「腎臓に炎症が起きていますね」と病院で言われると、どんな治療をするのだろう、よくなるのだろうかと心配になりますよね。
腎臓に炎症が起きる病気として一般的なのは、慢性糸球体腎炎です。血液を浄化する働きをしている糸球体に慢性的な炎症が起きて、腎機能が徐々に低下していく病気です。
腎臓の病気の中で、末期腎不全に至って透析療法が必要になることが糖尿病性腎症に次いで多いのが、慢性糸球体腎炎です。
慢性糸球体腎炎の中にも何種類かの疾患があり、それによって発症しやすい年齢や症状が違います。
今回は慢性糸球体腎炎についてご紹介します。

慢性糸球体腎炎とは

血液をろ過して老廃物などを尿として対外に排出するのが腎臓の働きですが、そのろ過の役割を担っているのが、腎臓にある糸球体です。
この糸球体が炎症を起こし、正常にろ過できない状態が長期間持続する病気が、慢性糸球体腎炎です。
生活習慣病とは無関係に発症することが多く、子供や年齢の若い患者さんが多いのも特徴です。
慢性糸球体腎炎は、糸球体の組織のどこにどんな障害が起きているかによっていくつかのタイプに分けられます。
どのタイプであるか確定するためには腎生検という検査が必要です。

腎臓の組織の一部を採取して調べる腎生検

腎生検は、背中に針を刺して腎臓の組織の一部を採り、顕微鏡で確認する検査です。
どのタイプの糸球体腎炎であるかを診断し、適切な治療法を決定するために必要な検査です。
まず患者さんがうつぶせで寝て、局所麻酔をします。
そして超音波画像で腎臓の位置を確認しながら、背中に鉛筆の芯ほどの細い針を刺して腎臓の組織を切り取ります。
この操作は2、3回行い、採取の時間は15~20分程です。
針が刺さる感覚や圧迫感はありますが、痛みはありません。
腎生検の後は半日から1日の間、ベッドで安静にして過ごします。
腎臓は血管が多い組織で検査中や検査後に出血する危険もあるため、腎生検を受けるには最短でも4~5日間の入院が必要です。

慢性糸球体腎炎の中で最も多いIgA腎症

IgAという免疫グロブリンの一種が、糸球体の中心で血管を束ねる役割をしているメサンギウムという細胞に沈着し、糸球体のろ過機能が低下する疾患です。
免疫グロブリンとは、体内の免疫機能の中心的な役割を果たしているタンパク質で、抗体とも呼ばれます。
5種類ある免疫グロブリンのうちの1つであるIgAは、血液、唾液、鼻汁などの中に存在していて、主に粘膜を守る働きをしています。
ウイルスや病原菌が体内に入ってくると、IgAは病原菌から体を守ろうと病原体に結合して免疫複合体になります。
その免疫複合体は、血流に乗り腎臓に到達すると、糸球体のメサンギウムに沈着します。
そして白血球が免疫複合体を敵とみなして攻撃し、炎症が起きます。
これがIgA腎症がの起きる仕組みです。このIgAが異常発生する理由は詳しく判明していませんが、リンパ球の異常、細菌やウイルスによるもの、あるいは遺伝的特質によるのではないか、などと考えられています。
20代が発症のピークですが、子供でも発症することがあります。
比較的男性に多いのもIgA腎症の特徴です。

①症状

初期段階では自覚症状がないため、検診などで血尿やタンパク尿が出て発見されるケースが多いです。
その後、進行して腎機能がさらに低下すると、むくみ、高血圧、息苦しさ、食欲減退などの症状が出てきます。
IgA腎症は発症後約20年で30~40%の患者さんが末期腎不全となり、人工透析が必要になります。
気づかないうちに進行してしまうことが多い病気なので、早期発見のためには定期的な尿検査を受けておくことが大切です。

