Q者

透析療法を始めてから、慢性的な便秘に悩まされています。他の透析患者さんも同じなのでしょうか


川田川田

はい。便秘で困っている透析患者さんは非常に多くいらっしゃいます。患者さんから便秘の悩みを相談されることも多いです


Q者

なぜ透析療法を始めると便秘になるのでしょうか


川田川田

原因はいくつかあるのですが、まず便秘を引き起こす最も大きな要因は体内の水分不足です。透析患者さんは、心臓や肺、血管などの負担を防ぐために水分摂取を厳しく制限されていますよね?


Q者

はい。飲み物と食べ物を合わせて1日2000ml以下になるように言われています


川田川田

透析患者さんは、体内に過剰な水分が溜まると心不全など命に関わる合併症が起きやすくなるので、水分制限は大変重要です。健康な人の便は約80%が水分なのですが、透析患者さんの便には含まれる水分が少なくなり、そのため便が硬くなってしまうことが便秘の原因の1つです


Q者

確かに透析療法を始めてから便が硬くなったと感じます


川田川田

それからカリウム制限のため、野菜類や芋類、海藻類などを充分に摂れず、食物繊維が不足することも便秘の原因になります


Q者

そうですね。野菜はカリウムの量が多いのであまり食べられないんです。ですからどうしても野菜不足になってしまいます。以前は便秘がちな時は食物繊維が多いさつまいもやかぼちゃを食べると自然な排便ができたのですが、さつまいもやかぼちゃは特にカリウムの量が多い食材なので控えるように言われています


川田川田

腸内環境を整え、便のかさを増やす食物繊維は便秘予防には欠かせない成分なのですが、食物繊維の多い野菜はカリウムも多いので透析患者さんは摂りにくいのです


Q者

飲んでいる薬の影響はどうでしょうか


川田川田

透析患者さんに処方されることが多いカリウムを下げる薬やリンを下げる薬は、水分を吸収して便を硬くするので便秘の原因になることがあります。また、透析患者さんには動脈硬化が進むためにコレステロールを下げる薬を処方されることも多いのですが、この薬も便秘の原因につながることがあります


Q者

なるほど。透析患者は便秘の原因になる要因をいくつも抱えているんですね


川田川田

その他にも原因があります。例えば透析療法に至る原因疾患の中で最も多いものは糖尿病ですが、糖尿病の合併症には自律神経障害があります。大腸が自然に便を送り出す働きは自律神経によってコントロールされているため、糖尿病になると大腸の働きが悪くなり便秘になりやすくなります。ですから糖尿病がもとで糖尿病腎症になり、その後慢性腎臓病が進行して透析療法を受けることになった患者さんは、ますます便秘になりやすくなるというわけなのです


Q者

私も糖尿病が原因で腎臓が悪くなったので、よくわかります


川田川田

また高齢の患者さんの場合はもともと大腸の働きが弱くなっているので、透析導入でますます便秘になりやすいですね


Q者

透析患者が便秘になりやすい原因についてはよくわかりました。では改善するためにはどうしたらいいでしょうか


川田川田

ひと口に便秘と言っても特徴には個人差があり、それによって原因や対策も違います。例えば便が硬い人や、コロコロとしたウサギの糞のような便が出る人は、水分不足が主な原因と考えられます


Q者

私はそのタイプです!


川田川田

水分不足で便秘になっていても、水分摂取を増やすのは厳禁です。尿が出なくなった末期腎不全の患者さんは、気をつけていても透析と次の透析の間には体内に水分が溜まりやすくなるので、水分制限は必ず守らなければなりませんよね。でも、1日に水分摂取量の合計を変えなければいいので、例えばこんな方法もあります。朝100~150ml程の冷たい水を一気に飲んで腸を刺激して、その後トイレに行く習慣を作りましょう。朝飲んだ水の分は1日の合計の中で調整するようにしてください


