糖尿病だと腎臓も悪くなるという話を聞くと、健康診断で血糖値の異常を指摘された方は不安になりますよね。
事実、糖尿病が原因で発症する糖尿病性腎症は、透析療法導入の原因疾患の約4割と大変多いです。(日本透析医学会『わが国の慢性透析療法の現況』よりhttp://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2017/p011.pdf
日本の透析患者数は年々増加し33万人に達しようとしていますが、その最大の原因は糖尿病性腎症の患者さんの増加です。(日本透析医学会『わが国の慢性透析療法の現況』よりhttp://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2017/p003.pdf
今回は糖尿病性腎症について詳しくご紹介しますので、糖尿病が気になる方やそのご家族はどうぞご参考になさってください。

糖尿病性腎症とは

糖尿病性腎症は、糖尿病の合併症の1つで糖尿病の増加とともに増えている病気です。
私達が摂取した食べ物は、消化吸収されて最終的にはブドウ糖に分解されます。
ブドウ糖は大切なエネルギー源で、膵臓から分泌されるインスリンの作用で筋肉などに取り込まれて利用されます。
しかしインスリンの分泌が減ったり働きが悪くなると、ブドウ糖は利用されることなく血液中に過剰にある状態、つまり高血糖になります。
これが糖尿病です。
糖尿病発症後10年ほどすると、腎機能が低下する糖尿病性腎症になります。
糖尿病性腎症は、末期腎不全となって人工透析が必要になることが多い病気です。
また免疫力が低下するため感染症にもかかりやすくなり、心臓病や脳卒中、脳梗塞など命に関わる疾患を引き起こすリスクも高くなります。

原因は糖尿病による血管障害

糖尿病で血液中のブドウ糖の量が過剰な状態が続くと、全身の血管に動脈硬化が起き、臓器への血流が不十分になったり血管がもろくなったりとさまざまな障害が起きます。
腎臓は体の中でも最も多くの血管が集まっている血管のかたまりのような臓器なので、その影響を大きく受けることになります。
まずろ過機能を担っている糸球体の毛細血管の壁が厚く硬くなります。
加えて糸球体の構造を支えているメサンギウムという部分が肥大化し血管を押しつぶします。
その結果糸球体の構造が壊れ、血液をろ過する機能の障害が引き起こされてしまうのです。
これが糖尿病性腎症と呼ばれる状態です。

糖尿病性腎症の症状は?

糖尿病性腎症は初期の段階では自覚症状がなく、タンパク尿も検出されないので、発見が遅れがちな病気です。
むくみや全身倦怠感、喉の渇きなどの症状が出てくる頃にはかなり症状が進んでいて、その後腎機能が急激に低下して末期腎不全に至り透析療法が必要になるという経過をたどる患者さんが少なくありません。
では糖尿病腎症を早期発見するためにはどうしたらいいのでしょうか。
通常の検査では陽性にならない程度のごくわずかなタンパク質でも検出できる「微量アルブミン検査」という検査があります。
アルブミンはタンパク質を構成している小さなタンパク質の1つで、尿中に20~30mg含まれていると陽性反応を示します。
一般的な健康診断では微量アルブミン検査は行わないので、糖尿病と診断されている方や疑いがある方は、この検査を3カ月~半年に1度は受けておきましょう。
糖尿病性腎症は早期に発見してしっかり血糖値のコントロールをしていけば、進行を抑え透析導入を防いだり遅らせることができます。

糖尿病性腎症の治療は食事療法が重要

糖尿病性腎症の治療方法は、病期によって異なりますが、まず原因疾患である糖尿病の治療を優先します。
高血糖や高血圧など、腎臓に負担をかけ、弱らせる要因は取り除いておく必要があります。
食事療法や生活の改善に加え薬物療法を行いますが、糖尿病性腎症の進行を防ぐためには食事療法がとても重要です。
糖尿病が原因で発症した糖尿病性腎症は、長年にわたる食習慣の影響が大きく関係している病気です。
「血糖値の上昇を押さえたり腎臓に負担のかけるものを余計に食べない」という目的で、しっかりと食事療法に取り組んでください。

