ほとんどの慢性腎臓病の患者さんが飲むことになるのが、降圧剤です。毎日続けて飲むことになる薬ですから、どんな作用をするのか、副作用の心配はないのか確認しておきたいですよね。

高血圧は腎臓に大きな負担をかけて慢性腎臓病を悪化させる上に、腎臓の働きが低下するとますます血圧が高くなるということになってしまいます。そんな悪循環を断ち切るために、慢性腎臓病の患者さんにとって血圧コントロールは非常に重要です。

今回は血圧を下げるための降圧剤についてご紹介します。

血圧コントロールは、慢性腎臓病の治療の要

血液が血管の壁に与える圧力が血圧ですが、腎臓の糸球体内の毛細血管には他の場所の毛細血管より大きな圧力がかかっています。ですから体全体の血圧が上昇した状態が長く続くと、糸球体の毛細血管には大変強い圧力がかかり傷ついてしまい、腎機能が低下することになります。

さらに腎臓が悪くなると、ナトリウムの排泄が正常にできなくなり体内にたまることで、血圧が上がります。その上腎臓から分泌される降圧ホルモンが減少し、腎臓の血流を改善しようと血圧を上げるレニンというホルモンが増えるので、ますます血圧が高くなるという悪循環に陥ってしまいます。

このように腎臓と高血圧には大変密接な関係があるので、腎臓が悪い患者さんは高血圧の治療が非常に重要になるというわけなのです。血圧が高くなる要因にはいくつもの要因が関わっているので、それを解決する降圧剤で治療を行います。単独で使うよりも、複数の種類の降圧剤を組み合わせて高血圧の治療を行うことが一般的です。

高血圧を招く物質の生成を抑えるACE阻害薬とARB

血圧の上昇には、腎臓から分泌されるレニンというホルモンが深く関係しています。このレニンは、肝臓で作られるアンジオテンシノーゲンという物質を加水分解し、アンジオテンシンⅠを作り出します。

そして血流に乗って肺に到達したアンジオテンシンⅠは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)の作用により、高血圧を引き起こすアンジオテンシンⅡという物質に変わります。

このようにレニンの分泌によって血圧が上がる連鎖反応を抑制するのが、ACE阻害薬とARBという降圧剤です。ACE阻害薬は、ACEの働きを抑えて、血圧を上昇させるアンジオテンシンⅡの生成を抑制します。加えてカリクレインやキニンなど降圧ホルモンの働きを活性化させる効果もあるので、血圧コントロールの効果に優れた降圧剤です。

またARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)は、アンジオテンシンⅡそのものの働きを抑えることで降圧効果を発揮します。ACE阻害薬とARBはどちらも、降圧効果が高いことに加えて、尿タンパクを減少させる作用もあります。糖尿病腎症の進行を抑制する効果もあり、よく使われる降圧剤です。

ACE阻害薬の一般名

アラセプリル
イミダプリル塩酸塩
エナラプリルマレイン酸塩
カプトプリル
キナプリル塩酸塩
シラザプリル水和物
テモカプリル塩酸塩
デラプリル塩酸塩
トランドラプリル
ベナゼプリル塩酸塩
ペリンドプリエルエルブラン
リシノプリル

ARBの一般名

アジルサルタン
イルベサルタン
オルメサルタンメドキソミル
カンデサルタンシレキセチル
テルミサルタン
バルサルタン
ロサルタンカリウム

血管を広げて血圧を下げるカルシウム拮抗薬

血管が強く収縮すると、心臓から血液を送り出す圧力も強くなるため、血圧が上がります。そこで血管を広げて血液の流れをスムーズにすることで血圧を下げるのが、カルシウム拮抗薬です。

太い血管が収縮したり拡張したりする時に伸び縮みするのは、血管の壁にある平滑筋という筋肉です。この平滑筋の収縮は、血管の細胞膜にあるカルシウムチャネルという入り口を通ってカルシウムが細胞の中に入ることで起こります。カルシウム拮抗薬は、カルシウムチャネルをブロックして細胞へのカルシウム流入を防ぎ、平滑筋の収縮を抑制します。その結果、血管が広がって、血圧が下がるというわけなのです。カルシウム拮抗薬は太い血管だけでなく、腎臓に血液を送り込む血管に働きかけるので、腎臓への血流を改善させる効果もあります。

