Q者

慢性腎臓病の治療をしているのですが、近頃食欲がなくなってきたのが気になっています。なぜこんな症状が出るのでしょうか


川田川田

食欲が落ちてきたこと以外にも、何かこれまでと変わったことはありますか


Q者

体がだるく感じる時もあります


川田川田

それなら腎機能の低下が進み、尿毒症が起きている可能性もありますね


Q者

尿毒症という名前はよく耳にします。病院でも尿毒症に注意するように言われました。尿毒症について詳しく教えてください


川田川田

腎臓が正常に機能しなくなると、血液中の老廃物を排泄できなくなってしまいます。
そのため体中に老廃物がたまってしまう状態を、尿毒症と言います


Q者

体内にたまる老廃物には、どんなものがあるのですか


川田川田

尿素窒素やクレアチニン、有機酸などがあります。
これらの老廃物は、通常腎臓でろ過されて尿の中に排泄されるのですが、腎機能が低下すると体の中にどんどんたまってしまいます


Q者

尿素窒素やクレアチニンは、血液検査で調べますね


川田川田

それは尿素窒素やクレアチニンがどのくらい血液中に残っているかを調べて、腎臓の働き具合を確認するための検査ですね


Q者

では体内に老廃物がたまると、なぜ食欲がなくなるのですか


川田川田

いわば体中にゴミがたまっていくようなものなので、胃や腸など消化器の機能が低下することで食欲不振になります。吐き気や嘔吐が起きることもあります


Q者

なるほど。腎臓が悪くなると、胃腸にも影響が出るのですね。
影響は他の臓器にも出ますか


川田川田

はい、老廃物が体内にたまると全身の様々な箇所に障害が起きます。
消化器では食欲不振だけでなく、下痢や便秘が起き、心臓や肺では、動悸や息苦しさ、心肥大が起きるだけでなく心不全に至り命に関わることもあります。
さらに心臓を覆っている膜である心膜に炎症を起こし尿毒症性心膜炎になると、低血圧や脈拍減少を引き起こします。
また脳や中枢神経にも障害が起きるので、頭痛、不眠、けいれん、イライラ感などが起こり、重症の場合は昏睡や意識障害を起こすこともあります。
尿毒症は、とても怖い病気であることを知っておいてください


Q者

わかりました。
尿毒症以外にも、食欲不振の原因は考えられるでしょうか


川田川田

胃や腸など、消化器の病気の可能性も考える必要があります。
腎臓が悪い患者さんは、体調の変化があると腎臓のせいだと考えやすいのですが、実は胃や腸の病気が隠れていたというケースも少なくありません


Q者

胃の病気にはどんなものが考えられますか


川田川田

胃潰瘍や、胃炎、胃がんなどが考えられますね。
その中でも最も注意が必要なのが、胃がんです


Q者

胃がんになると、どんな症状が出るのですか


川田川田

早期の胃がんはあまり自覚症状が出ないことが多いのですが、食欲低下の他に体重が減ったり、黒色便が出ることもあります。
胃がんは早期の治療が大変重要ですので、わずかな変化も見逃さないようにして、気になることがあったらすぐ受診するようにしてください。
自覚症状が出ないごく初期のうちに発見して治療するためには、1年に1度は胃の内視鏡検査を受けることをおすすめします


Q者

定期的な検査を受けて、早期発見、早期治療することが大事なのですね。
消化器のがんでは胃がん以外に大腸がんも増えていると聞きますが


川田川田

はい、大腸がんは以前は比較的日本人に少ないがんでしたが、食生活の変化などの影響もあり、近年増加しているがんです。
胃がんと同じように早期の段階では自覚症状がほとんど見られないため、治療が遅れがちです。
進行すると現れてくる症状は、大腸のどの部分にがんができているかによっても異なりますが、便秘と下痢を交互に繰り返す、便が細くなる、腹部の張りなどがあったら注意が必要です