糖尿病性腎症の病期分類

糖尿病性腎症は進行度に合わせて5段階の病期に分類され、それぞれの病期に合わせて対応が異なります。
第1期から第3期までの進行するスピードはゆっくりで、およそ10年から20年かかります。
しかし第3期に入ると腎機能は急速に悪化し、平均数年で第4期、第5期となり、透析療法が必要になります。
ですから糖尿病性腎症は第2期までに発見して適切な対応を始めることが非常に大切です。

①第1期(腎症前期)

タンパク尿もアルブミン尿もなく、腎臓の働き具合を表すeGFRも正常です。eGFRとは推定糸球体濾過量のことで、腎臓がどの程度の老廃物を尿へ排泄できるかを示した数値となっており、低いほど腎臓の働きが悪くなっていることを示します。
自覚症状もありませんが、この段階からしっかりと血糖コントロールをする必要があります。
合併症予防のための血糖コントロールの目標はHbA1c7.0未満です。
HbA1cとは、1~2カ月間の平均的な血糖の状態を示す値です。
また血糖値の正常化を目指す上での目標はHbA1c6.0未満、低血糖などの理由で治療強化が困難な際の目標はHbA1c8.0未満となっています。
自分の場合はどの数値を目標にするべきか主治医の指示に従いましょう。
血圧は1日中正常血圧が保てるようにコントロールし、必要に応じて降圧薬を使用します。
食事の基本は糖尿病食です。

エネルギー   標準体重1㎏あたり25~30kcal
タンパク質   過剰摂取しないように気をつけます。
塩分      高血圧が見られるときは6g以下 
カリウム    制限なし

②第2期(早期腎症期)

微量アルブミン尿が現れ始めます。
eGFRにも大きな変化はありませんが、より厳格な血糖コントロールが必要になります。
高血圧の治療も引き続き行います。
食事療法ではタンパク質の摂取制限を始めます。

エネルギー   標準体重1㎏あたり25~30kcal
タンパク質   標準体重1kgあたり1.0~1.2g 
塩分      高血圧が見られるときは6g以下 
カリウム    制限なし

③第3期(顕性腎症期)

タンパク尿が陽性になり、eGFRの低下が始まります。
むくみ、息切れ、胸苦しさ、食欲不振、満腹感などの自覚症状が現れます。
むくみや心不全の有無により、水分制限が加わります。

エネルギー   標準体重1㎏あたり25~35kcal
タンパク質   標準体重1kgあたり0.8~1.0g 
塩分      7~8g
カリウム    制限なし~軽度制限

④第4期(腎不全期)

タンパク尿が続き、eGFRは大きく低下します。
顔色が悪い、易疲労感、吐き気、嘔吐、筋肉の強直、筋肉や骨の痛み、手のしびれや痛み、腹痛、発熱などの自覚症状が現れます。
タンパク質制限が厳しくなり、カリウムの制限も始まります。
透析療法を検討します。

エネルギー   標準体重1㎏あたり30~35kcal
タンパク質   標準体重1kgあたり0.6~0.8g 
塩分      5~7g
カリウム    1.5g以下

⑤第5期(透析療法期)

腎機能はほぼ失われ末期腎不全となります。
人工透析が必要になります。

糖尿病が原因で発症する糖尿病性腎症は、対応が遅れると透析療法が必要な末期腎不全まで進行することが多い疾患です。
血糖値が上がり過ぎないように主治医の指示に従いコントールして、発症と進行を防ぎましょう。

まとめ

  • 透析療法に至る原因疾患で最も割合が多いのは、糖尿病性腎症です。
  • 糖尿病性腎症は糖尿病の合併症の1つで、患者さんの数は年々増加しています。
  • 高血糖の状態が続くと、糸球体の毛細血管に障害が起こり、腎機能が低下します。
  • 糖尿病腎症と診断されたら、食事療法で血糖値をコントロールします。必要に応じて薬物療法も行います。
  • 糖尿病性腎症は5段階の病期に分類されます。第3期を過ぎると進行が早くなるので、第1期、第2期のうちに早期発見して対応を始めることが大切です。
  • 糖尿病性腎症を早期発見するためには、微量アルブミン検査が有効です。