腎臓が悪くなって透析治療を受けている患者さんは、血液をきれいにするということがどんなに大切か体感していますよね。血液浄化療法には、透析以外にアフェレシスという治療法があります。

透析は機能を失った腎臓の代わりに患者さんの血液中から老廃物や水分を除去する治療ですが、アフェレシス療法とは血液の中に存在している特定の病気の原因物質を除去する治療法です。

現在は薬物療法だけでは治療が困難な難病の治療などに適用されていますが、今後生活習慣病の予防医療の可能性も期待されています。
今回はこのアフェレシス療法についてご紹介します。

アフェレシス療法とは

アフェレシスという言葉を聞いたことがある方は、まだあまりいらっしゃらないかもしれません。アフェレシスの由来はギリシャ語の「apheresis」で、日本語では「分離」「取り去ること」を意味します。血液は、私達の体内で細胞に酸素と栄養を届けるという重要な役割をしています。この血液の働きは人間が生きていく上でなくてはならないものです。

しかし、血液には有害な物質が含まれることがあり、病気を発症する原因になります。アフェレシス療法はその点に注目した治療法です。

患者さんの血液を体外に取り出し、病気の原因になっている物質を取り除く治療法で、日本国内では約30年の歴史と実績があります。
通常の内科治療は、薬物を体に加えて病気を治療する、いわば「足し算」の治療です。

それに対してアフェレシス療法は、血液中から有害物質を取り除くという発想の「引き算」の治療になります。薬物を使わないことで副作用の心配もあまりありません。ですから、薬物にアレルギーのある方や、子どもや妊娠中の方でも治療を受けられるというメリットがあります。また、薬物療法ではあまり効果がみられない難病の治療などにも適用されています。

アフェレシス療法の種類と対象疾患

アフェレシス療法の基本的な仕組みは、血液中から有害な物質を取り除いて、きれいになった血液を患者さんの体内に戻すということになります。除去する物質の種類や除去の方法、対象疾患などの違いにより、アフェレシス療法には種類があります。

①白血球除去療法

炎症の原因になっている活性化した白血球を除去する治療法です。白血球を取り除くための専用フィルターを用いて、血液を浄化します。

【対象疾患】
腸粘膜に炎症を起こす潰瘍性大腸炎や、全身の関節に痛みや腫れが起きる関節リウマチの治療に適用されます。

②血漿交換療法

血液は、血球と血漿から構成されています。血球は、赤血球、白血球、血小板などの細胞成分で、血漿は、主にタンパク質から成る液体成分です。この血漿を交換するのが血漿交換療法で、血漿から有害物質を除去する方法は3 種類あります。

【対象疾患】
腎臓の病気では、一部の糸球体に硬化が生じて腎機能の低下がゆっくり進む巣状糸球体硬化症に、血漿交換療法が行われます。
また、ループス腎炎を引き起こす膠原病の1種、全身性エリテマトーデスにも、血漿交換療法が適用されます。

・単純血漿交換療法
まず、専用の器械を使って、血液を血球成分と血漿成分に分離します。分離した血漿は破棄して、代わりに有害物質を含まない血漿またはアルブミン溶液を補充する治療法です。

・二重ろ過血漿交換療法
血液を血球成分と血漿成分に分離し、分離された血漿を血漿成分分離器に通して病気の原因となっている有害物質を除去する治療法です。
単純血漿交換療法では血漿の中の体に有用な成分まで破棄することになってしまいますが、この方法なら、元々血漿中にあった成分を患者さんの体に戻すことができます。

・血漿吸着療法
分離した血漿を専用の吸着器に通し、病気の原因になっている物質を吸着して取り除く治療法です。

③持続緩徐式血液ろ過療法

通常の血液透析を行う場合より、透析膜の膜面積を少なくし、透析液と血流量を減らして、24時間続けて血液浄化を行う方法です。集中治療室で行うことが一般的で、患者さんの血圧が安定し、腎機能がある程度回復するまで続けます。

【対象疾患】
急性腎不全や急性膵炎、劇症肝炎の患者さんや、術後に肝不全を発症した患者さんの病状を改善させるための治療法です。

予防医療としてのアフェレシス療法の可能性

このように数々の病気の治療に利用されているアフェレシス療法ですが、近年、生活習慣病の予防医療としての応用も始まっています。

①脂質異常症を改善して動脈硬化を防ぐ

血液中には、コレステロールや中性脂肪などの脂質があります。それらの脂質の量が増え過ぎてバランスが崩れた状態を脂質異常症と言います。コレステロールには、ご存知のように悪玉コレステロールと善玉コレステロールがあります。悪玉コレステロールは全身にコレステロールを運ぶ働きをし、善玉コレステロールは体内の余分なコレステロールを肝臓に戻すように働きます。

しかし、中性脂肪が多いと善玉コレステロールが減り、悪玉コレステロールが増えてしまいます。この状態が続くと余分な脂質が血管の内側に徐々にたまり、脂質のかたまりであるプラークができやすくなります。これが慢性腎臓病の原因や進行に深い関わりがある動脈硬化です。動脈硬化をまねく脂質異常症の標準的な治療は、中性脂肪や悪玉コレステロールの量を抑制する薬物療法です。しかし、薬物療法では充分な効果が得られない患者さんも少なくありません。

そこで、アフェレシス療法で脂質異常症を治療する取り組みも行われるようになりました。今はまだ実施している医療機関は少なく、保険が適用されない自由診療ですが、患者さんの血液から中性脂肪や悪玉コレステロールを取り除いて動脈硬化を防ごうという予防医療です。

②慢性腎臓病患者の増加を抑制する

生活習慣病の予防ができれば、慢性腎臓病の発症や進行も抑えることが可能になります。静かに発症し、ほとんど自覚症状がないまま進行し、重度になると人工透析が必要になる慢性腎臓病の患者さんは、年々増加しています。

日本透析医学会2016年末の慢性透析患者に関する集計 慢性透析患者数の推移より

生活習慣病予防医療としてのアフェレシス療法は、慢性腎臓病や透析患者さんの増加を食い止めるための方法としても注目され始めています。

アフェレシス療法は、血液中から病気の原因物質を取り除く治療法です。現在は特定の病気の治療法ですが、生活習慣病や慢性腎臓病の予防医療としての可能性が期待されています。

まとめ

  • アフェレシス療法とは、患者さんの体から血液を取り出し、特定の病気の原因物質を除去する治療法です。
  • 血液は、赤血球、白血球、血小板などの血球と、液体成分の血漿から構成されています。アフェレシス療法の一つ 、血漿交換療法は、血漿から有害物質を除去する治療法です。
  • 血漿交換療法は、一部の糸球体に硬化が生じる巣状糸球体硬化症やループス腎炎を引き起こす膠原病の一つ、全身性エリテマトーデスに適用されます
  • 活性化した白血球を除去する白血球除去療法は、潰瘍性大挑戦や関節リウマチの治療に適用されます。