膀胱炎を繰り返す人は腎臓も悪くなりやすいと聞くと、心配になりますよね。
透析の原因疾患の1つには、感染が元で発症する慢性腎盂腎炎という病気があります。
確かに慢性腎盂腎炎の原因菌は膀胱炎から上行したものが多いのですが、早期に適切な対応をすれば慢性化を防ぐことができます。
今回は、慢性腎盂腎炎という病気の特徴や、原因、症状、治療についてご紹介します。
感染により発症する慢性腎盂腎炎は生活習慣や遺伝には関係がなく、どなたでもかかる可能性がある病気ですから、ご参考になさってください。

慢性腎盂腎炎とは

腎盂腎炎は、糸球体や尿細管がある腎臓の実質や尿を受ける腎杯、腎杯から尿を集めて尿管へ送る腎盂などに尿路を通して細菌感染し、炎症を起こす病気です。
腎盂腎炎には、急性と慢性があります。
急性腎盂腎炎を繰り返した結果、慢性腎盂腎炎に至る場合や急性腎盂腎炎の治療が不十分で慢性化するケース、また急性の症状が出ずに慢性腎盂腎炎になることもあります。

①急性腎盂腎炎

急激に発症し、高熱や排尿時痛、全身倦怠感、腰痛や背中の痛みなどの症状が出ます。
治療には入院して(症状が軽ければ外来で)抗菌薬を使用します。
1~2週間位で治ることがほとんどですが、治療後1~2週間おいて再度尿検査を行い、再発していないことを確認する必要があります。
適切な治療を行えば完治する病気ですが、感染症が重症化すると細菌が血液に入り敗血症を引き起こすことがあります。
敗血症になると、悪寒や震えを伴う発熱が起こり、呼吸不全や急性腎不全、多臓器不全となり、命に関わる場合もありますから、急性腎盂腎炎は早期の治療が大変重要になります。

②慢性腎盂腎炎

急性腎盂腎炎が発症した時の治療が十分でなかったり、急性腎盂腎炎を繰り返したり、腎臓の感染が長時間続いた場合には、慢性腎盂腎炎になります。
慢性腎盂腎炎の進行には個人差がありますが、徐々に腎機能が低下し、やがて透析治療が必要な末期腎不全に至ります。

慢性腎盂腎炎の原因について

慢性腎盂腎炎の原因は大きく分けると、膀胱炎がきっかけになる場合と尿路の異常から引き起こされる場合があります。

①膀胱炎がきっかけになる場合

膀胱炎とは、膀胱の内部に細菌が付着して炎症が起こる病気で、排尿時の痛みや、血尿、頻尿などの症状が出ます。
尿道の短い女性や前立腺肥大などで尿の流れが停滞しやすい高齢の男性などによく見られる病気です。
膀胱炎の原因菌は様々ですが、最も多いのは腸などに常在する大腸菌です。
そしてこの膀胱炎を引き起こした細菌が尿管を上行して腎臓に入り込むと、腎盂腎炎の原因となります。
では膀胱炎を繰り返している患者さんがよくいらっしゃいますが、これはどういう状態なのでしょうか。
きちんと治したのに、しばらくするとまた再発するという、単純に膀胱炎を繰り返している方も確かにいらっしゃいます。
しかし意外に多いのは、症状から見ると治ったり再発したりしているように思えても、病気として見ると実はずっと持続しているというケースです。
つまり症状が出ていないから治ったというわけではなく、症状が強く出ている時とほとんどわからないほど軽い時があるので、繰り返しているように見えるというわけなのです。
このように膀胱炎が完全に治っていなかったり、何度も繰り返し発症するということは、膀胱が大腸菌を代表とする様々な細菌に常時汚染されてしまっているということを意味します。
膀胱の中に細菌がある状態が続くと、細菌は繁殖して、他の場所へも移動することになります。
特に尿管でつながっている腎臓には影響が及びやすく、膀胱内の細菌の一部は尿管をさかのぼって腎盂に到達し、腎盂と腎臓全体に感染を引き起こします。
こうして急性腎盂腎炎が発症することになります。
しかし急性腎盂腎炎になってもきちん治療すれば、腎機能に影響が出ることはほとんどありません。
治療が不十分であったり、無理をしてこじらせてしまうと、腎臓の感染が慢性化し、慢性腎盂腎炎となります。
慢性腎盂腎炎が進行すると、腎機能は徐々に低下し、透析療法が必要な末期腎不全に至ります。
腎機能の低下を防ぐためには、膀胱炎にかかったら完全に治るまで治療を続けること、そして腎盂腎炎になった場合は急性の時点できちんと治療を受けることが非常に重要です。