カルシウム拮抗薬の一般名

アゼルニジピン
アムロジピンベシル酸塩
エホニジピン塩酸塩
ジルチアゼム塩酸塩
シルニジピン
ニカルジピン塩酸塩
ニソルジピン
ニトレンジピン
ニフェジピン徐放錠
ニルバジピン
バルニジピン塩酸塩
フェロジピン
ベニジピン塩酸塩
ベラパミル塩酸塩
マニジピン塩酸塩

交感神経の働きを抑えて血圧を下げる交換神経抑制薬

血管の収縮をコントロールしているのは、交感神経です。そこで交感神経の働きを抑制して血圧を下げるのが、交感神経抑制薬です。交感神経抑制薬は、α遮断薬とβ遮断薬があり、それぞれ作用する場所が異なります。α遮断薬は、血管を収縮させる交感神経のα受容体に働きかけて、血管を拡張させて血圧を下げます。またβ遮断薬は、心臓に作用する交感神経のβ受容体の働きを抑制して、心臓から送り出される血液の量を減らすことで血圧を下げます。

α遮断薬の一般名

ウラピジル
ドキサゾシンメシル酸塩
ブナゾシン塩酸塩
プラゾシン塩酸塩

β遮断薬の一般名

アセブトロール塩酸塩
アテノロール
カルテオロール
セリプロロール
ナドロール
ニプラジロール
ビソプロロールフマル酸塩
ピンドロール
プロプラノロール塩酸塩
ベタキソロール塩酸塩
メトプロロール酒石酸塩

降圧の目標は130/80㎜Hg未満が基本

慢性腎臓病の患者さんの場合、収縮期血圧130mmHg未満、拡張期血圧80mmHg未満を目標に治療を行います。ここまで低くコントロールできれば、腎機能の悪化を遅らせることができます。

しかし無理に血圧を下げ過ぎると、めまいやふらつきなどを起こすことがあるので、注意が必要です。高齢者の場合は、まず収縮期血圧140mmHg、拡張期血圧90mmHgを目標に、患者さんの症状を見ながらゆっくりと降圧します。

また脳梗塞や心筋梗塞などの心血管疾患を発症したことがある方の場合は、血圧を下げ過ぎると病状が悪化する場合があるので、主治医の厳重な管理の下で血圧コントロールを行うことになります。

降圧剤の副作用について

血圧を低下させて慢性腎臓病の進行を抑える降圧剤ですが、副作用が起きる場合もあります。
気になる症状が続く場合は、主治医に相談してください。

①ACE阻害薬で起きやすい副作用

空咳、血管浮腫、吐き気、嘔吐、下痢、高カリウム血症など

②ARBで起きやすい副作用

高カリウム血症など

③カルシウム拮抗薬で起きやすい副作用

動悸、頭痛、ほてり感、むくみなど

④交感神経抑制薬で起きやすい副作用

・α遮断薬 
立ちくらみ、めまいなど

・β遮断薬
気管支を収縮させるため、気管支喘息の患者さんは要注意です。インスリン分泌を抑制するため、糖尿病の患者さんは要注意です。

長く続けていくことになる慢性腎臓病の治療の中でも、降圧剤による血圧コントロールは非常に重要です。主治医の説明をよく聞いて、正しく服用しましょう。

まとめ

  • 高血圧は糸球体の毛細血管を傷め、腎機能を低下させます。
  • 腎臓が悪くなるとさらに高血圧になるという悪循環に陥ります。
  • 降圧剤による血圧コントロールで、慢性腎臓病の進行を防ぐことができます。
  • 降圧剤には、ACE阻害薬、ARB、カルシウム拮抗薬、交感神経抑制薬などがあります。
  • 血圧コントロールの目標値は、130/80mmHgです。
  • 高齢者は無理に血圧を下げ過ぎるとかえって病状が悪化するケースがあるので、症状を見ながらゆっくり慎重に降圧する必要があります。