慢性腎臓病の患者さんは、合併しやすい心血管疾患についての正しい知識も持っておきたいですよね。
腎臓の悪い方が発症しやすいうっ血性心不全とは、心臓の働きが低下したため血液を全身に送り出し循環させることができなくなった状態のことをいいます。
今回はうっ血性心不全についてご紹介します。

うっ血性心不全とは

心不全には、急速に心臓の機能が低下する急性心不全と心臓の機能が徐々に低下していく慢性心不全があります。
うっ血性心不全は慢性の心不全で、うっ血とは血液が停滞している状態です。
つまりうっ血性心不全とは、心臓のポンプ機能が低下したことで慢性的に血液の流れが悪くなっている状態のことをいいます。

うっ血性心不全の原因

うっ血性心不全は様々な原因から発症しますが、特に透析患者さんや慢性腎臓病の患者さんに見られるものについてご紹介します。

①透析患者さんの過剰な水分

透析患者さんが亡くなる原因の1位が心不全であるように、心不全は最も注意しなければいけない大変危険な病気です。
つまり腎臓そのものが原因で亡くなるというより、むしろ心臓が悪くなって亡くなってしまうかたの方が多いということです。
心不全の中でも慢性的に経過するもので最も多いのは、このうっ血性心不全です。
そして透析患者さんがうっ血性心不全になる主な原因は、体内に溜まった過剰な水分です。
では、なぜ水分が溜まると心臓に影響が出るのでしょうか。
人間の体の約60%は水分でできていて、その約40%が細胞の中に含まれる水分、約20%が細胞の外に存在している水分です。
血液は細胞の外にある水分の約4分の1で、つまり体重の約5%が血液の量になります。
ですから例えば体重が50kgの人の場合なら、体内の総水分量は30Lで、血液は2.5Lです。
食品や飲み物から水分を取った場合、健康な人なら余分な水分は尿として排せつされるため、体内の水分量も血液量も大きく変わることはありません。
しかし尿が出なくなっている透析患者さんの場合は、例えば体内の水分量が3L増えた場合、総水分量は33Lになり、血液は2.75Lと、2、5Lと比べると10%増えることになります。
そうすると心臓が送り出さなければならない血液量も10%増え、心臓の仕事量が増え、大きな負担がかかることになります。
透析と透析の間には体内に水分が溜まり続けるため、仕事量が増えた心臓の筋肉はゴムのように伸びきってしまい、心機能が低下してしまいます。
その結果、心臓が血液を送り出す力が衰え、血流が悪くなるうっ血が起こるというわけなのです。
透析患者さんに厳しい水分制限がある主な理由の1つは、心臓の負担をできるだけ減らし、うっ血性心不全を防ぐためです。
また塩分も体内に水分を溜めこむ原因となるので、塩分制限もしっかり守りましょう。

②虚血性心疾患

心臓へ送られる血液量が減少する虚血性心疾患があると、心臓は正常に全身に血液を送り出すことができなくなるため、うっ血性心不全を起こしやすくなります。
慢性腎臓病の患者さんは、冠動脈の動脈硬化や左室拡大、大動脈の硬化などにより虚血性心疾患を発症しやすいため、うっ血性心不全を合併する確率も高くなります。

③大動脈弁狭窄症

左心室から大動脈に血液を送り出す大動脈弁の開きが悪くなる大動脈弁狭窄症も、うっ血性心不全に至りやすくなる病気です。
大動脈弁の石灰化が起きやすい慢性腎臓病の患者さんは、うっ血性心不全にも注意する必要があります。

うっ血性心不全の症状

うっ血性心不全では心臓の働きが低下して全身に送られる血液が不足するため、全身に様々な症状が現れてきます。

①呼吸器症状

左心室から充分に血液が送り出されなくなるため、肺静脈から左心房、左心房から左心室への血流は滞ります。
しかし右心室から肺動脈を通って肺へと流れこむ血液量は変わりません。
その結果、肺に血液が溜まることになり、この状態を肺うっ血といいます。
肺うっ血が起きると、血液中から二酸化炭素を取り除いて酸素を供給するという肺の大事な働きが正常に行えなくなるので、息切れや呼吸困難が起きてきます。
この時の特徴的な症状が、起座呼吸です。
起座呼吸とは体を横たえると呼吸困難が悪化し、上半身を起こして座っていると症状が軽くなるというものです。
これは横になると全身から血液が心臓に戻りやすくなり、その結果肺うっ血が増強し呼吸しにくくなるためです。 座ると戻ってくる血液の量がすくなくなり呼吸が楽になるため、起座をとろうとします。
肺うっ血がさらに進むと、血液があふれだし、肺全体が水浸しの状態になる肺水腫になります。
肺水腫になると呼吸が十分にできなくなり、息苦しさや血痰などの症状も増えてきます。
重症になると生命の危険を伴うので、すぐに治療を受けてください。

②全身症状

顔色が青白くなり、全身の皮膚が白っぽくなります。
進行すると皮膚や粘膜が青紫色になるチアノーゼも現れます。
また全身の筋肉や臓器に送られる酸素や栄養が不足するため、疲れやすく、倦怠感も強くなります。
胃腸などの消化器の働きも低下するので、食欲も減退します。
さらに心臓は酸素を供給しようとして拍動を増やすため、心拍数の増加により動悸を感じるようになります。

慢性腎臓病の患者さんのうっ血性心不全の治療

慢性腎臓病の患者さんのうっ血性心不全の治療は、主に薬物療法で行います。

①ACE阻害薬、ARB

うっ血性心不全に最もよく使われる薬です。
血管を拡張して血圧の上昇を防ぎ、心臓の負担を減らして心不全を改善する働きがあります。

②β遮断薬

交感神経の働きを抑制する薬です。
心臓の働きを減らし、心臓の負担を減らします。
心機能を改善する効果もあります。

③利尿薬

体内の過剰な水分やナトリウムの排出を促すことで、心臓の仕事量を減らします。

透析患者さんのうっ血性心不全の治療

透析患者さんがうっ血性心不全を発症した場合の治療は、透析による除水が中心になります。
短時間で除水を行うと血圧が下がってしまうので、ゆっくりと時間をかけて行います。
場合によっては昇圧剤を使ったり、効果的に除水を行うために透析中にアルブミン製剤を投与することもあります。
また高血流のシャントはうっ血性心不全を悪化させるケースもあるので、シャントの血流を低下させる手術や別のシャントを作る手術が必要になることがあります。

うっ血性心不全は、慢性腎臓病の患者さんや透析患者さんが発症しやすい命に関わる合併症です。
虚血性心疾患や大動脈弁狭窄症などの基礎疾患がある方は、発症のリスクが高いので注意が必要です。
透析患者さんは、うっ血性心不全を防ぐためにしっかり水分制限を守ってください。

まとめ

  • うっ血性心不全は、血管の中で血液が滞る慢性の心不全です。
  • 透析患者さんがうっ血性心不全を起こしやすいのは、体内に過剰な水分が溜まり心臓に負担がかかることが原因です。
  • 慢性腎臓病の患者さんは、虚血性心疾患や大動脈弁狭窄症により、うっ血性心不全を起こすリスクがあります。
  • うっ血性心不全の症状は、全身に現れます。呼吸困難は肺に過剰な水分が広がることで起きるため、横になると息苦しさが増し、起き上がると症状がやわらぐのが特徴です。
  • うっ血性心不全の治療は、主に薬物療法です。
  • 透析患者さんがうっ血性心不全を発症した時の治療は、透析による除水が中心で、場合によってはシャントを作り直す手術を行います。