特に自覚症状はなかったのに、「腎臓の機能が落ちていますね」と医療機関で言われるとショックを受けますよね。
腎臓の病気はそれぞれ発症の原因や経過は違いますが、進行すれば末期腎不全になり透析治療が必要になります。
しかし早期に発見して適切な治療を受ければ、腎臓の機能を維持したり回復させられたりする場合もあります。
今回は透析治療の原因となる主な腎臓の病気についてご紹介しますので、参考にしてください。
いざという時に適切な対処ができるように、各腎臓病の特徴や原因、経過を知っておきましょう。

人工透析の原因疾患で最も多い糖尿病性腎症とは

糖尿病は、血液中のブドウ糖量をコントロールするインスリンというホルモンが正常に分泌されなくなることで、血糖値が高いままになる病気です。
糖尿病の合併症の1つが糖尿病性腎症です。
糖尿病の患者さんが糖尿病性腎症を発症するまでには、10~20年かかりますが、一度発症してしまうと慢性腎臓病となってジワジワと進行し、やがて末期腎不全となるケースが多いのが特徴です。
透析治療を開始する方のうち最も多いのは糖尿病性腎症の患者さんです。

①原因

糖尿病になると過剰な糖分を含んだ血液が慢性的に流れることで、血管の内側にコレステロールなどが付着し、血管が硬く、狭くなってしまいます。
これが動脈硬化の症状一因です。動脈硬化は全身の血管で起こり、腎臓の糸球体の毛細血管もダメージを受けるようになって、正常なろ過機能を果たせなっていきます。
また過剰な糖分により糸球体の構造を支えているメサンギウム基質という部分が肥大化し、まわりの毛細血管を圧迫することも、ダメージの原因と考えられていますが、詳しい仕組みは分かっていません。
糸球体へのダメージが蓄積していくと、徐々に腎機能が低下し、やがて慢性腎臓病の症状が現れます。

②症状

糖尿病性腎症は、早期にはほとんど症状がないため、その始まりにはなかなか気づくことができません。
糸球体の毛細血管がダメージを受けても、腎臓はなんとかしてろ過機能を維持しようと働くので、血液検査や尿検査にも異常が現れにくい病気です。
糖尿病性腎症の進み方は、第1期から第5期に分けられますが、第2期頃には尿検査でごく微量のアルブミン(タンパク質)尿が現れ始めます。
第3期にはタンパク尿が陽性となり、第4期にはむくみや倦怠感なども現れ、第5期には透析治療が必要となります。

③治療法・対処法

ごく初期であれば、カロリーを制限する食事療法や、運動療法によって症状の進行を抑えます。
それで血糖値が下がらないようであれば、原因となっている糖尿病の薬物療法(インスリン注射や経口の糖尿病薬など)が中心になります。

腎臓自体に炎症が起きる慢性糸球体腎炎

慢性糸球体腎炎は、その名の通り糸球体に慢性的な炎症が起こり、次第に腎機能が悪化する病気です。
血尿やタンパク尿で発見されます。

①原因

慢性糸球体腎炎には、免疫グロブリンGが糸球体に沈着する膜性腎症や、糸球体の血管の壁が厚くなる膜性増殖性糸球体腎炎、糸球体の一部が硬くなる巣状分節性糸球体硬化症などがありますが、最も多いのはIgA腎症です。
IgA腎症は、免疫反応に関わる免疫グロブリンAなどが糸球体に溜まることで炎症を引き起こします。
風邪などの感染症の後に発症することも多い病気です。
IgA腎症は男性に多く、腎臓病の中では若い患者さんが多いのも特徴です。

②症状

早期は明らかな自覚症状はほとんどありませんが、むくみやだるさを感じるようになる頃には腎臓の機能がかなり低下しています。
Iga腎症の場合は30~40%の患者さんが徐々に進行し末期腎不全に移行、透析療法が必要になります。

③治療法・対処法

慢性糸球体腎炎は種類により原因が違うので、その原因と症状に合わせて治療を行います。
IgA腎症の場合は、異常な免疫反応や炎症を抑えるために副腎皮質ステロイド薬で治療します。
また病気が進むと糸球体内の血液が固まって血栓ができやすくなるので、抗凝固薬や抗血小板薬を用いることもあります。
高血圧や脂質異常症も合併しやすいので、その場合も薬物療法で対処します。

良性と悪性がある腎硬化症

腎臓の血管が硬くなり、腎臓への血流が減少して腎臓が萎縮し、腎臓の機能が低下する病気です。良性と悪性の2種類があります。

①原因

腎硬化症の原因は、高血圧による動脈硬化です。
腎臓内の血管に動脈硬化が起きることで、糸球体が硬化し、ろ過機能が低下します。
良性腎硬化症は、軽度から中程度の高血圧で発症し、悪性腎硬化症は拡張期血圧130㎜Hg以上の高血圧の時に発症します。

