透析治療を受けている患者さんに食欲がない日が続くと、ご本人もご家族も心配になりますよね。エネルギー不足が続くと、体力の低下や病状の悪化を招いてしまいます。腎臓が悪いから仕方ない、高齢だから食がすすまないのは当たり前とそのままにせず。まず原因について確認してみましょう。

今回は透析患者さんの食欲が落ちている時のチェックポイントと、必要な栄養をしっかり摂るための対策についてご紹介します。

元気で長生きするために。透析患者は栄養管理が重要

透析患者さんといと、水分や塩分、カリウム、リンなどの食事制限ばかり考えがちですが、エネルギー不足になっている方も少なくありません。特に食が細くなっている高齢の患者さんの場合は、低栄養状態になりやすいので注意が必要です。

なぜ透析患者さんのエネルギー不足は、問題になるのでしょうか。主な理由は二つあります。

①体内の老廃物が増える

食事からのエネルギーが足りないと、人間の体は、筋肉を分解してエネルギーにしようとします。
その過程で老廃物が発生するのですが、尿が出なくなった透析患者さんの場合は老廃物を排出することができないため、体内にたまりやすくなります。

血液透析では、2~3日分の汚れを集中して浄化していきますが、除去できる量には限りがあります。結果、体内に老廃物が残りやすくなり、病状が悪化することになります。

②体力が低下する

低栄養状態が続くと体力が低下し、感染症などにもかかりやすくなります。透析患者さんは貧血の方が多く、栄養不足により貧血が進行し、心臓への負担も大きくなります。

食欲不振が続く時の五つのチェックポイント

透析患者さんの食欲不振には、一般の方とは違う原因が関わっている場合が多く見られます。次の5項目をチェックしてみましょう。

①透析治療の進め方は適切か

透析治療では、患者さんの状態に合わせて、最適な透析膜の面積と材質の透析装置を選び、透析量や除水量を決めています。食欲不振が続くようなら、現在の治療方法が患者さんに合わず、体内に老廃物が残っていることも考えられます。主治医や透析クリニックのスタッフに食欲が出ないことや、現在の状態などをよく話し、透析治療が適切なものか確認してもらいましょう。

また血液透析では、患者さんの体に余分な水分が含まれていない体重であるドライウエイトを目標にして除水を行います。
透析後にドライウエイトになるように血液から余分な水分を取り除いていきますが、ドライウエイトの設定が適切でないと、体内に余分な水分が残り、食欲不振などの体調不良の原因になることがあります。ドライウエイトの設定についても、主治医に確認しておきましょう。

②透析スケジュールを守っているか

血液透析では、週3回、1回あたり4~5時間の治療が基本です。時間的な制約が多いのですが、機能を失った腎臓の代わりに水分や老廃物を取り除いて患者さんの命を守るためにはどうしても必要な通院回数です。1週間の間に透析と透析の間隔が中1日の時が2回、中2日の時が1回でき、このスケジュールを守って治療を続けていく必要があります。まれに仕事の都合などで、中2日が連続する日程に透析のスケジュール変更を希望される患者さんがいらっしゃいます。水分や老廃物が体内にたまりやすくなり、食欲不振の原因になるため、透析のスケジュールは必ず守るようにしてください。

③便秘はしていないか

腸の中に便が詰まった状態だと、腸の働きが衰えることで食欲不振につながります。透析患者さんは、カリウム摂取制限のため野菜不足になりやすい上に、リン摂取制限のため乳製品も摂りにくいため、便秘になりやすい要因を併せ持っています。
便秘が続いている場合は、次のような方法を試してみましょう。

・朝冷たい水を飲む
水分の摂り過ぎにならないように、小さなコップで飲んでください。腸が刺激されて、自然な便意が起きやすくなります。

・調理の工夫をして野菜を摂る
カリウムには水に溶けやすい性質があるため、小さく切って水にさらしたり、下ゆでしたりして料理に使うなどの工夫で、含有量を減らすことができます。調理の工夫で、野菜不足を防ぎましょう。

・牛乳より乳酸菌飲料を
牛乳はリンの量が多いため、透析患者さんは控える必要があります。乳酸菌飲料は、リンもカリウムも比較的少ない上に、腸内環境を整える効果があるので、おすすめです。

④運動不足になっていないか

体を動かすことが少ないとエネルギーが消費されないため、食欲もわいてきません。運動不足だと腹筋が衰え腸の働きが悪くなるため、便秘の原因にもなります。適度な運動習慣は、体力を維持するためにも大切です。ウォーキングやラジオ体操など、無理なく取り組める範囲でできる運動から始めていきましょう。軽く汗ばみ爽快感を得られるような運動の後なら、食事もきっとおいしく感じるようになるはずです。

⑤ほかの病気になっていないか

食欲不振が長く続くようなら、消化器系の癌など、ほかの病気が原因になっていないか調べておくと安心です。現在の食事の状態を透析クリニックの主治医や医療スタッフに相談し、検査が必要な場合は医療機関を紹介してもらいましょう。

食欲がわかない時の工夫

どうしても食が進まない時は、毎日の食生活に少し変化をつけてみることもおすすめです。

①宅配食を利用する

塩分、カリウム、リンなどの制限を守りながら、毎日3食の食事を続けていくのは、患者さんはもちろん、ご家族も大変です。最近では宅配食のサービスが普及し、透析患者さん向けの食事の扱いも増えています。1日のうちで何食分にするかを選ぶことができ、食事制限がある患者さんもおいしく食べられる工夫をこらした料理も多いので、活用してみましょう。

②記録して楽しむ

毎日の食事をスマートフォンなどで撮影して、食事日記風にまとめるのもいいでしょう。SNSに投稿したり、ブログを書いたりしている患者さんもたくさんいらっしゃいます。記録して楽しむことで、前向きに食事療法を行えるようになれば、食欲改善にも良い効果が出てくるかもしれません。

透析患者さんは、体内にたまった老廃物の影響や、便秘、運動不足などで、食欲不振になる時があります。あまり食べられない状態が続くと、体力が低下し病状が悪化する危険性もあるので、主治医やクリニックのスタッフに相談して改善方法を見つけましょう。

まとめ

  • 透析患者さんは、必要な栄養はしっかり摂る必要があります。
  • エネルギー不足が続くと、体内の老廃物が増え、体力が低下します。
  • 透析治療の進め方が患者さんの状態に合っていないことで、食欲不振になることがあります。
  • 透析患者さんに多い便秘や運動不足も、食欲不振の原因になります。
  • 食欲が起こらない状態が続くようなら、他の病気になっていないか確認する必要があります。
  • 透析患者さん向けの食事宅配サービスを利用して、毎日の食事に変化をつける方法も効果的です。
  • 食事の内容を日記やブログなどにまとめることで、前向きに食事療法を楽しめるようになります。