骨や関節の痛み、手指のしびれなどの症状に悩む透析患者さんは多いですよね。
これは透析治療を長く続けていると起きやすい透析アミロイドーシスという合併症です。

原因はアミロイドというタンパク質が体内に異常に蓄積するため、血液透析を始めて10年くらい経つと発症しやすくなります。

今回は透析アミロイドーシスの原因から治療、予防方法までご紹介します。

透析アミロイドーシスの原因

透析アミロイドーシスは、アミロイドという異常にタンパク質が体内に異常に蓄積し、骨や関節の痛みや、手指のしびれ、変形、運動障害などを引き起こす病気です。

アミロイドの基となるのは、β₂ミクログロブリンというタンパク質です。
β₂ミクログロブリンは、全身の細胞で作られるのですが、健康な人の場合は尿の中に排泄されるため、血液中にたまることはありません。

透析患者さんの場合は、β₂ミクログロブリンを排泄することができず、透析でも除去しきれないため、だんだんと体内にたまっていきます。
しかしβ₂ミクログロブリンが体内にたまるだけでは、すぐには透析アミロイドーシスにはなりません。

体内にたまったβ₂ミクログロブリンは変質し、骨や関節などに沈着し、やがて分子同士がつながる重合化という反応を起こしてアミロイドに変わっていきます。

このようにβ₂ミクログロブリンがアミロイドに変わるには、約10年の年月がかかります。
ですから末期腎不全となり透析を導入してから10年ほど経つと透析アミロイドーシスを発症するというわけなのです。

透析アミロイドーシスの症状

①手根管症候群

透析アミロイドーシスの代表的な症状の1つが、手根管症候群です。
手根管とは手首の骨と靭帯で囲まれた空間のことで、この部分にアミロイドが沈着すると、腕や指の動きや感覚に深く関係している正中神経という神経を圧迫するようになります。

主な症状には親指の根元の筋肉の萎縮や、親指、人差し指、中指のしびれや痛みなどが見られます。両手がしびれる場合も片方だけのこともあります。指のしびれは明け方に強くなり、手を振ると軽くなります。

進行すると、親指に力が入らなくなったり、親指と人差し指の動きに障害が生まれたりして、2本の指を丸く曲げて作るOKサインができなくなります。

また指を使った作業や、細かいものをつまむことも困難になります。
手根管症候群の診断方法には、次の2つがあります。

ファーレンテスト
手首を屈曲させて、胸の前で両手の手の甲を合わせます。この時肘の位置は下がらないように胸の高さにしてください。そのままの状態を20秒キープして、親指、人差し指、中指に痛みが出たり、しびれが強くなったりするようなら、手根管症候群が疑われます。

ティネル徴候
手首の手根管の部分をたたくと指先に痛みが広がることで、手根管症候群の特徴的な症状です。

②ばね指

指の付け根部分にアミロイドが沈着することで、指の曲げ伸ばしがスムーズにできなくなる状態です。指を伸ばそうとすると引っかかりを感じたり、進行すると指を伸ばせなくなったりすることもあります。

③破壊性脊椎関節症

アミロイドが沈着するのは、手の骨だけではありません。首の骨や背骨に沈着し破壊することで、手指の運動障害や歩行障害を引き起こします。最悪の場合、手足の麻痺に至るケースもあります。

④骨嚢胞の形成

破壊性脊椎関節症が進行すると、骨に空洞ができる骨嚢胞が形成されます。
透析患者さんは活性化ビタミンDが作られにくく骨がもろくなっているため、骨嚢胞ができるとますます骨折しやすくなります。

透析アミロイドーシスの治療方法

①手根管症候群の治療

症状が軽い場合は、手根管の中へステロイドを注射する薬物療法を行います。
薬物療法だけでは症状が改善しない場合や、親指の根元の筋肉の萎縮がある場合は、手術が必要になります。

手術は、手根管開放術と呼ばれるもので、正中神経を圧迫している横手根靭帯という部分を切開します。皮膚の切開が最小限ですむ内視鏡を使った手根管開放術もあります。
手術を行えるのは一般的には整形外科のなかでも「手外科」といわれている特殊技術を持った先生が行いますので、透析の主治医の先生に相談して紹介してもらうようにすると良いでしょう。

②ばね指の治療

ステロイド注射をして症状を抑えますが、それだけではよくならない時や指が動かなくなった時は、切開手術を行います。

③破壊性脊椎関節症の治療

重症になると歩行障害が起き、QOLに大きな影響が出る上に透析治療にも通えなくなってしまうため、手術の必要があります。
手術では患者さんの状態に合わせて、頸椎や脊椎の固定を行います。

④骨嚢胞の治療

骨折により発見されることが多いため、主に骨折の治療を行います。

透析アミロイドーシスを予防するための取り組み

透析アミロイドーシスは進行すると手術が必要になりますが、体力が低下している透析患者さんや高齢の患者さんにとって、手術は負担になります。

そのため透析アミロイドーシスの原因になるβ₂ミクログロブリンを除去する透析方法を採用している施設が増加し、効果をあげています。

①高性能ダイアライザーを用いた血液透析

β₂ミクログロブリンは分子量が11800と大きい物質なので、大きな物質を透過させやすい透析膜を使用した高性能ダイアライザーが開発され、使用されています。

②β₂ミクログロブリンを吸着する血液浄化器を使用

血液中のβ₂ミクログロブリンだけを吸着する吸着型血液浄化器を、血液透析と同時に使用する方法もあります。
透析回路のダイアライザーの手前につなぐことで、他の血球成分はほとんど吸着せずにβ₂ミクログロブリンだけを吸着します。

吸着型血液浄化器には3種類のサイズがあり、通常はβ₂ミクログロブリンを効率的に吸着できる
最も大きなサイズのものを使用します。しかし心機能が低下している患者さんの場合は心臓への負担を防ぐために、小さなサイズを選択します。

③HDF(血液ろ過透析)

血液透析と血液ろ過を同時に行う治療方法です。
小分子量の物質からβ₂ミクログロブリンのような大分子量の物質まで、幅広く除去することができます。

HDF(血液ろ過透析)では、透析液の清浄化も徹底して行います。
特に細胞に含まれる毒素であるエンドトキシンが透析液に含まれていると、血液側に逆流し、β₂ミクログロブリンの量を増加させることがあるので、注意が必要です。

透析アミドローシスは、アミロイドが骨や神経に沈着することによって起きる合併症です。透析期間が長くなるほど発症しやすくなりますが、原因物質となるβ₂ミクログロブリンを除去する透析方法などで予防します。

まとめ

  • 透析アミドローシスは、長く透析治療を受けている患者さんに起きやすい合併症です。
  • 透析アミドローシスは、タンパク質の一種であるアミロイドが骨や神経に沈着することが原因です。
  • 透析によって除去しきれないβ₂ミクログロブリンが体内にたまることで、アミロイドになります。
  • 透析アミドローシスの主な症状は、手根管症候群やばね指などです。
  • 首や背骨などにアミロイドが沈着する破壊性脊椎関節症は、歩行障害や手足の麻痺にもつながる病気です。
  • 骨に空洞ができる骨嚢胞は骨折の原因にもなります。
  • 透析アミドローシスはステロイドなどの薬物療法や手術で治療します。
  • 高性能ダイアライザーやHDFなどで、β₂ミクログロブリンを除去することで、透析アミドローシスを予防します。