②症状

良性腎硬化症は特に自覚症状はありません。
尿検査では、軽度のタンパク尿と顕微鏡的血尿が確認できます。
悪性腎硬化症は、激しい頭痛や吐き気、貧血、全身倦怠感などが起きます。眼底出血や網膜の浮腫が原因の視力障害が起きることもあります。

③治療法・対処法

良性腎硬化症は早期から血圧を下げる治療を行えば、進行を防ぐことができます。
悪性腎硬化症は短期間で末期腎不全に進行することが多く、心不全や脳梗塞など心血管疾患も発症しやすくなるので、早急な血圧コントロールが必要になります。

遺伝性が高い多発性嚢胞腎

多発性嚢胞腎は、左右の腎臓に大小の嚢胞がたくさんできる病気です。
嚢胞とは、液体が溜まった袋のことです。
腎臓内にできた嚢胞によって腎臓は肥大化し、腎臓の機能が低下。
進行すると末期腎不全となり尿毒症を発症します。

①原因

遺伝性が高く、両親のどちらかがこの病気の遺伝子を持っていると、50%の確率で子供に遺伝します。
30~40代になってから発症しはじめ、70代までに約半数が末期腎不全となります。
幼児期に発症するケースでは、急激に嚢胞ができ、亡くなることもあります。

②症状

嚢胞が大きくなると、腹痛、腰痛、血尿、高血圧などが見られるようになります。
また、脳動脈瘤やくも膜下出血、心臓弁膜症、大腸憩室などを合併することあるため、その治療の過程で多発性嚢胞腎が見つかることもあります。

③治療法・対処法

遺伝性の病気のため、根本的な治療法はありません。
薬物療法と食事療法で、進行をできるだけ遅らせます。
末期腎不全となり尿毒症を発症した場合は、透析療法を導入します。

急激に発症して短期間に末期腎不全になる急速進行性糸球体腎炎

発症してわずか数週間から数ヵ月で腎臓の機能が低下し、末期腎不全に至ります。
命に関わることも多く、腎臓疾患の中でも最も予後が悪い病気です。
血管が強い炎症を起こし、糸球体が急激に破壊されていくのが特徴です。

①原因

腎臓の糸球体に半月体(クレッセント)という構造ができ、そのせいで血流が妨げられるため、強い炎症が起きます。
半月体がなぜ発生するのかは分かっていません。正常な状態に戻ることはなく、腎臓の機能が急速に低下します。

②症状

発熱、倦怠感、関節痛、筋肉痛などの症状が出て、尿の量が減ったり、血尿やタンパク尿など尿の異常も出ます。
血痰や吐血など呼吸器の症状が出ることもあります。

③治療法・対処法

集中治療室での治療になることも多い病気です。
入院は長期に及び、腎機能が回復することはほとんどなく、退院後は透析治療に移行するのが一般的です。

女性や高齢男性に多い慢性腎盂腎炎

膀胱炎を繰り返しやすい女性や前立腺肥大などで尿の流れが停滞しやすい高齢男性によく見られます。
急性と慢性があり、急性の時点できちんと治療すれば、腎臓の機能には影響ありませんが、治療が不充分だったり、無理な生活を続けてこじらせたりすると慢性化してしまいます。
慢性腎盂腎炎は高血圧を伴いやすく、進行すると末期腎不全になり、透析治療が必要になります。

①原因

膀胱に感染した細菌が尿路を伝わって腎盂に入り込み、腎臓全体に炎症を起こすことが原因です。細菌感染を繰り返すことで慢性化します。

②症状

初期は軽い倦怠感や頭痛などがある程度で、目立った自覚症状はありません。
急激に悪化すると急性腎盂腎炎のような発熱、腰痛などが現れます。

③治療法・対処法

抗生物質で、細菌感染を治療します。
また各種画像検査をして尿の流れを滞らせている病気がないか調べます。

膠原病のSLEに合併するループス腎炎

膠原病の一種、全身性エリテマトーデス(SLE)に伴って起きる腎臓病です。

①原因

膠原病とは、本来なら体を守る働きをする免疫システムが自分の細胞を攻撃してしまう病気です。
膠原病にかかると、腎臓の糸球体にも炎症が起きるため、腎臓の機能が低下します。

②症状

自覚症状と経過には個人差があります。
ほとんど自覚症状が出ない人もいますし、発熱やむくみ、息苦しさ、嘔吐、血尿やタンパク尿などの症状が出る人もいます。
すぐに治る患者さんもいますが、長期の入院治療が必要な患者さんや、末期腎不全になり人工透析に移行するケースもあります。

③治療法・対処法

状況に応じて、副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬などで治療します。

腎臓病には、突然激しい症状で始まるものもありますが、自覚症状がない間に静かに進み、発見された時にはかなり進行しているケースも少なくありません。
早期発見のために、年に1回は必ず検診を受けるようにしましょう。

まとめ

  • 人工透析が必要になる腎臓病にはさまざまなものがありますが、どの病気も早期の発見と治療が大切です。
  • 早期から適切な治療を受ければ人工透析導入を遅らせることができます。
  • 人工透析の原因疾患で最も多いのは、糖尿病性腎症です。