健康診断で腎機能に異常の結果が出て、ビックリ。
特に体調は悪くないし、これまで腎臓のことは意識したこともなかったのに、何に気をつけたらいいのかわからないという声もよく耳にします。
腎臓の病気には種類が多く、それぞれ原因や症状も違います。
そこで腎臓病を病気別に見るのではなく、腎臓の機能が正常な人と比べてどのくらい低下してしまったかで5段階に分類した慢性腎臓病(CKD)という概念が生まれました。
早期に発見し早い段階から治療を始めることで、末期腎不全への進行を遅らせようという考え方です。
今回はCKDについて詳しくご紹介します。

~メディケアNJクリニックにて~

空ちゃん空ちゃん

こんにちは、清水さん


清水清水

あら、空ちゃん。こんにちは


空ちゃん空ちゃん

実は、今日は慢性腎臓病がどうやって診断されるかについて教えてもらいに来ました


清水清水

あら、かなり具体的な話ね。でもそろそろその質問が来るんじゃないかって、予想していたの。だって、私も実は空ちゃんからお父さんのこと聞いて、もしかしたら慢性腎臓病なんじゃないかなあって……


空ちゃん空ちゃん

やっぱり?


清水清水

私は医師ではないから、正式な診断を下せるわけじゃないけれど、慢性腎臓病かどうかは、健康診断の尿検査と血液検査からわかるわ。お父さんの検診結果知ってる?


空ちゃん空ちゃん

家にあると思います!でも、そういえば見たことないかも……。きっと私に見つからないように隠しているんだわ。今度父に借りて持ってきます


清水清水

うん、そうして!今日は空ちゃんにもある程度健康診断の結果がわかるように、慢性腎臓病について説明するからしっかり聞いてね


空ちゃん空ちゃん

はい、よろしくお願いします

腎臓の異常が3ヵ月以上続いたら慢性腎臓病

腎臓の機能が損なわれた状態が慢性的に続き、だんだんと悪化していく状態を慢性腎臓病(CKD)といいます。
CKDと診断されるのは、次の症状のどちらか1つ、または両方が3ヵ月以上続いている場合です。
ですからCKDの診断には3ヵ月以上必要になります。
健康診断などで異常が見つかった場合は3ヵ月以上間隔を開けて再検査を受けてください。

①尿検査、血液検査、画像検査、病理検査などで腎臓の障害が明らかな場合

特にタンパク尿が出ていることが重要な診断基準となります。
通常は尿に混ざらないタンパクが尿に出ているのは、血液のフィルターとして働いている腎臓の糸球体という部分が損なわれていると考えられます。

②糸球体ろ過値(eGFR)が60ml/分/1.73㎡未満

糸球体ろ過値(eGFR)とは、糸球体が血液をどの程度ろ過できているかで腎臓の働きを表す数値です。
糸球体とは、まるで糸が丸まったような形をしている直径0.2mmくらいの毛細血管のかたまりで、血液をろ過して原尿を作っている部分です。
eGFRは血液検査でわかる血清クレアチニン値から計算して求められます。
eGFRが60というのは、腎臓の働きが正常な人の60%程度という意味になります。

日本腎臓学会は、およそ1330万人がCKD患者だと推計していて、これはなんと日本人成人の13%近くにもなります。
CKDを発症する危険性が高いハイリスク群はもっと多く、新たな国民病とも言われています。

CKDになりやすいのはどんな人?

では、CKDになりやすいのはどんな人でしょうか。
発症・進行させる危険因子を知っておきましょう。

①糖尿病にかかっている人

糖尿病による高血糖は、腎臓の糸球体に障害をもたらし、腎臓の機能を低下させます。
糖尿病が原因の腎臓病は糖尿病性腎症と呼ばれ、末期腎不全となって人工透析が必要になる要因として最も多くなっています。

②高血圧の人

血圧の高い状態が続くと、血管に動脈硬化が起きます。
特に腎臓は太い血管から糸球体の非常に細い血管まで多くの血管が集まっている臓器なので、高血圧の影響を強く受けます。
高血圧が原因で腎硬化症という腎臓病になると、血流が低下し、腎臓全体も硬く委縮して充分に機能しなくなります。
また腎臓は血圧を調整する働きもしているので、高血圧がCKDを発症させるだけでなく、CKDによって高血圧がより悪化するという悪循環に陥ります。

③肥満・メタボリックシンドロームの人

内臓のまわりに脂肪がたまっている肥満やメタボリックシンドロームの人は、動脈硬化が進行しやすく、糖尿病や高血圧を発症しやすいため、その結果CKDになりやすいことがわかっています。

④高齢者

高齢になれば、どなたでも体のあらゆる機能が低下します。
腎臓も同じで、特に腎臓の病気がなくても加齢に従って働きが徐々に低下していくので、高齢者はCKDに注意が必要です。

CKDのステージについて

CKDの進行度は、推算糸球体ろ過率(eGFR)の数値によりステージ1からステージ5までに分類されます。
さらに尿タンパクの程度と原疾患の種類を組み合わせることで、重症度が分けられます。