Q者

大腸がんの検査も定期的に受けた方がいいでしょうか


川田川田

大腸がんによる出血を調べる便潜血検査は、手軽で患者さんの負担もほとんどないので、定期的に受けるようにしてください。
もし便潜血検査で陽性となった場合は、大腸内視鏡検査を行います。
これは肛門から内視鏡を挿入して、大腸に病変がないか内側から調べる検査です。
ポリープやがんの疑いがある病変が見つかった場合は、細胞を採取して詳しい組織検査をすることになります


Q者

大腸内視鏡検査は、事前の準備が大変だと聞いたことがあり、心配です


川田川田

内視鏡で大腸を観察できるようにするため、検査の前には時間をかけて下剤を飲み、便をすべて出しておかなければなりません。
この事前準備は確かに大変ですが、検査結果に異常がなければ次の検査は数年後でいいと言われることが一般的なので、ご家族にがんにかかったことがある方や、40歳以上の方などは、一度受けておくと安心です


Q者

わかりました。近々、胃と腸の内視鏡検査を受けようと思います。
その他にも食欲低下の原因と考えられることはありますか


川田川田

慢性腎臓病の患者さんからは、食事制限が大変で食欲がなくなってしまったというご相談を受けることもあります


Q者

わかります。塩分やタンパク質の制限には、私も苦労しています


川田川田

長年親しんだ味つけや食習慣を変えるのは、とても大変です。
しかし、腎臓の負担を防いで慢性腎臓病の進行を抑え、末期腎不全に至って透析が必要になるのをできるだけ遅らせるためには、食事制限は重要です。
制限量の範囲内で上手に食べる方法や調理のコツなどを主治医や管理栄養士に相談して、毎日のメニューを考えましょう


Q者

そうですね。減塩にもだんだん慣れていかなければなりませんね


川田川田

慢性腎臓病の患者さんが指導される1日の塩分摂取量目安6g以下は、一般的な日本人が取っているほぼ半分の塩分量になります。
慣れるまでは確かに大変ですが、減塩は胃がんなど他の病気の予防にもなりますので、だんだん慣れていくように頑張ってください


Q者

はい、わかりました


川田川田

食欲不振が続いて摂取エネルギー不足が続くと、腎臓にも悪影響になりますし、体力も落ちてしまいます。
食品や食材の選び方を工夫して、エネルギー不足にならないように気をつけてくだい


川田川田

慢性腎臓病の患者さんには、食欲不振、食欲低下を訴えられる方が少なくありません。
尿毒症の発症や、胃がんなど消化器の病気のサインであることもあるので、食欲が落ちてきたと感じたらすぐに主治医に相談するようにしてください。
また食事制限になじめないことが原因になっているケースもありますので、その場合は管理栄養士に相談して解決方法を見つけましょう

『無病息災』という言葉がありますが、『一病息災』という考え方もあります。むしろ腎臓病を逆手にとって全身をしっかり管理した方が健康に日々を送れるという考え方です。日ごろからキチット摂生・シッカリと必要な検査をしていたほうが天寿を全うできる可能性があります。プラス思考で考えていただけるヒントとなればと思います。

まとめ

  • 慢性腎臓病の患者さんの食欲低下は、尿毒症の発症が原因になっていることがあります。
  • 尿毒症は、腎機能の低下により老廃物の排泄ができなくなったことで起きる症状です。
  • 尿毒症は食欲低下だけでなく、心不全や意識障害などを引き起こし命に関わることもある怖い病気なので、早急に対応が必要です。
  • 胃がんや大腸がんなど消化器の病気が、食欲不振の原因となっている場合もあります。
  • 消化器のがんは早期発見、早期治療が非常に大切なので、胃や大腸の検診は定期的に受けるようにしましょう。
  • 食事制限が原因となり、食欲が落ちているケースもあります。
  • エネルギー不足にならないように、食べ方や食材の選び方などの工夫を管理栄養士に相談して、食事制限に取り組みましょう。