Q者

朝、冷たい水を一気に飲むのは効果がありそうですね。早速明日の朝からやってみます


川田川田

それから便の量が少ない人は、野菜不足や、全体の食事量が少ないことが考えられます


Q者

カリウム摂取量を増やさずに、野菜を摂る方法はありませんか


川田川田

調理の工夫でカリウムを減らせば、野菜の摂取量を増やせます。


Q者

調理の工夫は、具体的にはどんなことをしたらいいでしょうか


川田川田

カリウムには、水に溶けやすいという性質があります。下ゆでしたり、水にさらすなど調理にひと手間加えて、カリウムの量を減らすことができます


Q者

アクの強い野菜なら、下ゆでや水にさらすことでアクも取り除かれて美味しくなるので、一石二鳥ですね


川田川田

野菜を炒めたり、煮たり、揚げたりする調理の前は、食材を切った後たっぷりの水で下ゆでしてください。ほうれん草やキャベツなどの葉物野菜はゆでた後、水にさらしましょう。またサラダなど生で食べる場合は、たっぷりの水を入れたボールに切った野菜を入れて、10分以上そのままおきます。その後ざるにあげて水気を切ってください


Q者

そうした工夫で、野菜のカリウムを減らすことができるんですね


川田川田

それから野菜を切る時にはできるだけ細かく切るようにしましょう。細かく切ることで野菜の表面積が増えるので、下ゆでしたり水にさらした時にカリウムが溶け出しやすくなります


Q者

その方法ならこれまでより野菜をたくさん食べられそうです!


川田川田

また腸内に溜まった便をスムーズに押し出すためには、腹筋の力が必要です。運動不足が続くと腹筋が弱って便秘の原因になるので気をつけましょう。運動不足は、便秘だけでなく体力の衰えや動脈硬化の進行、骨粗しょう症などにもつながるので、透析患者さんも自分の状態に合わせて適度な運動を続けていくことが大切です。お腹を『のの字』にさすってマッサージしたり、『イモ虫ゴロゴロ』といった簡単な体操でも意外と効果がでることがあります


Q者

便秘を解消するための工夫もいろいろあるのですね


川田川田

それでも改善されず便秘が続くようなら、医師に相談しましょう。自己判断で市販の便秘薬を飲むのはやめてくださいね。市販の薬には腎臓に負担となる成分が入っていることがあるので注意してください


Q者

自分の体調に合わせた便秘薬を処方してもらった方が安心なのでそうします。薬ではなくサプリメントはどうでしょうか。食物繊維をたくさん含んでいるものや乳酸菌を含んでいるものなど便秘対策のサプリメントはたくさん売られていますが、透析患者が飲んでも大丈夫でしょうか


川田川田

サプリメントは透析患者さんが控えなければいけないリンやカリウムを含んでいるものがあるので、注意が必要です。必ず医師に相談してから飲むようにしてくださいね


Q者

そうですか!聞いてよかったです。腸内環境をよくして便秘を改善するというサプリメントを試そうと思っていたので


川田川田

便秘は透析患者さんにとってとても気になる悩みだと思いますが、透析治療や腎臓に悪影響を与えずに改善する方法を医師と相談して、見つけるようにしてくださいね。
人間は社会的動物ですから、お通じが出ると困るタイミングでトイレに行きたくなることがあります。これが下剤を飲むのをためらってしまう原因になることもあります。しかしお通じも本来は体の外へ捨てるべきものなので自分なりの下剤の飲み方を身に付けるようにしていってください

まとめ

  • 慢性的な便秘は、多くの透析患者さんが抱える悩みです。
  • 便秘の主な原因は、水分摂取の制限、カリウム制限による野菜不足(食物繊維不足)です。
  • 糖尿病腎症がもとで末期腎不全になった方は、糖尿病の合併症による自律神経障害が便秘の原因になっていることもあります。
  • カリウムを減らす調理の工夫をすることで、野菜をたくさん摂取し食物繊維不足を解消することができます。
  • サプリメントはリンやカリウムを多く含むものがあるので、医師に相談の上で飲むようにしましょう。
  • 便秘が長く続く時は、医師に相談して便秘薬を処方してもらいましょう。