよ。合併症は十分注意しないといけないんですから。そもそも合併症というのは…


甚五郎甚五郎

(よしよし勝手に説明を始めたぞ)

なぜ起きる?人工透析の合併症

機能が衰えた腎臓の働きを代行するのが透析療法ですが、健康な腎臓が行っている仕事をすべて果たせるわけではありません。
腎臓の仕事は大きく分けると3つ。
①体内の老廃物を寄り分けて血液をきれいにする
②体内の水分量と老廃物を調節する
③ホルモンを作ったり骨を丈夫にしたりする
透析療法はこの①と②の仕事はしますが、③の仕事はできません。
また①と②も完全にできるわけではありません。
そのため除去しきれなかった老廃物などで心臓に負担がかかることになり、心不全などの合併症が起きやすくなるのです。

血液透析を始めた頃に起きる不均衡症候群

不均衡症候群は、体内に溜まった老廃物が一気に除去されることで、特に透析1回目の患者さんに起こりやすい合併症です。
透析導入直前の患者さんは、尿素などの尿毒症物質が体全体に蓄積された状態です。
血液透析を始めると、血液中の尿毒素が急速に除去され、血液以外の細胞にたまっていた尿毒素は血中へと移動を始めます。逆に、水は細胞に移ります。そのため、細胞に水が溜まってむくみが起こりやすくなるのです。
脳内は老廃物が除去されるにはさらに時間がかかるため、血液と脳細胞の間に老廃物の濃度差が発生。
そのため一過性の脳浮腫を起こしてしまい、頭痛や吐き気、嘔吐、倦怠感、下肢のけいれんなどが起きることがあります。
最初は驚く方が多い合併症ですが、体が透析に慣れてくると起こりにくくなります。

透析の期間が長くなると起きやすくなる6種の主な合併症

透析を長く続けていると発症しやすくなる代表的な合併症をご紹介します。

①心血管系疾患

血液透析を始めると尿がほとんど出なくなるため、体内に水分が溜まりやすくなります。
腹膜透析の場合も、尿の量は減ります。
そのため心臓への負担が増え、心不全、心筋梗塞、狭心症、不整脈、脳梗塞など、命に関わる重篤な病気を発症しやすくなります。
対策は、水分や水分を溜めやすくする塩分の量を厳しく制限すること。
また血液中に増えた老廃物が血管を傷つけるため、動脈硬化が進行しやすくなります。
動脈硬化も心筋梗塞や脳梗塞など危険な病気につながるので要注意です。

②貧血

慢性腎臓病の患者さんのほとんどに起きるのが貧血で、腎性貧血と呼ばれます。
主な原因は、腎臓が分泌する造血ホルモン『エリスロポエチン』が不足することと、血液中の老廃物のために赤血球の寿命が短くなることです。
貧血になると、動悸や息切れ、疲れやすいなどの症状が出てきます。
腎性貧血は、鉄欠乏性貧血のように鉄剤の投与だけでは治療できません。

③透析アミロイド症

透析療法を長く続けていると、骨や関節の痛み、手指のしびれなどの症状が出てくる方が多いです。
これはアミロイドというたんぱく質の一種が、全身の骨や関節、内臓などに蓄積することが原因で起きる透析アミロイド症という合併症です。
アミロイドを積極的に除去する血液透析や、ステロイド投与などの対策があります。
手指の症状が重い場合は手術が必要になることもあります。

④ミネラル代謝異常

骨の新陳代謝が正常に行われなくなることで、骨がもろくなるなど様々な合併症を引き起こします。
原因はリンの排出低下により血液中のカルシウム濃度が低下することで、骨からカルシウムを分解する副甲状腺ホルモンを分泌して血液中のカルシウム濃度を補おうするため。次第に血液中のカルシウムが増えていても副甲状腺ホルモンが分泌され続けるようになり、骨密度が低下するのです。

⑤感染症

慢性腎不全の方は元々免疫力が低下しているため感染症にかかりやすい上に、シャント部の感染や尿路感染症なども発症しやすくなります。
また尿毒素が皮膚に沈着してかゆみが起きるケースもあります。

⑥悪性腫瘍

免疫力が低下しているので、長期間透析療法を受けている方は悪性腫瘍の発生率が高くなっています。

 

これらの合併症にいち早く対処するためにも、定期的な検査で自分の体の状態を把握しておくことはとても重要な対策になります。

透析療法を始めると様々な合併症を発症しやすくなります。
しかし腎臓の機能が低下した患者さんの命とQOLを守るために、人工透析はなくてはならない治療法。
合併症とうまく付き合っていくことも末期腎不全の患者さんにとっては大切です。

甚五郎甚五郎

不均衡症候群か、ワシも経験したよ


高瀬高瀬

最初はゆっくり透析することで、発症を防ぐこともできるんですが、それでもかかる人はかかりますからね。ところで今は心配なことはありますか?


甚五郎甚五郎

今の話が難しくて覚えられたか心配じゃな。もう一度話してもらえんか?


高瀬高瀬

嫌ですよ! こちらに簡単にまとめておきましたから、それだけ押さえておいてください。


甚五郎甚五郎

いつも親切でありがとう。それじゃ、また聞きたいことがあったら呼ぶわい。


高瀬高瀬

何か異常があった時だけ呼んでください。

まとめ

  • 人工透析の合併症には、透析を始めたばかりの頃に起こりやすいものと、透析期間が長くなるほど起きやすいものがあります。
  • 透析アミロイド症で手指の症状が重い場合は手術が必要になることもあります。
  • 透析が長期間になると除去しきれなかった老廃物などが原因で様々な合併症が起きやすくなるので、定期的な検査と早めの対処が重要です。
  • 合併症の中でも心血管系疾患は透析患者の死因で上位となりますので、特に注意が必要です。