【ステージ1】
尿検査で異常が発見されなければ、CKDではありません。
尿検査で異常が出ていても腎機能は正常ですので、より詳しい検査をしてCKDかどうかを調べます。

【ステージ2】
ステージ1と同じく、尿検査で異常がなければCKDとは診断されません。しかし尿検査の異常があれば、CKDの可能性が疑われます。
詳しい検査で異常の原因を特定する必要があります。また食事療法などの生活習慣の改善が必要になってくるステージでもあります。

【ステージ3】
腎機能がかなり低下しているため、CKDと診断されることが多いステージです。
ここでしっかり進行を食い止めることで、透析治療の導入をかなり遅らせることができます。日本腎臓学会ではさらに3aと3bに細かく分類し、治療方針を分けています。

【ステージ4】
疑いなくCKDであり、透析治療を検討し始めるステージです。
腎機能の低下が進み、貧血や倦怠感、骨の異常など、多くの合併症の症状も現れます。いつ末期腎不全となってもおかしくないので、腎臓専門医と相談して、いつ透析治療を始めてもいいように準備をしておきましょう。

【ステージ5】
腎臓は働きをほとんど失っている末期腎不全の段階です。
生命を維持するために透析治療が必要になります。

CKDの重症度分類(CKD診療ガイド2012)

重症度は現疾患・GFR区分・蛋白尿区分を合わせたステージにより評価する。CKDの重症度は死亡、末期腎不全、心血管死発症のリスクを緑のステージを基準に、黄、オレンジ、赤の順にステージが上昇するほどリスクは上昇する(KDIGO CKD guideline 2012を日本人用に改変)
(出展:日本腎臓学会「CKD診療ガイド2018」)

CKDの治療とは?

CKDは放置しておくと進行を止められません。
腎機能を維持することを目標に、重症度と腎機能低下の原因に合わせて治療を行います。
食事、運動、薬が治療の基本になります。

①食事療法

CKDと診断されたらまず必要なのは減塩です。
目標は塩分1日6g未満です。
また肥満、メタボリックシンドロームの方は食べる量自体も減らさなければなりません。
CKDステージ3からは、タンパク質摂取量やカリウム制限も必要になってきます。

②運動療法

腎臓病には安静が必要と誤解している方も多いのですが、運動不足は動脈硬化の進行や体力低下にもつながるので、各自の状態に合わせて適度な運動を続けていくことが大切です。
目安は軽く汗ばみ、爽快感を感じられるくらいの運動です。

③薬物療法

まず糖尿病なら血糖値のコントロール、高血圧なら降圧薬、腎炎なら炎症を抑える薬など、CKDのもとになった病気の治療薬を使います。
CKDが進行すると腎機能の低下により貧血や高カリウム血症、高リン血症などさまざまな症状が出てきます。
血液検査の結果などを見ながら必要な薬を追加していくことになります。

気づかないうちに進行して、生活の質を大きく低下させたり、命に関わる合併症にもつながるのが慢性腎臓病です。
早めに発見し、適切な対処をすることが何よりも大切です。

~翌日~

空ちゃん空ちゃん

清水さん、持ってきました!父の検診結果です


清水清水

さすが、空ちゃん。もう見つけてきたのね。どれどれ。まず尿検査の結果を確認してね。尿タンパクは出ていない?


空ちゃん空ちゃん

タンパクですね。あ、+になっています!


清水清水

そっか‥‥。タンパク尿が出るというのは、腎臓に何か異常がある可能性が高いわね。
血液検査の血清クレアチニン値はどうかしら


空ちゃん空ちゃん

血清クレアチニン値も、基準値より高いです


清水清水

お父さん、慢性腎臓病が強く疑われるわね。再検査や精密検査には行ったのかな


空ちゃん空ちゃん

いえ、行ってないんです!体調悪くないから平気だって


清水清水

それは絶対ダメ! 慢性腎臓病は最初は自覚症状はほとんどないけれど、早期のうちに治療を始めて、食事や生活習慣に気をつければ進行を遅らせることができるのよ。そのままにしておいたらどんどん進行しちゃうわよ


空ちゃん空ちゃん

わかりました!早く発見できた方がいいということですよね。私が首に縄をつけても病院に連れていきます!


清水清水

首に縄をつけて……(空ちゃん、ほんとすごいわ……)でも絶対受診してね。それから慢性腎臓病についての基本的なことをここにまとめておいたから、お父さんを説得する前に読んでおいてね


空ちゃん空ちゃん

はい! ありがとうございます

まとめ

  • 腎臓病の原因や種類ではなく、腎臓の機能がどのくらい低下してしまったかで分類し治療するのが、慢性腎臓病(CKD)の概念です。
  • CKDは進行度により5種類のステージに分類されます。
  • CKDにかかりやすいのは、糖尿病や高血圧の方、肥満やメタボリックシンドロームの方、高齢者です。
  • CKDの治療には、食事療法、運動療法、薬物療法があります。早期からの適切な治療で進行を遅らせることが治療の目標です。