②尿路の異常から引き起こされる場合

尿路奇形、腫瘍、結石、前立腺肥大などの尿路の病気も、慢性腎盂腎炎の原因になります。
子供や高齢者に発症しやすく、膀胱炎が原因になった場合と比べると症状が軽度なため受診や治療が遅れがちになることも特徴です。
しかし特に症状がないからと放置しておくと、やがて腎機能が低下し、腎臓の萎縮が起きる場合もあります。
強い症状が出ていない状態でも、尿検査で発見することができるので、定期的に尿検査を受けることが大切です。

慢性腎盂腎炎の症状

膀胱からの感染によって引き起こされた場合は、発熱、悪寒、腰痛、背中の痛みなどの強い全身症状が見られます。
尿路の基礎疾患から発症した場合は、発熱しても微熱程度で腰や背中の痛みも軽度です。

慢性腎盂腎炎の治療

抗菌薬を組み合わせた薬(ニューキノロン系、セフェム系、ペニシリン系、アミノグリコシド系)で感染症を治療します。
薬の服用は、症状が治まった後も1カ月以上続け、完全に細菌を除去することが大切です。
症状が出なくなったからと自己判断で服用をやめてしまうと、慢性化を進め、腎機能低下の原因になるので、注意してください。
慢性腎盂腎炎の原因となっている尿路の病気がある場合は、手術などでその治療も行います。
この治療を行わないと、結局腎盂腎炎を繰り返し、末期腎不全に進行するリスクが高くなります。
治療中は安静を心がけ、体を冷やさないようにして、水分をしっかり取るようにします。
無理をしたり体を冷やすと、腎臓への血流が減少し回復が遅くなるので、気をつけましょう。
また治療中は定期的に血液検査を行い、血液中の尿素窒素や、クレアチニン、電解質などの数値を調べ、腎機能が低下していないか調べます。
画像検査も合わせて行い、腎臓や腎盂の形や大きさを調べ、腎臓の萎縮などが起きていないか確認します。

細菌感染が元で起こる慢性腎盂腎炎は、治療を早期から始めることと、慢性化しないようにきちんと治療を続けることが大切です。
治療中は安静を心がけ、症状が見られなくなっても主治医の指示を守って薬の服用を続けましょう。

まとめ

  • 腎盂腎炎には、急性と慢性がありますが、急性腎盂腎炎を繰り返すと慢性腎盂腎炎に移行しやすくなります。
  • 慢性腎盂腎炎は、細菌感染により起こる腎臓の病気で、腎機能の低下が進み末期腎不全に至ると透析療法が必要になります。
  • 女性に多い膀胱炎は繰り返すと腎盂腎炎につながるので、注意が必要です。
  • 尿路ある他の病気が原因で慢性腎盂腎炎になった場合は、まず原因疾患の治療から始めます。
  • 慢性腎盂腎炎の治療は、抗菌薬を組み合わせて服用する薬物療法を行います。症状が見られなくなっても主治医の許可が出るまで必ず薬の服用を続けてください。
  • 治療中は安静を心がけ、血液検査や画像検査で腎機能や腎臓の変化を確認します。