②治療

減塩などの食事療法と抗血小板薬、副腎皮質ステロイド薬などの薬物療法を行います。過剰な免疫反応を抑えることで糸球体の炎症が改善され症状が安定する患者さんも多く診られます。
また扁桃炎を繰り返している患者さんの場合は、口蓋扁桃の摘出手術を行った上で副腎皮質ホルモンを点滴で投与する治療を行うこともあります。
口蓋扁桃とは、のどにあるリンパ器官なのですが、IgAはこの口蓋扁桃で作られているため、IgA自体を減らすことが目的で行われます。

ネフローゼ症候群を起こしやすい膜性腎症

IgGという免疫グロブリンが、血液のフィルターの役割を果たしている糸球体基底膜に沈着し、糸球体のろ過機能が低下します。
膜性腎症とは、病気の原因が基底膜にあることから「膜性」と名前についた疾患です。
癌やウイルス感染、膠原病などが原因になることもあり、中高年に多いのも特徴です。

①症状

膜性腎症はネフローゼ症候群を引き起こしやすい病気です。
ネフローゼ症候群とは、糸球体の障害により尿の中のタンパクが異常に増え、血液中のタンパクが不足する状態です。
ネフローゼ症候群が起きると、腎臓の静脈に血のかたまりができる腎静脈血栓症という合併症が起きる場合があります。

②治療

まず癌などが原因で炎症が起きているのではないかを確認し、原因疾患が発見された場合はその治療を行います。
原因疾患がない場合は、副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬などの薬物療法を行います。
約半数は自然に症状が落ち着きますが、約40%の患者さんは20年ほどで末期腎不全に進行し透析療法を導入します。

進行が早い膜性増殖性糸球体腎炎

糸球体の血管の壁が厚くなる病気です。
C型肝炎などの感染が原因となっているケースもあります。
子供から20代頃に多く発症します。

①症状

約半数の患者さんに、大量のタンパク尿、低タンパク血症、むくみ、脂質異常症などのネフローゼが起きます。
腎機能の低下が進みやすい疾患で、約60%の患者さんが10年ほどで末期腎不全となり透析療法が必要になります。

②治療

C型肝炎など、原因となっている病気がないかを確認して、発見された場合はまずその原因疾患の治療を行います。
原因疾患がない場合は、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬、抗血小板薬などの薬物療法を行います。
症状が重い時は、副腎皮質ステロイドを一定期間集中的に点滴するステロイドパルス療法を行います。
また症状と腎機能に合わせて、減塩やタンパク質摂取量の制限などの食事療法を行います。
運動の制限を指示されることもあるので、主治医の指示に従いましょう。

急激に症状が現れる巣状分節性糸球体硬化症

糸球体の一部が硬くなって機能低下を起こす病気で、子供にも発症します。
むくみ、多量のタンパク尿などの症状が急激に現れます。
比較的まれな疾患ですが、治療の効果が出にくく、約20年でほぼ半数の患者さんが末期腎不全となります。

①症状

ネフローゼ症候群が起きる場合が多く、高血圧、顔や脚のむくみ、体重増加などの症状が急激に現れるのが特徴です。

②治療

最初に副腎皮質ステロイドでの薬物療法を行いますが、効果が見られない時は免疫抑制剤も使用します。
重症の場合は、副腎皮質ステロイドを集中的に点滴するステロイドパルス療法を行います。
水分、塩分の制限など食事療法も行いますが、子供の患者さんの場合は食事制限が成長に悪影響をおよぼさないように気をつける必要があります。
食事療法は、管理栄養士や医師によく相談して進めましょう。

障害が起きる場所によって種類が分かれる慢性糸球体腎炎は、確定診断と早期の対応が重要です。
適切な薬物療法と食事療法を行うことで、腎機能の低下を遅らせることができます。

まとめ

  • 慢性糸球体腎炎は、腎臓の糸球体に炎症が起きて腎機能が低下する病気です。
  • 糸球体のどこにどんな障害が起きるかにより病気の種類が分かれるため、確定診断には腎生検が必要です。
  • 慢性糸球体腎炎で最も多いのはIgA腎症です。
  • 膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症は、ネフローゼ症候群が起きることが多いです。
  • 共通する主な治療法は薬物療法と食事療法です。